第97話 ボス討伐後の掃討戦と
ダンジョンボスと思われるこのハーピーの群れの女王を倒した。完全に致命傷だし、地面に落下した肉体が消えて魔石だけが残されているので仕留めたのは間違いない。
そしてそれによってダンジョンを解放するための魔法陣が近くで展開されたので、今のハーピークイーンがボスだったことも間違いではないようだ。
正直、こいつらの事だからもしかしたらそれすら罠の可能性もあるかもしれないと思っていたのだが、
『ダンジョンボス討伐及びダンジョン中心部への到達を確認しました。奉納による敵性ダンジョンへの干渉が可能となります』
謎の声がそうではないと教えてくれる。
「貴様、良くも女王を!」
「殺してやる!」
ボスを倒され、このまま魔法陣に干渉されれば自分達が生存できる空間であるダンジョンが消滅することが分かっているのだろう。
殺意を漲らせた大量のハーピー共は何としてでも俺を魔法陣に近付けさせまいと捨て身で殺到してくる。
(魔闘気状態なら防御しなくても一切傷を負わないか。なら丁度いいな)
群れの全てが俺に向かって来てくれるのなら好都合だ。
何故ならそれなら敵の全てを攻撃範囲に入れられるので。
使うのは氷結魔法。
そしてその中でも一択だ。
「アイスバースト」
解き放たれたその魔法は近くのハーピーを凍りつかせただけでは飽き足らず、見える範囲くらいの全てを見事に凍結していた。
そしてそうなればまともな生物が生きていられるはずもなく、やがて肉体を残すことなく全てのハーピーが消滅していく。
仮にこちらが視認できないような遠くに逃げていた個体がいたとしても問題ない。だって魔法陣の周りの邪魔者は一掃できたのだから。
(一度でも魔力譲渡先として登録すれば、どれだけ邪魔されても問題ないからな)
それこそ俺が死なない限り、自動的に魔力を供給することも可能になるのだ。
「ふう、これでよしと。それにしてもボスを倒した後も気が抜けないのな」
ゲームだったらボスを倒したらそれで終了かもしれない。
だけど現実はそうではなく、生き残りがいた場合は今回のように仇を打つために、あるいは魔物にとっても重要な拠点であるダンジョンを奪われないために捨て身で攻撃してくるケースもあり得るようだ。
それを考えると益々俺と俺の魔力譲渡の力を受けている対象以外がダンジョンを攻略しても、簡単にそれらを解放することはできないのだと思わされる。
だって今みたいに魔法陣に近付けないように邪魔をする奴らがいた場合、それらを排除しないと普通の手段では奉納などできないだろうから。
(ボスだけでなく他の魔物も全て狩るにしても、それだと時間制限がきつくなるからな)
そこで一日しかダンジョンに入るための鍵の効果が続かないことが痛手になる訳だ。
それを考えると敵もダンジョンを守るために色々な工夫を凝らしていると言っていいだろう。
「まあなんにせよ、これで大阪も解放だな」
新潟で活動している例の二人もそろそろ攻略を終えるはずだし、そうなれば残る日本のダンジョンはあと一つとなる。
それにしてもこのまま仮に沖縄も取り返したら敵はどうするだろうか。
(状況を不利と見て手出しを控えるようになるか。それともより強い魔物が出現するダンジョンを新たに設置するか)
新しいダンジョンは世界中のありとあらゆる場所で発生しているそうだ。
だから日本でもそれが起こらないとは限らないし、あえてそれを狙ってくることも十分にあり得る。
そんなことを考えながら待つことしばらく、魔力による奉納によって魔法陣が満たされた。
それによりダンジョンのマスターキーが出現したのだが、今回はそれだけではなかった。
「ここに隠してたのか。まあ悪知恵が働く上に隠し事に長けてるからある意味で納得だけどよ」
鍵と共に現れた三つの聖樹の種を拾ってインベントリに収納する。
今回の事に加えて、今まで戦った中では単純な肉体の強さで秀でているオークのところで五個あった。
この事から察するに力とか知恵などで厄介で攻略が困難な場所ほど聖樹の種を隠している傾向があるのではないだろうか。
敵からしてもこれは奪われたくない重要なアイテムだろうし、守りが固いところに配置するのも理解できるし。
『人類陣営がハーピーダンジョンのマスターキーを奪取したことを確認しました。それにより邪神陣営に奪われた陣地を取り返すことに成功しました。ハーピーダンジョンの消滅が開始されます。ハーピーダンジョン内に存在する人類陣営の存在は安全確保のためダンジョン外に排出されます』
そうしてダンジョンが消滅することが決定したことを告げる言葉を聞きながら俺は考える。
(零時を回ったら聖樹の種を設置するが、それと同時にあの囮の場所に何があったのかも確認しておくか)
聖域が展開されて魔物が消滅してしまったら何も残っていない可能性もあるが、それでも敵の狙いが何だったのか分かれば次の時にも活かせるかもしれないし、決して無駄にはならないだろう。
どうせこの後もこういうような悪辣な魔物は増えていくのだから、敵の情報を得られる機会は逃すべきではない。
その考え自体は正しかった。
向かったその先で敵が何をしようとしていたのか何となくは把握できたので。
もっともその成果に反して俺は全く喜べなかったのだが。
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