2.出来損ないの娘達
(7) 出来損ないの娘達-1
魔女達は世界各地に根を張りながら、今でも成長をし続けている。
その中でも"学園"は教育を通じて優秀な魔女を集めており、裂け目に眠る神の遺物や遺産を調査し、厳重な監視によって世界の均衡を見守り続けてきた。
*
私は鳥から本来の魔女の姿に戻ると、身なりをもう一度整えてから"学園"の玄関口へと歩を進めた。"学園"正面には太陽を象った装飾が目を引く門が建ち並び、玄関口に備え付けられた呼び鈴の紐を引いてその鈴を鳴らす。
姿勢を正しながら息を深く吸い込んだのち、目を閉じてゆっくりとそれを吐き出した。呼吸と共に、少しずつ身体の緊張が解けてゆく。
「────お待ちしておりました、"森"の魔女様」
そう言って開いた眼前で私を迎えたのは、柔らかな物腰を崩さない、淑女然としてふるまう一人の魔女だった。綺麗に腰を折った様子は気品に溢れており、立ち襟のロングドレス姿と毛先まで手入れが行き届いた金髪もまた美しかった。
「お招きに与かりまして、ありがとうございます」
こちらも目線を向けるように挨拶を掛けたのち、目の前の魔女へと応対するように丁寧に腰を折る。
「カイルベッタ ウインターフロスト様より仰せつかっております。長旅でお疲れの事と思いますが、先ずはわたくし、シュリードゥワリカが城内へご案内いたしましょう」
シュリードゥワリカは微笑むようにして話し終えると、手にした箒を水平に傾け、柄にゆっくりと腰を掛けた。膝が連なる様にして、細く長い脚が爪先まで伸びてゆく。
彼女は左手を添える様に進行方向へと軽く掌を掲げるが、私は自身の杖を握りしめながら言葉を詰まらせ、苦笑いして呟いた。
「箒の扱いには不慣れでして……。あの、────────────ご一緒しても構いませんか」
"学園"での第一歩は、私にとって恥ずかしさと気まずさが混ざり合う、何とも居心地が悪い始まりに他なかった。
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