第51話 領域奪還
ボスと思われるゴブリンキングを倒したところ、その場に見慣れた魔法陣が突如として展開される。
『ダンジョンボス討伐及びダンジョン中心部への到達を確認しました。奉納による敵性ダンジョンへの干渉が可能となります』
「はいはい、分かってますよ」
もはや手慣れたもので、そこにも魔力譲渡でエネルギーを満たしていく。
「ん? こっちは100000なのか」
オークダンジョンの時は200000というエネルギーを要求されたというのに。
脱出ポイントはどちらも必要なエネルギーは20000だったから、これも同じかと思っていたのだがその予想は外れた形だった。
「まあ早く済むのなら、それに越したことはないな」
無限魔力のおかげで時間さえあればそのエネルギーを満たすことは難しくないので、前と同じようにMPで必要なエネルギーを注ぎ込んでいく。
『奉納による敵性ダンジョンの解放が確認されました』
しばらくしてその謎の声が聞こえるのも前と同じ。
ただ魔法陣の中心付近に落ちていたのが鍵だけだった。
(聖樹の種とやらは初回特典みたいなものなのか?)
分からないが、何度も手に入らないとすれば大切に使わなければならないだろう。
そんなことを考えながら落ちていた鍵を拾うと、
『人類陣営がゴブリンダンジョンのマスターキーを奪取したことを確認しました。それにより邪神陣営に奪われた陣地を取り返すことに成功しました。ゴブリンダンジョンの消滅が開始されます。ゴブリンダンジョン内に存在する人類陣営の存在は安全確保のためダンジョン外に排出されます』
案の定、俺はダンジョンの外に追い出されていた。
先ほど開いていた自動ドアも閉まっているし、再度入ろうとしても結界に阻まれるのも以前と全く一緒である
「これで完全に陣地とやらを取り戻せたんだよな?」
正確には今日の夜、ゴブリンダンジョンが完全に消滅した時にそうなるはずだった。
それを阻止するべく魔族が現れるかと警戒していたのが、今回はそんなこともなさそうだ。
敵も撃退されたことで警戒しているのか。
はたまた力を取り戻した魔族の数がそう多くないのか。
(まあいい。今はさっさと戻るか)
これで陣取り合戦の状況がどうなるのか。また人類陣営にどれほどの恩恵があるのかによって今後の行動の方針についても色々と考えなければならないだろうし。
◆
その日の夜。
俺は十二時が回るのを避難所で待っており、その時はきた。
『ダンジョンボス討伐に伴いゴブリンダンジョンの消滅が完了しました。ゴブリンダンジョンの影響下にあった魔物も同時に消滅を確認、それらの魔石はボス討伐者へと自動的に与えられます。人類側の陣地の一部を奪還したことにより功労者には特別な報酬を付与します……』
ここまでは以前と同じだったが、今日はその続きがあった。
『一定範囲の陣地の奪還を確認。奪われた領域の奪還が可能となります。功労者は急ぎ指定ポイントに向かってください』
すると頭の中にそのポイントの場所とやらの座標が送られてきてそこに来るように指示される。
その感覚は奉納者によってダンジョンに引きつけられると感じたのと非常によく似ていた。
「はいはい、分かってるっての」
折角奪還した陣地なのだ。ここでまごまごして奪い返されては溜まったものではないので、俺もその感覚に逆らうことなくすぐにその指定されたポイントへと向かう。
「ここだな」
場所は東京の皇居前だ。
東京の中心地としてはここほど相応しい場所もないだろう。
『指定ポイントへの到着を確認しました。功労者は指定ポイントに聖樹の種を設置してください』
そして指定ポイントに俺が近付くと、それまで存在しなかった魔法陣がどこからともなく現れて展開されていく。
どうやら俺の到着を待っていたらしく、この魔法陣で謎だった聖樹の種が使えるようだ。
「設置ってことは置けばいいんだよな?」
答えはないのでとりあえず一つの種を魔法陣の上に置いてみる。
するとそれを待っていたかのように鉱石のような種の中から眩い光が漏れ出してきたと思ったら、そこから一筋の光が空へと舞い上がる。
それはまるで打ち上げ花火のように。
ただしその高さは花火が爆発するだろう場所よりもずっと上であり、その遥か上空でまた一段と激しい光を放ったと思ったら、バリン! というガラスの割れたような音がここまで響き渡ってくる。
『聖樹の設置を確認、これにより敵の一部の妨害の無効化に成功しました。世界各地の魔力スポットが起動します』
(魔力スポット! これまで全く見かけないと思ったら敵がそれを封じてたってのか)
ダンジョンでもそれ以外でも見当たらなかったのは数が少なかったとかではなく、こちらの魔力が回復する手段を敵が奪おうと画策した結果だったらしい。
(魔力スポットを封じれば、こっちのMP回復を著しく遅らせることができるからな)
となればこれが解放されただけでも人類陣営にとってはかなりの恩恵となるだろ。
だが聖樹の種が設置された影響はそれだけではなかった。
『功労者よ、聞こえますか?』
何故ならそこで初めて謎の声から話しかけられるという現象が起こったので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます