(18) 出来損ないの娘達-12

「あたしが思いのままにならないと気が済まない性質なの、知ってるでしょ?」



双子の魔女の姉は気性が激しく、物怖じしない性格らしい。



「ねえねえ、お姉ちゃん。席が決まっている訳でもないし、もう少し落ち着こうよ」


「あたしは決めてるんですぅ~~、落ち着いてますぅぅ~~!」



それに対して妹は、慎ましくて思慮深い性格らしく、事を荒立たせないように姉を宥め続けていた。



面倒な魔女達と関わってしまった。

それが彼女達に対しての、私の第一印象だった。



*



混乱に見舞われる事を避けるため、早々に席を明け渡した私は、ずれるようにして彼女達と同じ食台を囲んでいる。



「────で、わざわざ"森"から軟膏や解毒薬を作りに来たって訳?ご苦労な事ね」



双子の姉であるハツコイは飾ることなく、遠慮や加減もなく思った事をはっきりと口に出す。


彼女は鍔の広い三角帽子と肩掛けの布を脱ぐと、整った容姿と装いを露にした。透明感があり青みを帯びた薄い紫色の髪の毛は、丁寧に手入れされ腰まで綺麗に伸びてゆく。また、リトルドレスは黒色を基調としており、白色との2色で組まれる無彩色の着こなしは、簡素ながらも洗練された上品さを持っていた。



「そう言えば"森"の魔女が訪れたと、噂になっていましたね」



双子の妹、ナツコイは落ち着いた様子で言葉を差し挟むと、続いて焼き菓子を手に取って口へと運ぶ。


妹のリトルドレスは白を基調としており、黒色と2色で組まれたその着こなしは、姉とは対照的だった。それは良く似た容姿ではあったものの、また違った品の良さを感じさせる。



「今頃は飛べない魔女って噂になってますよ、それ…」



私が重い気分を引きずる様にそう呟くと、


「うわ、あんた飛べないの? だっさ!」


容赦のない、姉だった。




私よりも幾分か若い双子の魔女は、"学園"に7年前から滞在し続けているらしい。"塔"と呼ばれる遺跡で生まれ育った彼女達は、今は"学園"で取り扱う幅広い分野において、専門的な知識を学び続けている。


とりとめない会話の中で、ふと眉間を寄せながら真剣な表情をしていたハツコイは、不意に真面目な顔をしながら会話を続けた。



「ま、親に孝養を尽くし、頭首には敬意を払う。そして先輩には礼節を尽くし、師には懸命に仕えることね。────────で、惚れ薬とか作れるんじゃないの、ハルマリくん。そこんとこどうなのよ」


「────お姉ちゃん、馬鹿に付ける薬は無いんだよ」



どうしようもなく、駄目な先輩の様だった。

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