(54) 裂け目-8
かつて世界は一つだった。
神と原初の魔女達の争い、"代理戦争"によって世界は幾つもの欠片に分かたれた。
囚われた魂の鳥籠、狭間の"森"の隠れ処、
魔女達が挑み続ける、誰も辿り着いた事の無い"塔"の頂、
絶対的な調和と秩序、知性と感性の象徴、"学園"、
旅路を終えた魔女達が眠り続ける、"腐海"の夢棄て、
世界の統治と変革、在りし日の栄光、"古都"、
嵐吹き荒ぶ不毛の大地、夢未だ成らず者達の"渓谷"、
かつて代理戦争の舞台となり、今も崩壊をし続ける、遺された"古戦場"、
侵されざる聖域、夢紡ぐ孤島、"庭園"、
大地を溶かし、疫病をもたらす"砂漠"の熱風、
黄昏の娘達が歌い踊る、安息の地、"祭殿"、
廃れる事ない御伽噺、神話と歴史の境界線、"丘陵"、
雷鳴が轟き揺れる、朽ち果てた記憶の"迷宮"、
死に覆われた巨大湖、嘆きの"氷原"、
────そして、追放されたもの達が潜み棲む、世界の裏側、"裂け目"の深淵。
失われたものは、もう二度と戻らない。
繋ぎ合わされた世界は歪で不完全であったが、魔女達はそれこそが世界であると、信じ続ける他無かった。
欠片達を結合し、統合する過程において、悲哀と悔恨に満ちた思想は原初の魔女達によって意図的に覆い隠され、そして忘却されていった。
手が届かないが故に永遠となった者達は、欠けたものを今でも探し求めている。
そしてどうしようもなく救いようもない中で、歪な世界を今も作り続けていた。
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