第27話 ダンジョン攻略開始
ダンジョンへと足を踏み入れた俺は呆気にとられた。
何故なら本来ならそこに広がる光景は国会議事堂の内部にふさわしいもののはずだったのに、実際には所々に松明などがあるだけで薄暗い通路が存在していたからだ。
それこそゲームで見るような迷宮のような場所である。
明らかに現代日本に存在していい景色ではない。
(破壊不可能の建物の中に迷宮とは、これを作った奴は何を考えてるんだ?)
謎の障壁を解除した後でも建物に傷を付けることはできなかった。
そのことからたぶんどうやっても建物を外から破壊することは不可能なのだろうと予想できる。
と、そこで支えを噛ませて開いておいたはずの背後の扉が勝手に閉まった。
そしてその扉はまるで幻だったかのように消えていく。
どうやら閉じ込められたようだ。
(……転移も不可能か。これは不味いな)
ダンジョン内であれば転移マーカーの設置も空間転移も使用可能だったが、ダンジョン外のポイントに転移しようとしても不発に終わってしまう。
つまり今の俺はダンジョン内に囚われてしまったのだ。
「ボスを倒せば脱出できると信じて進むしかないか?」
幸いなことにショップは利用可能のようだし、万が一に備えてインベントリに食料などは大量に用意してあるから餓死する心配はないだろう。
と、そこで、
『人類初のダンジョン挑戦者を確認しました。該当者のショップに新たな商品が追加されます。特典ボーナスが贈られます』
久しぶりに頭の中に例の声が響き渡る。
どうやらまた実績を解除した形になるようだ。
特典ボーナスは相変わらず10万ポイントのようだ。
スキル習得のためなどポイントは幾らあっても困ることはないので、これ自体は非常に有り難い。
問題があるとすれば新たに追加された商品だ。
「脱出石が一つで一万ポイントか」
新たに追加された脱出石というアイテムの説明文を読む限りでは、これはダンジョンの中でのみ使えるアイテムであり、その効果は使用するとダンジョン内から外に脱出ができるというものらしい。
つまりこれがあれば例え魔物の大群に襲われても、死ぬ前に逃げられるはず。
(けど魔力回復薬の件もあるし、この説明文を全て鵜呑みにするのは危険だな)
魔力回復薬は魔力スポットという特定の場所でしか使用できないという仕様が隠されていた。
それを踏まえると他にもそういう隠された効果や条件があるアイテムがないとは思えない。
(とりあえず一つは買って使ってみるか)
入ってすぐに脱出するのはもったいないかもしれないが、何事も確認は大事だ。
そう思って購入してすぐに使ってみようとしたのだが、
『脱出石は脱出ポイントでのみ使用可能です』
案の定、そんな声が頭の中に響いてきた。
「ったく、確認しておいて正解だな」
でないといつでも脱出できると誤解したまま敵と戦い、危機に陥った際に脱出しようとして使用できないことを知るなんてこともあり得たかもしれない。
でもこれで一先ず目標ができた。
(まずは脱出ポイントとやらを探して、そこで本当に脱出できるのか確認しよう)
破壊不可能な建物が世界各地で確認されている以上、ダンジョンも複数あると思っていいだろう。
つまりこの先で幾つものダンジョンに挑まなければならない可能性がある。
その時のためにも情報収集は必須事項。
知らないで後悔する、なんてことをもう二度と起こさないためにも。
「って念話も通じないのか。くそ、茜達に情報共有したかったんだがな」
それもダンジョンの外に出ないといけないとなると、どうやらダンジョンの中と外は完全に断絶されている考えるべきだろう。
だからこそ外から攻撃なども完全にシャットアウトされていると見るべきか。
とりあえず今いる場所に転移マーカーを設置しておく。
この先に何があるか分からないが、これがあれば何かが起こってもこの場所までは戻ってこられるように。
(相変わらず魔物の気配も感じるし、一筋縄ではいかなそうだな)
だけどここで足踏みしていても何も変わらない以上は慎重に進んでいくしかない。
俺はオークの大剣を取り出すと、それを強く握る。
こんなところで俺は死ぬ気はない。
いや死ぬ訳にはいかないのだ。
美夜の復讐を果たすためにも。
そして生き返らすためにも。
「今度こそ平和な日常を取り戻すんだ。絶対に」
そう決意を固めて俺は先の見えない薄暗い通路へと足を踏み出していった。
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