第38話 神の加護を受けし者の使命と望み
『ダンジョンボス討伐に伴いオークダンジョンの消滅が完了しました。オークダンジョンの影響下にあった魔物も同時に消滅を確認、それらの魔石はボス討伐者へと自動的に与えられます。人類側の陣地の一部を奪還したことにより功労者には特別な報酬を付与します。更に与えられていた神の加護が解放されます』
魔物の居城であるダンジョンを攻略して美夜の仇である魔族も討った日の夜中の零時、そんな謎の声を俺は確かに聞いていた。
そしてそれと同時に大量のオークやオークナイトなどのオーク種の魔石がインベントリにどこからともなく詰め込まれたのも確認する。
またどういう訳か念話のスキルレベルがⅩに上がっていた。
ポイントは減っていないどころか特典を与えられたかのように十万も増えているので、これが特別な報酬ということだろうか。
(だとするとインベントリに送られてきたのは東京中に散らばっていたオークの魔石ってことなのか?)
謎の声の発言から推測する分にはそうだと思われる。
だから翌日、俺は転移できる範囲の東京を巡ってみたが、そこではオークの姿は綺麗さっぱり消え去っていた。
だがしかし消えたのはオークのみ。
ゴブリンは依然として東京中に姿を現しているようので、魔物が完全に消え去ったという訳ではなさそうである。
「つまりダンジョンを消すと、それと関係している魔物の発生は止められるってことか?」
本当にそうなのか何日か様子を見る必要があるだろうが、現状見る限りではその可能性が高そうだ。
でなければ現れた時と同じように忽然とオークが姿を消すとも思えないし、なにより大量に送りつけられた魔石の出所がそれとしか考えられない。
(国会議事堂にあったダンジョンも消えてるな)
謎の声の言う通りオークダンジョンは影も形もなくなっている。
今までありとあらゆる干渉を拒んできた結界は消え去っており、破壊不可能だった建物は簡単に軽く殴っただけでも傷つく、どこにでもある普通な建物の一つに戻ったようだ。
「それにしても何なんだ、この引きつけられるような妙な感覚は?」
そして俺は昨日まではなかった妙な感覚を東京に転移してから覚えていた。
東京都の外の避難所では感じなかったが、段々と距離が近づくほどにそれは大きく確かなものとなっていっている。
感覚を覚える方角、進む先に何かがある。
それが理屈ではなく感覚で分かるのだ。
恐らくこれが昨日の謎の声が言っていた解放された神の加護とやらだと思われた。
何故なら昨日までは確かにグレーアウトしていたはずのそれが今は他の使用可能のスキルなどと同じ表記に変わっているからだ。
それ以外に変わった点がないのでまず間違いないだろう。
(……とりあえず感覚を覚える場所に何があるか確認するしかないか)
昨日はダンジョンボスと魔族という強敵との連戦をしたことでかなり疲れているし、その疲労も一晩の休息では完全には抜けきっていない。
だからこの状態で新たなダンジョンに挑むつもりはないが、それでもこの感覚が何なのかだけでも判明させておきたい。
これが全部俺の勘違いなんてことはないだろうし、どう考えてもこの先には重要な何かがあるだろうから。
幸いにも東京に蔓延る魔物はオークよりも弱いゴブリンだ。
更に嗅覚に優れたオークと違ってゴブリンの敵や獲物を感知する能力はあまり高くない。
慎重にいけば見つからずに進むことは十分に可能だろう。
そう考えてその妙な感覚を覚える方に急ぐことしばらく、その正体が明らかになった。
見えてきたのは大型ショッピングモール。
ただし周りと違ってその外観などに傷一つ見当たらないという、つい最近どこかで見たことのある特徴を備えた普通ではない建物だ。
「なるほど。神は人にダンジョンを攻略させたい訳か」
ダンジョンを攻略できる俺のような存在に、こうしてダンジョンの場所を分かるような力を授ける意味など他にない。
奪われたという人類側の陣地を奪還することで神の力を回復させ、この陣取り合戦とやらに勝利するため。それ以外にない。
(こっちでも神とやらは人を自分のために利用する訳か。まあそんなことは今更だし、俺にとっても利になることだから別にいいけどよ)
少なくとも邪神やその眷属共である魔物のように、こちらを問答無用で滅ぼそうとする相手よりは何倍もマシだった。
だから今はその誘導に対して素直に従うことに否はない。
ボスを倒してダンジョンを消滅させれば、スキルのレベルがマックスになるような特別な報酬が与えられるのなら尚更だ。
(出現している魔物から察するにあそこはゴブリンダンジョンってところか。特別な報酬のことを考えると、他の誰かが攻略する前に俺がやりたいところだな)
そう考えたが焦りは禁物だ。
隠れ潜む魔族が今もどこから見ているか分からないし、前のようにダンジョン外に出たところを急襲されることだってあり得る。
(今は退こう。攻略は準備万端になってからだ)
それにそろそろ先生のユニークスキルのクールタイムも上がる頃だ。
ダンジョンを攻略した際に手に入れた聖樹の種やマスターキーの利用方法など、知りたい情報は未だに山ほどある。
あそこを攻略するのはそれらの情報を得てからでも遅くはない。
「……俺は邪神とその眷属を掃討することをここに誓う。美夜を生き返らせた上で何が有ろうと必ずだ。だからもし神とやらがこの発言を聞いているのなら、それを成し遂げた暁には今度こそ俺の願いを叶えてくれ」
求めているのは平穏な日常、ただそれだけなのだから。
この発言が聞き届けられるとは全く思っていないが、それでも言わずにいられなかったのだ。
そうして俺は次に挑むだろうダンジョン近くに転移マーカーを設置すると、次なる戦いに備えるためにその場を後にするのだった。
『真咲 譲 ランク12
HP 90/90
MP 0/0
STR 90
VIT 73
INT 146
MND 81
AGI 96
DEX 88
LUC 54
ユニークスキル 無限魔力 魔力譲渡 界渡しの灯 空間跳躍
1000Pスキル
念話レベルⅩ
3000Pスキル
HP上昇レベルⅠ・STR上昇レベルⅠ・VIT上昇レベルⅠ・INT上昇レベルⅥ・MND上昇レベルⅠ・AGI上昇Ⅰ・DEX上昇レベルⅠ・LUC上昇レベルⅠ・身体能力強化レベルⅡ
5000Pスキル
超聴覚レベルⅡ 魔闘気レベルⅤ
10000Pスキル
インベントリ・レベルⅠ
ジョブ 帰還者 奉納者
保有ポイント 365260P
ショップ
奉納』
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