第28話 進化した魔物達との戦い
数と種類が多い。
ダンジョン攻略を開始した俺が覚えた印象はそれだった。
(外と違ってゴブリンシャーマンやオークキャスターとかまで出てきやがるのか)
それ以外でもゴブリンソルジャーなどの通常のゴブリンやオークの進化系の魔物がダンジョン内にはかなり存在しているのだ。
ただそれでも基礎となるのはオークとゴブリンという点だけは変わらないようだが。
どうやらこのダンジョンは迷路のように張り巡らされた狭い通路が各部屋に繋がっているらしく、大抵はその部屋の中に魔物が待ち受けていることが多い。
中には通路の角などで待ち伏せているケースもない訳ではないが、そのケースは決して多くないのが救いだろう。
(狭い通路で魔法とか放たれると、どうしても回避が難しくなるからな)
また今のところ魔闘気で強化したステータスで倒せない強敵と遭遇していないのも助かった。
これで強敵と連戦ともなれば、もっと疲労を溜め込んで探索も思うように進まなかったに違いない。
(……次の部屋にはかなりの数がいるな)
超聴覚でかなり離れた場所から敵のおおよその数と位置を把握する。
これがなければ嗅覚の鋭いオークに気付かれない距離から索敵するのは厳しかっただろう。
「ったく、こっちは一人だってのによ」
それに加えて魔法などを使う遠距離攻撃が可能な魔物が増えているのも厄介だった。
その上で敵に連携を取られるということは、場合によってはこちらの攻撃が届かない場所から一方的に攻撃されることでもあるので。
だけど一人でこのダンジョンに挑むと決めたのは自分だから文句を言っても仕方がない。
「さて、行くか」
俺は魔闘気を発動して、一気に通路を駆け抜けると目的の部屋の中へと飛び込む。
すると入口近くにいた二体のオークナイトが素早く反応しようとした。
(邪魔)
だが魔闘気によって強化されたこちらのステータスによってオークナイト程度なら余裕で討伐できる。
だから一体目は上段から振り下ろす形で剣を振るい、頭部に剣がめり込んだと思ったら消滅した。
その個体の魔石が地面に落ちるよりも早く、二体目の胴体に横薙ぎの斬撃を叩きこむ。深く食い込んだ斬撃によってその個体もすぐに消え去るかと思ったのだが、
「回復魔法か!」
離れた位置にいるゴブリンプリーストらしき魔物がギリギリで回復魔法を使ったようで死にかけのオークナイトは絶命するに至らなかった。
ただでさえ体力の豊富なオークナイトが回復魔法で支援されれば、中々死なないのも当然のことだろう。
(回復役を先に仕留めたいが、それは敵も分かってるか)
既に敵のゴブリンソルジャーなどがこちらの接近を阻むように壁となっている。
そいつらを倒さないことには、その背後にいるゴブリンプリーストやオークキャスターへ到達するのは難しいと言わざるを得ない。
(だったらまずはこっちからだな)
仕方がないので目の前のオークナイトを先に仕留めるしかないだろう。
敵の体に食い込んだ大剣を強化されたステータスによる剛力で強引に振り抜いてみせる。
いくら回復魔法と言えど肉体を両断されて完全にHPが0になってしまえば意味をなさず、そのオークナイトもほどなく魔石となった。
だがこれで戦闘が終わった訳ではない。俺はすぐさま地面を蹴って、残る敵へと接近を図る。
(残りゴブリンソルジャーが五体にゴブリンプリーストが二体、オークキャスターが二体か)
その最中で超聴覚では分からなかった敵の詳細を確認すると、オークキャスターも異変に気付いて魔法の詠唱を開始しているのを視界の端で捉える。
位置的にゴブリンソルジャーが壁となれる場所にいないので、まずはそちらから仕留めるべきだ。奇襲で陣形が崩れている隙を逃さずに。
魔法の詠唱中は無防備になる。それを証明するように俺は敵の魔法が完成するよりも早く最初のオークキャスターの首を刎ねた。
美夜でもなければ、この状態から回復するなど不可能なのでゴブリンプリーストの回復魔法は無駄撃ちで終わる。
だがそこでもう一体のオークキャスターのファイヤーボールの魔法が完成して、燃え盛る炎球が至近距離から俺に向かって放たれる。
だが魔闘気でステータスが強化されている俺にとって、それは大きな脅威とはなり得ない。
むしろそれを回避するために時間を消費することの方が問題だった。魔闘気のスキルの仕様上、この状態を維持できる時間はそう長くはないので。
だから俺はその魔法を受けながら強引に前に進んで、全力で大剣を振り下ろす。
肉と骨を叩き潰す感覚が腕に伝わってきて、最後のオークキャスターが魔石にとなったのを確認すると背後を振り返った。
残るは進化しているとはいえゴブリン達。オークと比べれば容易い相手である。
たとえ回復されてもゴブリンソルジャーならオークよりも簡単に倒せる。
「よし、終わったか」
そうしてタイムリミットが来る前に部屋の中にいた魔物を殲滅し終えると、俺はホッと息を吐く。
(この調子なら時間は掛かっても奥までは辿り着けそうだな)
慎重を期して魔闘気のクールタイムが明けるまで待っているので、一時間くらいダンジョンを探索していても、それほど先へ進んでいるとは言い難い。
だが進化した魔物の魔石はポイント的にも通常種よりおいしいこともあって、ポイントを稼ぐという面ではそこまで悪くはなかった。
「問題はどこまでこのダンジョンが続くのかだな」
ステータスカードで自分のHPが僅かに削れているのを確認すると、体力回復薬を飲んで回復する。
魔力回復薬と違って体力回復薬はどこでも使用可能で飲めばすぐに効果を発揮するのだ。
もっとも回復薬には飲んでから一定時間、同系統の薬を飲んでも効果が発揮されなくなるという性質があるようなのでその点に関しては注意が必要だろうが。
ここでクールタイムが終わるまで休んでから次に進もう。そう思っていたところ、
「……なんだ、これは?」
部屋の中心に先ほどまでは影も形もなかった魔法陣らしきものが描かれているのを俺は発見した。
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