34

 俺は、新しいギターと腕時計を買った。ギターは前から欲しかったネットの中古サイトで買ったFender JapanのJazzmaster。

 それから同じく中古で買ったスウォッチの黒い腕時計だ。どちらも親にはバレていない。JazzmasterはMustangに比べてデカくて最初は弾きにくかったが、すぐに慣れた。クリーンで弾いた時の独特のキラキラしてジャキジャキとした金属音が、とても弾いていてとても気持ちよかった。スウォッチは誰も誰も気づかなかった。逆に悲しくなった。手元には80万近く残った。まだ、全然金銭的に余裕がある。なので、鈴木を焼肉に誘った。

 少し高めの焼肉屋の食べ放題に鈴木を呼んだ。店内は比較的綺麗だが焼き肉の煙で充満していた。

「おい、お前の奢りで焼肉なんてどういう吹き回しだ?金は大丈夫なのか?」

「まあね。臨時収入が入ったから大丈夫さ」

「臨時収入てなんだ?」

「秘密さ」

「まあ、今日はゴチになります」

「ああ、好きなだけ食べていいぞ。食い放題だから」

「そうするよ」

 好きは焼肉を黙々とを食べた。

「なあ、そういえば藤浪さんに聞いてくれたか?LINEの件?」

「ああ、聞いたよ」同じシフトの時に藤浦さんに事情を説明した時に聞いたのだ。

「それで?」

「彼氏がいるからダメだってさ」

「マジか。まあ、仕方ない。別れるまで待つしかないな」

「すごいなそのマインド」

「そうか?恋愛は長期的にみる必要があるんだ。だから、彼女が別れるまで俺は諦めないぞ」

「なるほどね」鈴木の心の強さに感心した。

「それで、お前の方はどうなんだ?何か進展でもあったか?」

「いや、全くないよ。相変わらず謎の多い人だ」

「そうか、早いうちに行動に移したほうがいいぞ」

「どうせフラれる遠慮しておくよ」

「でも、よく考えてみなよ。告白してフラれるより、告白しないで新しい彼氏ができたほうがキツくないか?

「そうか?どちらも同じだと思うがな」

「お前は相変わらず内向きだよな」と言いながら鈴木はカルビを口の中に放り込んだ。「恋愛ていうのは運とタイミングだぜ」

「なんだかこの前と言っていた事と真逆の事を言っているな?」

「そうか?」

「玉砕したほうが次に行けるて言っていたじゃないか。その割には藤浪さんにフラれても、彼女の事を諦めてないじゃないか」

「まあね、考え方が変わったんだ。下手に鉄砲を連射するより、一生懸命狙いを定めて撃ったほうがいいて思うようになったんだ」

「なるほど」確かに鈴木のいうことにも一理ある。そうだ今度水川を食事に誘おう。だが、成功する自信がない。それに、彼女に俺の気持ちがバレると気まずくなる気がした。

「なあ、告っちゃいなよ。うまくいくかもしれないぞ」

「他人事だからそんなこと言えるんだよ」

「まあな。でも告白したからって減るもんじゃないんだし。それに、相手も薄々気付いてるんじゃないか?」

「そうか?」

「お前は態度がすぐに顔に出るタイプだからな」

「そうか?」

「ああ、すぐにわかる。俺ですらわかるんだから、感のいい女はすぐにわかると思うぜ」

「そんなもんかね?」

「そんなもんだよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る