第16話 ユニークスキルの解放と変化 老人編
勇者パーティの二人とは特に問題なく無事に合流できた。
そして俺のサポートでゴブリンを退治することに成功したことで封印されていた能力もユニークスキルという形で獲得している。
「ふむ……どうやら儂の方も能力の仕様が多少変わっているようだのう」
年長者であり過去には大学で教鞭を取っていたことから先生と呼ばれている芹沢 正一は手に入れたステータスカードを眺めながらそう呟く。
異世界で彼が与えられたチート能力は通称、叡智の書。
その名の通り異世界でのありとあらゆる事象が書かれた一冊の本を手に入れて、それを閲覧することができるという使い方によっては非常に強力な能力だ。
だがその反面、叡智の書を閲覧するのには大量な魔力を必要とした。
また自分が知らない内容を閲覧するのには更に膨大な魔力が要求される上に脳に少なくない負荷が掛かるので、最初の方はまともに使うことが難しい能力だったのだ。
もっとも足りない魔力に関しては俺が供給するようになったことで、その足かせは意味をなさなくなったに等しかったが。
「それで先生、能力はどんな感じに変化したんだ?」
「まず知識を得られるという根幹は変わっておらんな。ただスキルを使用するのにMPが必要になるのと、クールタイムとやらができたらしい」
スキルのクールタイム期間はなんと168時間だという。つまりここで能力を発動すれば、次にユニークスキルが使えるのは一週間後ということだ。
「とは言え、ステータスカードとやらに書かれた説明文だけでは細かい変化までは分からんな。まずは使ってみないことには判明しないことも多そうじゃ」
「分かった、なら頼めるか」
「構わんよ」
先生はこちらが差し出した手を握ってくる。こうすることで俺の魔力譲渡対象として登録したのだ。
これで今後はどれだけ距離が離れていても魔力譲渡が可能となった。
そうして準備が整った先生が椅子に座った状態でスキルを使用すると、彼の目の前に半透明の本が現れる。
それを手にした先生は本を捲って中身に目を通し始めた。
傍目から見ている俺にはその本に書かれている内容は分からない。
なにせ全てのページが白紙にしか見えないからだ。
そうしてそれなりの時間が経過して、先生の手から本が消える。どうやら終わったようだ。
「大丈夫か?」
「ふむ、前と違って体に負荷が掛かることがなくなっておる。老体にあれは堪えるからそれに関しては有難い限りだのう」
そう呟きながら先生は特に辛い様子も見せずに椅子から立ち上がってみせる。
異世界の時はこのスキルを使用した後は疲労でしばらく動けなくなることもあったのだが、この様子だとそういう心配はいらないみたいだった。
「ただ面倒なことに、得ようとする知識によってはMPやポイントとやらが必要になるようじゃのう。そのせいで見たいのに見られない内容が幾つもあった」
その内容を精査したところ、どうやらスキルやステータスカードの仕様などのことについては比較的少ないポイントで知識が得られるのに対して、敵の目的やリポップを阻止する方法などの敵に関する情報は明らかに今の状態では支払えない高ポイントが設定されていることが分かった。
この感じだと敵の目的とか黒幕の居場所などの情報はそう簡単に得られないだろう。
「それでも有用な情報は幾つも拾えたぞ」
先生は俺が頼んでいた情報を掴んできてくれた。
まず御霊石についてだが、これは死んだ人間からドロップするもので、破損した場合は同じ物が手に入ることは絶対にないらしい。
ショップに売った場合でも買い戻しもできないとのこと。
またこのアイテムの使い道は色々あることが匂わされていたものの、その内容を見るにはポイントが足りなかったこともあってほとんど分からなかったらしい。
次に分かったのはMPと魔力スポットについてだった。
どうやらこの世界ではMPは自然回復の場合、24時間経過でたった1しか回復しないらしい。つまり10のMPを自然回復させるためには十日も必要になる訳だ。
(回復効率が悪過ぎる。だとすると普通はMP消費系のスキルは切り札として運用する必要があるのか)
ただし魔力スポットと呼ばれる特定の空間では一時間で1のMPが回復して、更にそこではショップで購入できる魔力回復薬が使えるとのこと。
なお、魔力回復薬は値段に応じて回復するMPに差異はあるものの、その効果は瞬時に適用されるらしい。
「だとすると普通は魔力スポットとやらを確保することは急務になるな」
「そうじゃのう。そこが有るのと無いのとではMP回復効率に違いが出過ぎることになるし、早めに見つけておかなければならんじゃろう」
ただ残念ながらポイント不足でその場所は調べられなかったとのことなので、次のスキル発動が可能な来週までは手探りで探すしかないとなった。
それまでに芹沢先生に必要なポイントを貯めてもらう必要もある。
「それとお主が知りたがっていた蘇生スキルについてじゃが、ポイント無しで分かったのはこの程度じゃな」
その内容は大まかに言えば二つだった。
このスキルを発動するためには対象となる相手の御霊石が必要であること。
スキル発動のためには大量のポイントとMPが必要となり、復活させる対象のランクや保有スキルなどによってそれらが増減すること、である。
(早速、御霊石の使い道が出てきたか。でもこれで復活させられる可能性はあることがわかった)
美夜の御霊石は俺が保持しているので、その点は問題ない。
だとすれば残るは蘇生スキルを入手することと、それを発動するためのMPとポイントを確保することだ。
そのためには大量のポイントを得なければならないし、ランクを上げるなどしてINTの数値も上げなければならない。またスキルによって能力を強化するなども必要になるだろう。
その辺りの塩梅は色々と考えながらやっていくしかない。
下手に蘇生スキルを手に入れることだけに拘って、力不足に陥って自分が死んでしまっては本末転倒でしかないのだから。
「なんにせよ、可能性があると分かっただけでもよかったよ」
蘇生スキルなど名ばかりで使い物にならない、なんて可能性もあったので、そうでないと分かっただけでも有難い。
これで迷いなく蘇生スキルを手に入れるために邁進できるというものだ。
美夜を生き返らせるために。
「最後に、どうやら各地方の魔物にはボスがおるようじゃ」
「ボス?」
「そのボスを倒せば何か人類にとって利となることが起こるそうじゃが、その詳細な内容については分からずじまいじゃ」
ボスが存在していて、それを倒すとメリットがある。
(もしかして……各地の魔物はボスを倒せばリポップが止まるのか?)
まず思いつくのはそれだった。
現状ではどの地方の魔物は幾ら倒しても一日経てばその数の大半は元に戻ってしまうことが分かっている。
仮にその現象はボスが生きていて、そいつが配下を生み出しているからだとすればどうだろうか。
(大本であるボスを断てばあるいは、か)
これはあくまで可能性の話だ。でもあり得ない話ではないと思う。
それを確かめるには一週間という先生のスキルのクールタイムを待つか、あるいは実際にボスを倒すかだ。
(……なんにせよ、ボスの場所を探すところから始めるしかないか)
そのボスの強さも分からない以上は倒すという選択肢が採れるのか確定できない。
下手に何も分からずに突っ込んで返り討ちに遭うようなことになるのは絶対に避けなければならないのだから。
とりあえず魔物を狩りながらボスの存在を探す。その上で可能ならボス討伐もやる。
今後の方針はこうして決定した。
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