第4話 新たな力
戦闘の末にゴブリン三体を倒すことに成功した。
(ただやっぱり異世界の魔物よりも弱いな)
ゴブリンは強い魔物ではないが、今の俺がここまで楽勝なのは異世界基準だとおかしい。
オークにもその違和感を覚えたし、どういう理由かは分からないが魔物全般が弱くなっているのだろうか。
そうしてオークと同じようにゴブリンも魔石だけ残して消えていく最中にまた頭の中に例の謎の声が響く。
『人類初のゴブリンの討伐及び初のランクアップを確認しました。特典ボーナスが贈られます』
その言葉にステータスカードを確かめてみると確かにランクが2になっていた。そしてステータスも上がっている。
『真咲 譲 ランク2
HP 21/21
MP 0/0
STR 12
VIT 10
INT 17
MND 21
AGI 13
DEX 12
LUC 11
ユニークスキル 無限魔力 魔力譲渡 界渡しの灯 空間跳躍
スキル インベントリ・レベルⅠ
ジョブ 帰還者
保有ポイント 200000
ショップ』
よく見ればステータスが上昇しただけでなく保有ポイントとやらも新たに100000獲得しているようだ。これが特典ボーナスというものなのだろうか。
「てか身体が明らかに軽くなって力も強くなってるな」
ランクアップすることでステータスが上昇する。その分だけ肉体などが強化される仕組みのようだ。
たった一つのランクアップでも大分違う。この状況を打破するためにはこのステータスカードに載っている情報を最大限活用する必要があるかもしれない。
そう思ってステータスカードを調べてみると色々なことが判明した。
まずスキルなど特定の部分に触れると注釈や説明文が横に浮かび上がる。
例えば無限魔力はMPが0になる代わりにMPを消費するスキルやアイテムなどを好きなMPを込めた状態にして発動できるというものになっているらしい。
ただしINTを超えるMPを一度に込めようとした場合は反動があるという欠点もあるみたいだ。
(多少異世界と仕様が変化してるけど限界を超えて使い続けるとデメリットがあること自体は変わらないか)
魔力譲渡は消費したMPを別の対象に与えることができるというもの。
ただし同じ対象に魔力を譲渡するのは5秒のクールタイムが必要になる。
つまり今の俺は一度に最大で17までならデメリットなしで他人に魔力を分け与えられるということになる訳だ。
界渡しの灯は空間跳躍とセットのスキルであらかじめこれを使って人物や場所などのポイントを指定していておけばその場所に空間跳躍できるようになるというものらしい。
ただし空間跳躍は飛ぶ距離や人数などに応じて消費する魔力が変化するのでどこへでも一跳びという訳にはいかなそうだが。クールタイムは1秒とほとんど隙を生じさせないのは助かりそうだ。
そしてこれらのユニークスキルはスキル封印などの影響を完全無効化できるとのこと。だからこれからは封印されて使えないということもないようでなによりだ。
インベントリはレベル×1000キログラムの生物以外の物質を収納できる亜空間を作り出すスキルのようだ。
中に収納した物は時間停止して劣化しない超絶便利機能まで付いている。
これは特典ボーナスで得られたスキルとのこと。
ジョブの帰還者は異世界由来のスキルを習得できるようになるという俺としてはかなり嬉しい効果があるようだ。
そして保有ポイントだがこれは最後のショップで使用する通貨みたいなものだった。
ショップでは食べ物から水、衣服などの生きるために必要な物からスキルやジョブなどの能力までありとあらゆるものが販売されており、それを買うために必要なのがこのポイントとのこと。
そしてポイントは特典ボーナス以外でも魔石を得ることなどで貯めることが可能なようだった。
人が居なくなった店内に転がっていたオークとゴブリンの魔石で試してみたところ手にした魔石は消えてオークが一つで300P、ゴブリンは一つで20P手に入った。
その為、今の俺の保有ポイントは200360となっている。
(これだけポイントがあるなら有用そうなスキルを幾つか取ってみるか)
もしかしたら他にスキルを得る手段とかがあってポイントを無駄にする可能性もあるが今は緊急事態だ。
いち早く家族や美夜の下に辿り着くために必要そうなものなら取っておいた方が良いと判断した。
ショップのスキル一覧から役に立ちそうなものを選んで購入する。
『真咲 譲 ランク2
HP 21/21
MP 0/0
STR 12
VIT 10
INT 27
MND 21
AGI 13
DEX 12
LUC 11
ユニークスキル 無限魔力 魔力譲渡 界渡しの灯 空間跳躍
スキル インベントリ・レベルⅠ 身体能力強化・レベルⅠ INT上昇・レベルⅠ
ジョブ 帰還者
保有ポイント194360P
ショップ』
身体能力強化とINT上昇のどちらも3000Pが必要だった。INT上昇はステータスが10上昇していることからも分かり易い。
どうやらレベルに応じてINTが上昇してくれるようだ。
それに対して身体能力強化の方はステータスには反映されないらしい。だがその効果は取った瞬間に分かるくらいに強力だった。
(元々のステータスとスキルレベルに応じて身体能力を強化してくれるのか)
厭らしいのがショップでは注釈や説明が出てこないのだ。
だからこうして実際に入手して自分のステータスに表示されるようになって初めてちゃんと効果が分かるようになる。
なおレベルと表記されるものは最大がⅩとのこと。
そしてⅠからⅡにするのに6000Pが求められるので必要とされるポイントは倍々に増えていくのかもしれない。
そうなると最大まで上げるのに大量のポイントがなければいけないことになる。
(今後のことを考えるなら魔物を倒してポイントを稼いでおかないといけないか。もっともそれをやるのは安全が確保できた後での話だけど)
美夜にはこれまでに分かったことを共有したら集合場所と時間を決めて通話を終える。
交通機関が使えれば合流するのにそう遠い距離ではないが、魔物が現れたこの状況でどこまでそれらが稼働しているのか分からない。
(バイクもあるけど道路が塞がってる可能性もあるか。まあ最悪は強化された肉体で走っていくしかないな)
そんなことを考えながら用意を整えて店を出る。本来なら昼下がりの人通りがそれなりにある道なのに今は人が見当たらない。
ただ遠くで何かが壊れるような音や悲鳴が聞こえてくるから周囲が全くの無人となった訳ではなさそうだ。
とりあえずその音がする方に向かってみると案の定、ゴブリンに襲われる集団が目に入った。
流石にこのまま見捨てるのは寝覚めが悪いので助けるとしよう。
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