(14) 出来損ないの娘達-8
朝焼けが東の空に広がり始める頃、私は明確な目的も持たず、気の向くままに、"学園"の中を歩いていた。
下層階は上層階に比べて壁が厚く、また窓や扉が小さく少ないため薄暗い。蝋燭が灯すささやかな火の揺らぎは、見慣れない道を通る私にとって、心安らぐ温かさだった。
"学園"の下層を抜けて裏手へ回ると、鮮やかに色づいた巨樹が連なる並木道が広がっている。多彩な色の葉が重なり合った自然の織りなす美しい情景は、見る私をどこまでも楽しませてくれていた。
きっと、実りの頃は鳥達も魅了してやまないだろう。
根元から幹を広げる木々の姿は雄大で、堂々たるものだった。
*
私が一本の巨樹の下で足を休めていると、枝先で羽を休めていた一羽の鳥が近寄って来た。
「おはようございます」
私が挨拶をすると、鳥はそれに応えるようにして私の肩に飛び乗って来る。私は携帯鞄の中に入った小瓶から木の実を取り出すと、鳥は警戒心を抱く事無く、それをゆっくりと食べ始めた。その姿をしばらく眺めながら、"森"と変わらないその光景に嬉しさが甦ってゆく。
"学園"の動物達は引き寄せられたように、いつしか私の周りには、鳥や獣達が囲うように集まっていた。
*
私達はきっと、触れ合うことで生きてゆく。
触れ合うことで力を貰い、笑って、泣いて、気持ちにそっと寄り添ってゆく。
四季の移り変わりを肌で感じながら、成長と変化を楽しみ、自然と共に生きてゆく。
それはどこに行っても変わらない、私にとっての暮らしの中の一つだった。
動物達に囲まれながら、はらり、はらりと舞い落ちる色鮮やかな落葉の中で、魔女は幸せそうに笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます