(8) 出来損ないの娘達-2

箒に乗り合わせた2人の魔女が、古城を目指して飛んでゆく。私はシュリードゥワリカの腰に後ろから手を回しながら、振り落とされないよう距離を縮めると、気持ちを覆い隠す様に顔を埋めた。


ふふ、と唇から風が漏れるようにしてシュリードゥワリカは微笑むと、


「────大変失礼いたしました、このような経験は初めてだったものですから」


シュリードゥワリカはそう言いながら、後ろに座り込む私へ興味深そうに視線を向ける。私は顔に火を焚くようにして、恥ずかしさを露にすると同時に縮こまるようにして言葉を返す。



「こちらこそ大変恐縮です、微弱な魔力しかないものですから……」



申し訳なさそうな表情をしていた私に、シュリードゥワリカは穏やかな表情で言葉を投げかけた。



「魔女も人も同じ、誰しも得手不得手はあるものでしょう。得たものにこそ価値を見出す、何も箒で飛ぶだけが魔女ではありません」



その言葉は慈愛に満ちており、胸の奥に温かさを感じて、応える言葉が熱を持つ。



「────そう、在りたいですね」



私はシュリードゥワリカと目を合わせるようにして、やや照れた表情で相槌を打った。



それ以上会話が続く事は無かったが、沈黙の中で、魔女達は何処か幸せそうだった。



*



"学園"の上層から見下ろすようにして、2人の魔女がその様子を眺めていた。


黒色のケープ風ロングドレスとジップアップショートブーツで身を包み込んだ魔女、ダーチャは鮮血の様な色をした長髪を手で払うと同時に、隣に居座る魔女に届くように、怪訝な面持ちで呟きを漏らす。



「一体何ですの、あれ……」



魔女、ロゼ ロワイヤルは襟元に白いリボンをあしらった青と白のリトルドレスを美しく着飾りながら、若干の興味をかきたてられた様に2人の姿を目で追い続けた。



「────飛べない魔女も居るのね」



やがてロゼ ロワイヤルは一言言い放つと、透明感のあるホワイトアッシュの長髪を揺らすようにして、興味を失ったように去っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る