第13話カボチャのポタージュを作りましょう

 まずは大量の卵を茹でてもらうようお願いして、カボチャのポタージュ作りにとりかかる。

 二人の火蜥蜴に手伝ってもらいながら、玉ねぎを薄切りに。


(うう、目に染みる……っ!)


 前世では平気だったのになあ、と思いながら刻んでいると、気づいたナーラに「他の者にやってもらいましょう」と包丁を取り上げられてしまった。

 仕方ないのでお願いして、サミルともう二人の火蜥蜴にカボチャの下処理をお願いする。


「種とワタを取って、皮を剥いて一口サイズの薄切りにしてくれる?」


 頷いたサミル達も、作業に取り掛かる。

 私は他の火蜥蜴に手伝ってもらいながら、大き目の鍋にバターをポトン。

 切った玉ねぎを入れてじっくり炒め、しんなりと透明になったら、カボチャとお水を適量加える。


 蓋をして、カボチャが柔らかくなるまで煮込んだら、サミルにめん棒とフォークを使ってカボチャを潰してもらって……。


(うーん、ミキサーかブレンダーがあると便利なんだけどなあ)


「サミル、疲れない? 量も多いし、変わってもらったほうがいいんじゃあ……」


「いえ。この程度、たいしたことありませんよ」


 にっこり微笑むサミルは言葉通り、あっという間にカボチャを潰してしまった。


(魔族、すごい……!)


 鍋に牛乳を加えて、かき混ぜながら沸騰しない程度まで加熱。

 塩コショウと、お砂糖をちょっぴり加えて甘さを調節したら、完成!


「お皿に盛ってから真ん中に少しだけパセリを散らすと、見た目もより鮮やかになるの」


 味見にどうぞ、と小皿にポタージュを入れて、サミルに差し出す。

 受け取ったサミルは目を輝かせながら、


「ポタージュ、と言いましたっけ。こんなに美しい色のスープが出来るなんて」


 サミルはお皿に鼻を寄せ、すんと吸い込んでから、スプーンでポタージュを口に運ぶ。

 途端、とろりと頬を緩めて、


「ああ……なんともほっとするスープですね……! 口当たりはさらりと滑らかなのに、しっかりとしたカボチャの甘みが広がります……! なんだかスープなのに、スイーツのようでもありますね」


「カボチャは糖質……甘味が強い食材だから、お菓子とも相性がいいのよ」


 それにカボチャは炭水化物の他に食物繊維も豊富だし、何種類ものビタミンやミネラルを多く含む栄養たっぷりの食材。

 スープだけでも食べてもらえれば、健康面でも安心できる。


(しょっちゅう昼食を抜いてるなんて……。まさか黒竜の封印が解けたのって、レスターの体調不良による魔力の暴走とかじゃないよね?)


 他にも食べたい子いる? と声をかけると、びしっと挙手する火蜥蜴たち。

 うん、全員。

 ナーラも胸程の高さとはいえ、しっかり手を挙げている。


(多めに作ってよかった)


 と、サミルが「お前たち……」と息をつき、


「俺達で食い尽くしては昼食に振舞えなくなるからな。まずはレスター様方にお出しして、残りを皆で分けよう。それまで我慢だ」


 途端に上がる不満の声。

 けれど仕方ないといった様子で、火蜥蜴たちは渋々スタンバイしていた小皿を片付け始める。

 サミルは私に向き直り、


「それで、フレデリカ様。ポタージュは完成しましたが、"サンドイッチ"というのはどうやって作るのでしょう?」


「あ……そうね。サンドイッチは、とても簡単よ。切った食材をパンで挟むだけだから」


「パンで、挟むのですか?」


 火蜥蜴たちにお願いして、刷毛で水をさっと塗った穀物パンをいくつか焼いてもらう。

 その間にちぎったレタス、トマトを洗って輪切りに。

 チーズをスライスして、ベーコンは両面に焦げ目がつくまでじっくりと大量に焼いてもらう。

 私はその間に、"アレ"を作らなければ。


「お願いしていた卵はゆで上がった?」


「はい、こちらで冷やしてあります!」


「ありがとう。そうしたら、殻を剥いてくれるかしら」


 と、隣にナーラが並び立ち、


「私もお手伝いいたします」


「助かるわ。お願いね、ナーラ」


(ゆで卵はこれでいいとして)


「サミル、手伝ってくれる?」


 私はサミルと一緒に、残っている卵をぱかりと割って、卵黄と卵白に分けていく。

 サミルはパカパカと手際よく割り分けながら、


「黄身の部分だけを使うなんて、"サンドイッチ"というのは不思議な食べ物なんですね」


「あ、違うの。これはサンドイッチの味付けにつかう、マヨネーズっていう調味料を作るためなの」


「調味料? 卵の黄身が、調味料になるのですか?」


(まあ……驚くのも無理はないか)


 前世の私もマヨネーズが卵から出来てるって知った時、すごく驚いたし。


(このくらいあればいいかな?)


「卵黄の入ったボウルに、お酢と塩コショウ、ちょっとだけ蜂蜜を入れて……」


 お願いね、とサミルにボウルを渡すと、「任せてください」と泡立て器を持ったサミルがチャカチャカと混ぜ始める。


(量も量だし、混ざり合うのには時間がかかるかな)


 そう思っていたら、あっという間にもったりとしたソース状になってしまった。

 感動の表情でボウルを見つめるサミルは、まったく疲れていないらしい。


(魔族、羨ましい……!!)

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