第5話 界渡りの灯と空間跳躍

 この戦闘で界渡りの灯と空間跳躍の詳細な性能を把握しておきたい。そういう打算もあって俺はゴブリン達に襲われている集団を助けに入った。


 この場にいるゴブリンは全部で5体。

 倒すだけなら問題にもならない相手なので好きなだけ検証が可能だった。


 まずは突っ込んでいって最も近いゴブリンの顔面を殴り飛ばす。その際に界渡りの灯を発動しようとしたが、


(タイミングをミスったか)


 僅かに殴った瞬間ではなかったせいでスキルが発動しなかった。


 界渡りの灯は触れている対象にしか効果を発揮できないみたいだ。

 その一撃で一体目のゴブリンは粒子となって消えていく。


 身体能力強化のおかげでその気になればゴブリンは一撃で殺せるようになったらしい。


 次はタイミングを見計らって2体目のゴブリンを殴打の際にスキルを発動することには成功した。


 だがそれで死亡したゴブリンの身体が消えてしまうことでマーキングも一緒に消えてしまう。


(でも生きてる間なら魔物相手でも灯を設置は可能みたいだな)


 3体目はあえて殺さないようにその首を掴んで持ち上げる。その際に灯の設置も同時に行った。


 そしてそいつを殺さないで離れた場所に放り投げる。


 そこでようやく俺に攻撃をしてくるゴブリンが現れたのでそこで空間跳躍を発動してみた。


 その結果、灯がある地点が頭の中に浮かび上がる。


 今は一つしかないのでそこに跳躍することを選択すると、倒れているゴブリンの首の上あたりに転移した。


(結構正確にマーキングした地点に転移するみたいだな)


 そのまま倒れているゴブリンの首を上に着地して止めを刺す。

 やり方次第では攻撃や回避にも十分活用できそうでなによりだ。


 急に消えた俺を見失ったゴブリン達だったが、追撃はしないでその場で灯を地面に設置してみると出来た。


 足裏、正確には靴底が触れている状態でも灯の設置はできるみたいだ。


(直接肌が接しなければならないって訳じゃないのか)


 だったら今度はその灯から離れて、生きているゴブリンに触れてそいつのみ空間跳躍をさせられるか試したらそれも可能だった。


 ただし感覚からして、この短い距離でも限界ギリギリだったのが分かる。


(同じ距離でもそこら辺の石なら全然問題なさそうなところをみると魔物、あるいは自分以外の生物を転移させるのには多くの魔力が必要になるのか?)


 現に転移させられたゴブリンの頭の上に現れた数個の石がそのまま落下していた。


 同じ場所に転移させても体内に石が埋まるとかにはならないのか。


 更に触れていない対象に空間跳躍を使用できないか、それは試したが不発に終わる。


 空間跳躍も触れた相手にしか効果を発揮しないみたいだ。


「それならこれはどうだ?」


 ゴブリンに触れながら灯を設置する対象を肉体のどこか一部分ではなく、そのゴブリンとする。


 その上で敵の右手を切り飛ばしてから転移してみると、遠方に落ちている右手ではなくそのゴブリンの傍に転移した。


 逆に左手と部分指定しておいた上で同じように左手を飛ばして転移してみると、その際は切り離された左手付近に転移することになるようだ。


 同じゴブリンという対象でも肉体の一部か、その対象そのものかによっては転移する先が変化することになるらしい。


 最後に灯が設置してある斬り飛ばした左手を徹底的に破壊してみる。


(部分とかの指定の場合はある程度の原型を留めておく必要があるのか)


 完全に破壊し切った左手からは灯が消えてしまっていた。それに対して本体指定した灯は幾ら肉体を破壊しても死亡しない限りは消えない。


 大体の検証は終えたので残った一体はさっくり仕留めて終了となった。


 魔石も全て回収して襲われていた人達については警察にでも頼るように言ってその場を去る。


 流石に彼らを安全なところまで届けている暇はないので市民を守る役目は警察や自衛隊にお願いするとしよう。


(それにしてもただの包丁じゃそろそろ限界か)


 これまでは強化された力に任せて斬っていたが刃もボロボロになってきて限界が近いのは見ただけで分かる。


 仕方ないので50P消費して日本刀をショップで購入してみる。これは特殊な効果などはないただの丈夫そうなだけの日本刀だった。


(斬撃強化とかが付与された武器もあるけどかなり高いからな。これからは倒せるなら殴ってやる方がいいか)


 そこで母親とは連絡が取れてさっきまで買い物に出ていたけど今は家に戻って来たとのことなので俺も一旦は家に戻ることにしよう。


 幸か不幸か魔物と遭遇していないので何が起きているのか全く分かっていないようだ。その状態で下手に動かれては困る。


(家に灯の設置もしておけば戻る際に便利だからな)


 バイト先に戻るとバイクに跨ってすぐに出発する。


 今度は途中で誰かが襲われていそうな気配を感じても止まることはしない。俺は神ではないので自らの手で守り切れる範囲には限りがあるからだ。


(ここで身内以外を冷徹に切り捨てられるのも異世界帰りの特徴なのか、それとも単に俺が冷血漢なだけなのかね)


 帰路の途中で魔物に驚いたのか道路脇の電柱などにぶつかって大破している車も見かけたがそれを無視して俺はバイクを走らせ続けた。





保有ポイント194410P

ゴブリン×5 100P

刀 -50P




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る