第23話 三善結生子(大学院学生)[2]
先生はと見ると、いま厚切りベーコンのサンドイッチの一片を口に入れたところだ。
「あ、わたし、出ますよ」
と断る。
「もしもし。
「児童福祉学部」は言わない。言ったおかげで混乱したことがこれまで一度ならずある。
児童福祉学部に日本史研究室があるとは、普通、思わないから。
相手はくぐもった声だ。
「もしもし。私、
くぐもってはいるが、ふしぎと聞き取りにくくない。
「ああ」
すぐに顔が思い浮かんだ。
「はい。わたし、
「ああ、結生子ちゃん!」
嬉しそうに「ちゃん」付けで呼んでくれる。でも博子と結生子のどっちが歳上なのだろう?
確かめたことはない。そんなことを気にする関係でもない。
「ちょうどよかった。いま、わたしね、
「はい。
「そうそう」
岡下というと、結生子が生まれ育った村と同じ市にある街だ。
一つにはとても
「そこでなんかへんな遺跡みたいなのが出ちゃって」
そのさまざまな思いはそのままにして、博子さんってこういう表現をするんだな、と思う。
日本史の専門家に電話して「へんな遺跡みたいなの」はないよな。
しかも、教育委員会の人が。
つまりお役人が。
「へんな、って何?」
「地面が
「古墳……?」
岡平に古墳なんかあったっけ?
でも、それ以外の時代の岡平市については、それほど詳しくない。
でも、たしか、あの土地って、平安時代のなんとか
古墳でないとすれば……?
この地域の遺跡や文化財はひと通り知っているはずの博子さんが思い当たるものがなく、答えを出せない、「大きい石をきっちり組み合わせて作ってある」遺跡って……?
ふと思いついて、結生子は息をのんだ。
まさか……!
いや、でもあれは
考えていて目を泳がすと、千菜美先生と目が合った。
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