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テレビをつけると、山本の事件は大々的に報道されていた。異常な殺し方として捜査を進めているとのことだった。
あの時、俺は、20分かけて山本を食った。おかげで、俺の胃袋は満杯になった。少しやり過ぎたかもしれないと思ったが、やりすぎるくらいのほうが山本にはふさわしい。それだけ俺を含めて、いろんな人間をカツアゲとイジメをして違う意味でいろんな人間を食い物にしていたのだから。
俺はとても満足していた。今まで俺を苦しめた奴を喰らうのはとてもいい気分だと知ってしまったからだ。
ノートにリストを作った。食うリストだ。最初に名前を書いたのは菅だ。こいつには酷い目に遭わされてきた。だが、今はどこにいるのか分からない。奴のフェイスブックを見ても投稿がない。いったいどこに逃げたのだろうか?実家かもしれない。一度だけ、彼の実家がある小田原に行ったことがあった。菅の父親も母親も菅に似ていて嫌な奴だった。そうだ、3人とも喰らってやろう。それがいちばんだ。
ピンポーンとチャイムが鳴った。どうせ、宗教の勧誘かNHKの徴収だろう。無視してリスト作りの作業を続けた。チャイムの音がしつこく鳴っている。そうとう、緊急の用事らしい。もしかして、あの刑事なのかもしれない。だが、そんなことは関係ない。もう、俺を止められる者は誰もいないからだ。すると、iPhoneが鳴った。画面には水川ニコと表示されていた。つい電話に出てしまった。
「もしもし」と水川の声だった。
「もしもし。なんですか?」
「話がしたくて、家に来たの」
「話すことなんて何もないはずですよ」
「お願い。話を聞いて。頼むから」
俺は迷った。彼女を部屋に招くべきか。でも、少し話すくらいなら別にいいだろうと思った。
俺は玄関に向かって鍵を開けた。すると、水川がいた。
「部屋に入ってもいい?」
「いいですよ」
俺は、彼女を部屋に招き入れた。
リビングのダイニングテーブルの椅子に彼女が座ると俺は冷蔵庫からペプシコーラを出してコップに入れて彼女に出した。
「どうぞ」
「ありがとう」と云うと水川がコーラを飲んだ。水川は相変わらず綺麗だった。胸の中で締め付けられるような思いをした。
「それで、なんのようですか?」
「昨日の事件。あなたでしょ?」
「そうですよ。よく分かりましたね」
「わかるわよ。手口が特殊だったもの」
「それで、なんですか?僕にお説教ですか?」
「まあ、捉え方によってはそうなるは。ねえタバコ吸っていい?」
「もちろん」
彼女はポケットからタバコを取り出して火をつけて吸った。
「タバコいる?」
「じゃあ、もらいます」と言って水川からタバコをもらって火をつけて吸った
「で、なんであんな事をしたの?」と冷静に水川が言った。
「偶然ですよ。僕はお腹が空いていた。その時に、昔、僕をイジメていた奴に出会った。やる事といったらあれしかないでしょう」
「ねえ、自分の立場がわかってる?」
「はい、わかっていますよ」
「あんな派手な殺し方をしたら世間から注目を浴びる。そして、私怨で人を殺すとすぐにあなたに容疑がかかる。あなた捕まるわよ」
「関係ないです。僕のパワーは水川さんが思っている以上に力が増しています。それに警察なんて怖くありません」
水川はため息をついた。「ねえ、警察をそんなに舐めちゃダメよ。北山さんを見たでしょ?物理的な攻撃には私たち弱いのよ」
「そんなのパワーでどうにでもなります」
「あなたこのままだと暴走して、それこそあなたが寄生するきっかけを作った成瀬のようになるわよ」
「かまいません。もう暴走しましたから」
「ねえ、お願い。チームに戻って。地下で匿ってあげるから。そしたら警察も手出しができないから」
「断ります。チームに戻るつもりはありません」
「そんなに、私と高橋が付き合っていることが不満なの?」
「はい、そうです」
「あなたって子供ね。話にならないわ」
「それはお互い様じゃないですか?駅以外でイチャイチャする分には僕だって我慢できます。でも、あんなとこで見せびらかすかのようにイチャイチャして」
「もう話にならないは」と急に水川が声を荒げた。「あなたって私たちが思っていたより、相当のバカなことがわかった。もう、金輪際私たちに関わらないで」
「分かりました。もう2度と関わりたいとも思わないし関わるつもりもありません」
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