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地下鉄の駅で俺はタバコに火をつけて吸っていた。今日は水川が仕事の都合で遅れるか来ない可能性があるらしい。それが悲しかった。
「お、不良になっちゃたか」と霧島が言った。
「なんだか、タバコを吸うと落ち着くんですよね」
「そんな歳からタバコを吸うのは体に良くないよ」と杉浦がSurfaceをいじりながら云った。
「すみません」と俺はタバコを灰皿に置いた。
「まあ、良いじゃないか。16歳なんてもう大人だ。な、桐谷くん」と北山が云った。「俺が14歳の時から酒もタバコもやっていたぜ」
「そうですか」
「そうだよ。杉浦さんは真面目すぎるんだよ。だから気にしなくて良いよ。吸いなよ」霧島が笑いながら言った。
「そんな歳からタバコとビール飲んでると、2人みたいに馬鹿になるわよ」と杉浦がいうとみんなが笑った。
「まあ、タバコもお酒もほどほどにすれば大丈夫さ」と高橋が満面の笑みをしながら云った。俺は高橋に勝てないと思った。こんなに、カッコ良くて気前のいい人に勝てるとは到底思えない。
「そういえば、相方の水川くんとの相性はどうかな?彼女は少々厳しいじゃないのかな?」と高橋は云った。
「いいえ、大丈夫です」
「そうか、それはよかった」
するとみんなが笑い出した。
何か自分が面白いことでも云ったのだろうか?全く自覚がない。
「ねえ、桐谷くん。水川はやめておいた方がいいよ」と杉浦が優しい口調で云った。
「なんのことですか?」と俺はそのセリフでみんなに気づかれていると瞬時にわかった。
「そうだよ。いい女なんていっぱいいる。桐谷くんは同級生と付き合った方がいい」と霧島。
「なあ、にいちゃん。悪いことは言わない。彼女はやめとけ」と北山。
「あの男のことですか?」
「みんなわかってるよ。桐谷くんが水川さんのことを好きなのは」と杉浦が云った。
できるだけ、感情を表に出さないようにしていたがみんなに改めて言われるととても恥ずかしい気持ちになった。
「みんな、そんな言い方はないだろう。もっと違う言い方があるだろ?」と高橋が云った。「桐谷くん。別に君のことを責めているわけじゃないよ。ここは、恋愛禁止とかないんだから。でも、最終的には君が傷つく事になる。余計なお世話かもしれないけど、諦めた方がいい」
「違いますって。水川さんのことを好きになったりしていませんから」と俺は急にオドオドとし始めたのがわかった。心臓がバクバクして軽いパニックに陥りそうになった。
「水川のことが好きって顔に書いてあるよ」と霧島が笑顔で云った。
「恋愛をすることはとても素晴らしいっことだよ。君の年頃なら恋に落ちるのもわかる。だけど、彼女はやめておいた方がいい。言い方が悪いけど、相手にしてもらえないとおもうわ」杉浦が俺の目を見て云った。
「桐谷くん。別にみんな君を責めている訳じゃないんだよ。恋愛は自由だ。でも、君のことを心配して云っているんだ」と高橋が云った。
俺は段々と腹を立ててきた。
「だから、違いますって。水川さんの事は別に好きじゃありません」
「ならよかった。すまないね。みんなで攻めるようなことを云って。じゃあ、桐谷くんのいうことを信じるよ」と高橋が云った。「でも、もし、仮に本当に水川くんのことが好きなら諦めた方がいい。君は若い。若すぎるくらいだ。だから違う普通の同級生を好きになった方がいい。その方が幸せだからね」
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