第46話 スキル継承の利点と欠点
御霊石を使えばスキルを引き継ぎできる。
それは茜や先生に確かめてもらった結果、やはり間違いないということが分かった。
しかも茜達の場合は火炎魔法だけでなくSTR上昇などのスキルをレベルⅡで手に入れられるようだった。
つまり御霊石を使えばポイントを消費せずに持っていないスキルを得ることが可能な場合もあり得るということだ。
それはつまり特別なスキルを持つ人物は、場合によってはそれを手に入れるために魔物ではなく同じ人類陣営の誰かに狙われる可能性もなくはないということを示している。
(ユニークスキル持ちなんて狙われる候補筆頭だろうしな)
わざわざ
同じスキルはどこにもない、言わば世界に一つだけの強力なスキルのはず。
少なくとも強力無比なのは俺の無限魔力などの規格外の便利さからも分かるというもの。
だから尚更無限魔力のような他にないユニークスキルを持っていることなどは今後も隠さなければならない。
最悪の場合はそれを狙って人類同士の諍いが始まる可能性もあり得るので。
「御霊石の売値はランク×10000ってところか?」
意外だったのは確認した先程のカスと美夜の御霊石の売値は20000で同じだったことだろうか。
てっきり美夜の方が貴重なスキルを持っているので売値も高いかと思ったのだが。
(ってことは売値にスキルは関係ないな)
スキルの有用性で値段が上がるのなら美夜の御霊石がこの程度の値段なのはおかしい。
美夜の死亡時のランクは分からないが、カスはステータスカードでランクが2だったことも確認している。
そして初期で脱落した美夜もそう高いランクではなかったはずだし、ランク2である可能性は十分にあり得た。
だからこそ御霊石の売値はランクが関係していると思われる。
あるいは倍々に増えていき、ランク3では40000ポイントで売れる可能性もあるが、こうしてある程度の情報は揃ったのだ。
その辺りの裏取りに関しては先生のユニークスキルで取ればいいだろう。
これだけ情報が揃っていれば必要な対価も少なくなるだろうし。
それよりも考えるべきことは、今後の御霊石の活用方法についてだ。
(スキル継承の仕組み自体はそう悪いものじゃない)
これまで俺の無限魔力などの貴重なスキルも死ねば失われると思われていた。
だがこのスキル継承のおかげで、万が一俺が死亡したとしてもそれを誰かに託せるかもしれない。
そのこと自体は決して悪いことではない。
(先生なんて特に安心していたな)
異世界で邪神との戦いは五年も続いた。
仮にそれと同じくらいの期間、またしてもこちらで争うとなった際に自分は最後まで付き合えないかもしれない。
そうでなくとも肉体が戦いについていけなくなるかもしれないと彼は言っていたのだ。
「老い先短い儂としては茜達のような次の世代に残せるものがあるだけ有難い話じゃよ」
七十歳を超えている先生だ。
長く生きてきたからこそそういう考えは人一倍強いのだろうと思う。
それを否定することは誰にもできないだろう。
(だけど確実に悪用する奴も出るし、そうじゃなくても追い詰められて極端なことを考える奴も出てきかねないのが問題だよな)
例えば圧倒的に強力で誰も敵わない魔物が出現して、それをどうにかして倒さなければならなくなった時。
スキル継承というシステムを駆使して一人の覚醒者にスキルという力を結集して事態を打開しようとする、みたいな。
そこに他人を害するような悪意がなくとも、どうしようもない状況に追い詰められた人間が極端なことをやりかねないことを、俺は異世界で嫌というほど味わっているのである。
(美夜のことを諦めさえすれば、俺が無限の魔力と癒しの力を持つことも可能だしな)
それどころかやろうと思えば全てのユニークスキルを保有した最強の覚醒者を生み出すことも理論上は可能なのだ。
その時には少なくとも俺や茜達の三人、あるいは全員が死んで御霊石になっていることが条件だろうが。
それを考えると、やはり強いスキルを持っていると吹聴するのはリスクがあると言わざるを得ない。
(場合によっては落ち着いた頃に由里を始めとした家族にも魔物を倒させて、ステータスカードやスキルを入手させるつもりだったけど、それもどうするか考えないといけないな)
このことがあるので生半可な力だと逆にそれを狙われて危険に陥るかもしれない。
ショップを利用すれば一般人でも銃器や弾が手に入るのだ。
それを駆使すれば魔物を倒すように弱い覚醒者くらいは簡単に殺せるだろう。
「ったく、分からないことだらけで嫌になるぜ」
御霊石だけでこれだけの隠されていた仕様があったのだ。
魔物から得られる魔石にも同じようなことがないとも限らない。というか絶対に何かあるに決まっている。
そしてそれは魔物を束ねる魔族の貴重な魔石にも同じことが言えた。
だとすれば魔族の魔石は一つだけで十万ポイントで売れるのだが、この分だとまだ売らない方がよいだろう。
(オークの魔石も今後、手に入る見込みがないから全部は売らずに取っておくか)
ただダンジョンを攻略したことで大量にインベントリに流れ込んできた魔石の大半は使用してしまっているのだが。
もっともそれは俺自身に対してではない。
「茜、頼みがある。クーの力を貸してほしい」
「いいよー。クーちゃんも準備できたみたいだし」
そのポイントを注ぎ込んだ対象である茜とクーに俺は念話で協力を要請した。
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