第2章 始動と復讐
第15話 世界情勢と魔物の出現
前触れなく突如として現れた邪神の眷属、別名魔物の存在は世界を震撼させた。
ただしその影響はまだ限定的だった。
(日本だと東京、大阪、沖縄、北海道、新潟、愛知の六ケ所か)
どうやら魔物は世界中に無差別に出現した訳ではなく、特定の地域周辺に限って現れているようなのだ。
だからそれ以外の地域ではそれほどの混乱も起きておらず、ネットや電話などの通信網もまだ死んではいない。
(だけど魔物が現れる地域は徐々に増えていってる。この調子だといずれは最低限のインフラを維持することも難しくなるだろうな)
また地域ごとに現れる魔物の種類も違うようだ。
東京に現れたのがゴブリンとオークなのに対して、北海道ではサハギンと呼ばれる半魚人の魔物。
大阪ではハーピーという鳥人間のような魔物が確認されているとのこと。
そして基本的に出現した魔物はその地点を中心に行動しており、県外など遠くに逃げれば追ってこないことも確認されている。
だから自衛隊や警察は魔物が出現した県などから住民を避難させているらしい。
幸いなことに魔物に銃弾が効かないということもないらしく、犠牲を出しながらも自衛隊などが魔物の討伐を成し遂げている地域もあるらしい。
(とはいえ安心はできないな)
魔物は倒してもリポップするのか、その数が一向に減っている様子を見せないのだ。
掃討した地域があっても、一晩も経てばまた魔物が大挙して押し寄せてくるらしい。
つまりこのままでは人類側はジリ貧でしかない。
自衛隊が保持する弾薬だって無限ではないだろうし、魔物との戦いで隊員に犠牲が出ているので戦える人もこれからどんどんと減っていくことだろう。
だから人類側が勝つためにはどうにかして魔物がリポップしないようにしなければならないのだ。
「そういう訳であんたの力を借りられないか、芹沢先生」
「先生はよしてくれ。儂はもう隠居したただの爺じゃよ」
勇者パーティでこちらに戻ってきたのは死んだ美夜を含めて三人。
美夜を除いた残る二人は一緒に暮らしているので、こうして連絡を取って協力を要請しているのだ。
「とは言え、この状況で協力しない選択肢はないからのう。茜も美夜の仇を取ると言ってきかんし、呑気に隠居している訳にはいかんな」
叡智を得た老人こと芹沢 正一。
竜の友である幼子こと芹沢 茜。
この二人は現在千葉県に住んでおり、魔物の襲撃からは難を逃れているとのこと。
なお茜は正一と血縁関係はない。茜の両親は異世界で死亡しており、身寄りのなくなった彼女を正一が引き取った形だそうだ。
「なんにしても二人にも魔物を倒してユニークスキルを開放してもらいたい。そのためにもいち早く合流しよう」
あれから家族は県外に避難させたので一先ず心配はいらないはず。
「異世界と仕様が変わっていたとはいえ、あの美夜がやられたんだ。あんたら二人まで簡単にやられるとは思わないが慢心は禁物だろうよ」
「確かにその通りじゃな。分かった、合流しよう」
合流地点を決めて俺は通話を終える。
いくら無限に近い魔力があっても俺一人で敵を掃討するなんて絶対に不可能。となれば有力な協力者はいくらいても困ることはない。
(それに敵が少しでも頭を使えるのなら勇者パーティなんて存在をむざむざ放置するとは思えないからな)
あるいは美夜も力をつける前に狙われた可能性もあり得る。それが正しかった場合は次に狙われるのは残る二人となるだろう。
ただでさえ美夜を失ったのは手痛いのだ。これ以上の戦力の損失は絶対に避けなければならない。
それと同時に俺と同じように勇者パーティ以外で、こちらに戻ってきたメンバーにも声をかけるとしよう。
彼らも魔物を倒せばユニークスキルを開放できるはずだし、魔物との戦いの経験がある人材はいるだけで貴重だ。
(俺の存在はあっちでも徹底的に隠蔽していたから魔物側に知られてないと思うが、警戒だけは怠らないようにしないとな)
こっちでも可能なら自分の存在を隠したまま活動したいところだが、果たしてそれが可能だろうか。
そんなことを考えながら俺は合流地点へと急ぐのだった。
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