第4話

病院からの帰り紗栄子は久々に心が晴れやかでルンルン気分であった。夫の浮気が、自分の勘違いであったこと。(でも、昨日は女のところに行ってくると意味深な事を言った優也が悪い。私だって心配したんだから、私は悪くないわ。それに我が子達に私が化け物の鬼のように嘘ついたことも許せないけど、まぁ今回は大目に見てあげるわ)今まで生きるのを諦めたかのような、死を受け入れたかのような我が子達が生きる希望を持ち、”病気に負けない、諦めない“と言ってくれて将来の夢や目標のために勉強を教えてほしいと言ったのだ。

更に今までほとんど話などしたことが無かったのに女子会の如く楽しくハシャギながら三つ子は、我先にと積極的に話ししたのだから。

今まで夫を罵り三つ子のことで八つ当たりをしていたのに、その夫優也がホントの自分の子でもないのに三つ子に生きる希望を与え、将来の夢に向かって努力することを即したのだから。たとえ三つ子が5歳まで生きられないとしても、三つ子がやる気を出している間は自分がフォローを徹底的にする覚悟である。

紗栄子は病院への通り道にある古本屋に立ち寄っていた。モチロン三つ子に教える勉強の基礎となる本を探しに来たのだった。

(先ずはあ、い、う、え、お、とか1.2.3.4.の読み書きの基礎から教えないとダメね、後は本屋に寄ってノートと筆記用具を買って·······)

三つ子のための買い物も楽しく買うことができた。

家があるマンションに帰ってきたときに、今までは黙っての出入りだったがこの日は「ただいま」と言って入るのだが返事がない。台所のテーブルを見るとカップラーメンの空容器と割り箸が置いてある。また食べたままにしてと片付けようとしたら、ベランダで腰に湿布を貼っている夫が湿布貼りに苦戦しているのが目に入り、近付いて優也から湿布を取り「あんまり浮気をしちゃ嫌よ、それと子供達に変な嘘を植え付けないでね。」優しく湿布を貼ってあげるのだった。

優也は何事かと言う顔をしていたが理解したらしく「アァ、分った」というと紗栄子の顔が優しい顔をしているため、ついムラムラしてくる。三つ子が生まれてからは、イヤ結婚したときには妊娠していた為エッチなことは出来ずにいたので、ついムラムラきて紗栄子を抱えて寝室へと向かう。紗栄子は口ではイヤよイヤよと言うが本気で嫌がってはいない為、スンナリベットインして朝まで熱い包容をしたのだった。昼頃に優也は目覚めたがすでに、妻の紗栄子はすでに外出したらしく、台所には朝ごはんのサンドイッチがラップされて用意してあり、置き手紙がある。

“病院へ行ってきます。昼ご飯は冷蔵庫の中に作り置きが有りますので、チンして食べてください”

冷蔵庫の中には野菜炒めとチャーハンが用意されていた。

優也は昨晩腰が痛いのに、張り切ったために更に腰を痛め外へは行かず、コンピュータとの睨み合いの1日で、紗栄子は20時頃帰ってきて机に座り楽しそうにブツブツ言いながらたまに、”ウフフフ“と笑いノートに何かを書き集中している。

優也が一段落付く頃には11時を周り紗栄子は眠りについていて、台所には、食事が用意されており、1人でそれを食べて、紗栄子は自分のイビキを嫌がる為ソファーにいつも通りに寝るのだった。

次の日も優也が起きたら紗栄子は病院へ行ったらしく、朝ご飯と昼ご飯の用意がされていたのでそれを食べて1日中コンピューターとにらみ合う。

紗栄子が2日目に病院で三つ子に勉強を教え、休憩の合間にお父さんの話をふると三つ子は、楽しそうに話に乗ってくる。

カナが「お父さんが来ると必ずホッペタにチューしてとせがむんだよ。」

ユナが「ユナ達がチューすると必ずお父さんもオデコにチューするの」

マナが「チューをしたあと、必ずお父さん私達のホッペで自分の顔を挟んでこうするの」

マナがカナとユナのホッペに自分のホッペを挟む実演をしてみせると

カナが「お父さんが言うの、お前達とお父さんは、チョーラブラブだねって言ってホッペタをグリグリ回すの、でもヒゲが痛くて大変なの。」

ユナが「カナとマナはまだ良いよ、片方だけだもん。アタシなんて右と左のホッペ両方されるから、ヒゲが痛くて泣きそうになるのを我慢してるんだからね。」

紗栄子は思い出していた。優也と結婚して三つ子が産まれるまでは毎日のように優也は、ホッペグリグリをいつもじぶんにもやっていたンだが、三つ子が生まれてからは、やられて無い。少し三つ子にジェラシーを感じると共にあの不精ヒゲが本当に痛かったのを思い出し、子供に同情する紗栄子であった。

