(12) 出来損ないの娘達-6
「ふふ、そう謙遜なさらずとも良いでしょう、あのタルト オ シトロンの推薦なのですから」
魔女は私を気遣う様に言葉を補うと、続けて話を進めてゆく。
「薬剤や軟膏を用意して頂くにあたって、基本的に"学園"内の行動に制限はありません。作業に必要な器具や備品は一通り揃えておりますが、実際に確認されるのが一番でしょう。────────ともあれかくもあれ、慣れない旅路の緊張を解かない事には始まりません」
労いの言葉と共に、魔女はその場を切り上げるように促した。
「それと、何かあれば彼女を使うと良いでしょう」
カイルベッタ ウインターフロストは隣に立つ魔女に向けてそう言い放ち、それに合わせてシュリードゥワリカは丁寧に腰を折る。
「何かありましたら私、シュリードゥワリカまでお申し付けください、こちらで対応いたします」
私は2人の魔女に挨拶を済ませると、最後の言葉を締めくくった。
「承知しました、今後ともよろしくお願いします」
*
初めての旅路を経て、一つの点へと辿り着く。
触れ合うことで、得られるものがある。
経験をしてみて、初めて分かるものがある。
きっと、世界中に存在する無数の扉には、鍵なんて掛かっていないのだろう。手を触れればその扉は少しづつ開き始めて、その隙間からは、見たことのない知らない世界が広がっている。
何時もの日常は彼方へと通り過ぎ、私の驚きと感動で満たされた"学園"の初日は、瞬く間に過ぎていったのだった。
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