(4) 森-4

成熟こそ魔女の価値そのものであり、未成熟性とは青年期の健康に他ならない。

旅人である"愚者"は魂そのものであり、"世界"を目指して放浪しながらその宿命を背負うとされる。


今は何者でもないその物語は、旅の途中で様々な人物と出会い、あるいは彼らへと姿形を変えてゆく。無垢な存在である"愚者"は、"魔術師"へと姿を変えて新たなものを創造し、"女教皇"と変わりゆき分別や思慮を知る。


その魂の成長を繰り返しながら、時の経過と共に魔女は"世界"へと至るものとされていた。



*



与えられることに価値を見出さなくなったのは、いつ頃からだっただろうか。

私だけの世界、文字通り一人きりの世界は変わらずに、その均衡が崩れることなく今も動き続けている。


循環し続ける全ての行為は、その全てが自分へと巡り返る。発展することのない、この鳥かごのような"森"は、今の私にとってあまりに平穏で分かりやすい世界だった。



各々の意思は、きっと広がってゆくべきものなのだろう。託した思いは願いへと変わり、それはまた、別の誰かへと託される。誰かの意思が魔女の間を渡り移りながら、変化と成長を繰り返して広がってゆく。


それはきっと、別の意志ある誰かの原動力となるだろう。



魔女の願いと、世界に用意された無数の扉。

いつか自分にも、答えに辿り着ける時が来るのだろうか。



私は腰掛けた椅子から天井を仰ぎ見ながら、


「何故今なのかは分からないけど、それでも、────何もないとは言えないでしょう?」


言葉を投げかけて微笑んだ。



何よりも私たちはまだ、産声を上げたばかりなのだから。

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