第67話 エネルギー供給方法と迎撃拠点
魔物の侵入を防ぐ防衛拠点となるだけでなく、こうしてダンジョンを利用することで戦力育成の場としても有用となれば聖樹と聖域の重要性は跳ね上がるというもの。
だからこそ敵も何としてでも奪われたダンジョンのマスターキーを奪い返そうとするだろう。
(聖樹と聖域が壊されるとしたらどんな方法が考えられる?)
『聖樹は絶対に破壊が不可能なように作成されています。ですから破壊されることはありません。ですが破壊ではなく無効化する方法はあります』
その唯一の方法は、エネルギー切れまで防壁を攻撃するなどして聖域を維持できなくさせた後に聖樹に干渉されるというものらしい。
要するに俺が敵性ダンジョンでボスを倒してマスターキーを奪うようなことを敵にされたら、また聖樹の種を奪われる形で聖域も消え去ってしまうということだった。
(聖域の範囲はどのくらいなんだ?)
『現状では聖樹を中心にして半径10キロメートルほどが聖域となっています。この範囲を広げることも可能ですが、範囲を広げれば広げるほど必要エネルギーが増加します』
(その範囲の変更とかも俺に出来るのか?)
『当初は聖樹の中の端末に触れた人類陣営の存在なら誰でも聖樹の機能の行使が可能でした。ですが魔族に奪われた経緯からルビリアが聖樹の設定に変更を加えました。その結果により現在の聖樹は設置した対象を主と認識して、その主だけが機能変更などの操作が可能となっています。またこの規則は他の聖樹が設置された場合でも強制的に適用されます』
つまりこの東京に設置された聖樹に限って言えば、俺にだけが操作する権限があるということらしい。
ただ主である俺が許可を出した人間なら第二、第三の主として操作権限を付与することはできるとのこと。
だから当然ながら俺にとってこれ以上ないほど信頼できる相手である茜と先生の二人にも許可を出しておく。
こうしておけば万が一、俺に何かがあってもこの二人に主としての権利も譲渡することもできるそうなので。
そうすることで二人にも聖樹の声が聞こえるようになったので、俺はこれまでの話を二人に説明してから更に質問を続ける。
「残存エネルギーを増やす方法についてだけど、奉納ってことは俺の魔力譲渡でも可能なんだよな?」
『可能です。主のように特殊なスキルを持たない対象でも、聖樹に触れれば奉納することは誰にでも可能となっています。ですから可能な限り多くの者が聖樹に奉納することを推奨します』
俺がいなくても大勢で奉納することで聖域を維持できるのは助かった。
(まあ聖樹が人類の防衛拠点となるなら、人類の手で維持できるようになっていて当然か)
維持できなければ拠点として活用することも難しいのだし。
とは言え俺の魔力譲渡という便利なユニークスキルがあるのだからそれを利用しない手はないだろう。
どうもこれまでの話から聖樹の維持やそれ以外の機能を使うためにもエネルギーを消費するのが絶対に必要なようだし。
だとすれば残存エネルギーは幾ら有っても困るものではない。
だから俺はすぐに魔力譲渡の対象として聖樹を選択して、五秒ごとに自身のINT分の魔力を奉納し続ける。
ランクが13になったことでINTは149になっているので一分で1700強、一日だと約250万のエネルギーを貯蔵できる計算になる。
(この魔力譲渡で貯めたエネルギーを使って魔物を生み出せばいいな)
そうすれば聖樹の中のダンジョンも有効活用できるだろう。
「聖樹の中に入るのは誰でもできるのか?」
『つい先ほどまではそうでした。ですが叡智の書を持つ存在によってルビリアによる設定変更が施されたことにより、これ以降はどの聖樹でも主の許可がなければ聖樹の中の施設に入ることはできません。ただしエネルギー不足により聖域が維持できなくなった場合はこの限りではないので注意が必要です』
外から魔物の攻撃を受けることなどでエネルギーの消耗が加速すれば守りの結界が維持できなくなる。
そうなったら誰でも、それこそ魔物だろうと許可なく侵入可能となってしまうと。
(だから何としてでも聖樹エネルギーを枯渇させることは避けなければならないと)
しかも聖樹の中に展開できる施設はダンジョンだけではないという。
なんと救護施設や居住区などの特殊な施設も創り出すこともできるというのだ。空間を捻じ曲げる形でどんな大きさのものであろうとも。
ただしどの施設だろうと創り出すのにも維持するのにもエネルギーが必要になるので、巨大な居住区を創って無制限に非戦闘員を避難させるとかは無理なようだが。
『現状で作成可能な施設は居住区と救護施設のみですが、奪い返して設置した聖樹の数が増えれば防衛拠点としての機能も拡充されていきます』
その施設の中には聖域を攻めてくる敵を迎撃することができるようになるものや、農地などを展開してそこで農作物などを育てることが可能になるものもあるとのこと。
数が増えれば聖樹の自身で生み出せるエネルギーも増えるので、そういった施設も利用しやすくなるのだ。
どう考えてもこれを利用しない手はないだろう。
本来は聖樹を世界中に展開することで、必要なエネルギーさえあれば人類が生き残れるようにと計画されていたらしい。
これを知ればルビリアという神の使いが聖樹の種を取り戻して設置するよう俺に言ったのも、魔族共が最優先でそれを妨害して種を奪ったことも納得するしかなかった。
聖樹は人類陣営にとってそれこそ最後の砦のようなものなのだから。
これが有るのと無いのとでは人類陣営の生存確率が大きく変わることだろう。
「だとするとやっぱり残りの聖樹の種も早めに設置してしまいたいな」
「確かに聖樹の数によって救える人の数が大きく変わるのは目に見えておるしのう」
「だったらなおさら北海道は私に任せてよ! カナちゃんと協力してダンジョンも攻略してみせるからさ!」
胸を張って自分がやると言い張る茜。
こうなっては言っても聞かないだろうし、茜が北海道を解放してくれるのなら、その間に俺は別のダンジョンに向かうこともできる。
「……本当に大丈夫なんだな?」
「うん。それにもし無理だったらダンジョン攻略の時だけ譲兄に来てもらうようにすればいいでしょ?」
確かにダンジョンの一番のネックになりそうな脱出ポイントなどの魔法陣を活性化させることなども、俺がその時だけ向かって対処すればいいのか。
「あ、忘れてた。そう言えばその確認のためにダンジョンで私の力を見てもらうんだったよね」
なるほど、前に言っていたのはダンジョンなら周囲への被害など考えることなく力試しが出来るということだったのか。
別に力試しをやると決まっていた訳ではないが、何の確認もしないで、もしもの事態があったら後悔してもしきれない。
美夜の時のようなことは二度と御免だった。
「はあ、分かったよ。なら時間も惜しいし早速やろう」
「うん!」
「ギャー!」
そう考えた俺はほとんど負けることが分かった上で茜の提案を了承する。
何故か張り切っているクーを見て、ボコボコにされるだろうことも大よそ察しながら。
(まあ救護施設を利用すればどんな怪我も治療できるみたいだからな)
なので死なないように頑張るとしよう。
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