「分かったわ、お父さんにはホッペグリグリは止めるように言っておくね。」

カナとマナが「「私は我慢できるから止めなくていいの」」

ユナが「ユナも止めさせなくていいの我慢する。」

(ホッペグリグリは嫌じゃないんだ。)そう思いクスクス笑いが込め出してくる。

そんな話をしているとカナの首に金のネックレスが見えたのだ。

紗栄子が「コレなぁに」と、カナの首からネックレスを出す

カナが「お父さんからのプレゼントだよ」

ユナとマナがカナの口を押さえて小さい声で「お父さんと約束したでしょ。秘密だって、お母さんには内緒だって」

カナが小さい声で「ごめん、つい」

三つ子は、小さい声で喋っているつもりだが、紗栄子にははっきり聞こえていた。

(私に内緒ってどういう事。秘密って何、私をノケモノにする気)と少しだけイライラする。

「お母さんに見せて」というと紗栄子はカナの首からネックレスと外すと貝のように閉じているフタを開けようとすると

カナが涙声で「駄目なの、中を開くとお父さんの愛情が逃げちゃうから、開けちゃだめなの」必死でお母さんが開けようとしているのを邪魔しようと、紗栄子の手を掴むのだった。

紗栄子が「大丈夫よお父さんの愛情は逃げないわよ。」そう言っても、カナは涙を流しながら

「ダメー、イヤーお父さんに嫌われる〜」

それを聞いたユナとマナは自分の首のネックレスを手に取り背中に隠すのだった。

「お父さんは、カナ、ユナ、マナを嫌わないし、お父さんの愛情も無くならないわよ、約束する。どうやって愛情を中に閉じ込めたの」

3人が「「「ホントウに」」」

ユナが「お父さんはね、こうやって両手で包むように持ってフタを開けて、口を近付けて“愛情、愛情、愛情〜って3回言ってフタを占めたの」

マナが「お父さんが“愛情をた〜ぷり入れておいたからな”て言って渡してくれたの。」

「じゃ、お母さんにも愛情をた〜ぷり入れさせて」

カナが「うん、でも逃げないようにユックリ小さく開けてね」

「うん、分かったわ」

それを聞いたユナとマナは「「お母さん、私のにも入れて」」とネックレスを渡すのだった。

3人とも紗栄子の手の中に開かれたペンダントのネックレスを心配そうに覗き込むのだった。

紗栄子はハート型のペンダントのネックレスを開いて見ると、自分と優也の結婚したときの二人が写った写真が蓋の方に貼られ、反対側には三つ子の赤ちゃんの写真が貼られている。外側には各自の名前が書かれていた。つい、クスクスと笑いが込み上げてくる。

優也と同じ様に手のひらに口を近づけて「愛情、愛情、愛情〜」とタップリの愛情を注ぎ込み、蓋を占めるのであった。3人に返すとホッとしたように

「「「ありがとう、おかあさん」」」と満足な笑みで

言うのであった。

「お父さんとは他にどういう秘密があるの。」自分だけ除け者は嫌なので必ず聞き出してやろうと優い声で聞くのだが

三つ子は同時に反対側を向き、聞こえない振りなのかしらばっくれて、「「「知らな〜い」」」と言って頑として口を割らない。

あまりしつこくお母さんが聞くので

マナが「お母さん、幽霊って信じる。」と聞くと

ビックっとなった紗栄子はまるで両手でガードするかのように、胸のあたりで構え、イスから床に着いている両足を上げて、「エッ、エッ、エッ、何、何、何幽霊が出るの、ウソ、ウソホントに」そう言って床下をまるでゴキブリを探すかのようにキョロキョロ見回すのだった。

それを見た三つ子は、互いの顔を見ながら確信したかのようにうなずき合うのだった。

カナが「バカみたい、幽霊なんているわけ無いでしょう」

ユナが「お母さん、子供みたい」

紗栄子は自分が子供みたいと言われて恥ずかしくって「そうよねー幽霊なんて居るわけ無いわよね。」そう言いながらも三つ子に勉強を教えながら、それでもしばらくは床を気にしてチラチラと見るのだった。



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