25
「なんか、お前最近変わったな?何か良いことでもあったのか?」と鈴木は尋ねてきた。
「いや、別に」
「彼女でもできたか?」
「できてないよ。まあ、最近薬を変えたからなその影響だろう」と嘘をついた。
「なるほどね」と言いながら二人でコール・オブ・デューティーをやっていた。
「最近鍛えてるのお前?」
「なんで?」
「なんだか、前まで体がガリガリだったけど、引き締まったというか細マッチョになった気がする」
「鍛えてないよ」
「そうか、きっと俺の勘違いだろう」
鈴木だけが俺の異変に気づいた。母親も気づかなかった。
菅はあれ以来、俺のことを見ると目が泳いで明らかに怖がっているのがわかった。いい気味だ。
俺は、相変わらず鶴を折らずにいた。後もう少しなのだがどうしても最後まで折れなかった。水川は失敗するたびに怒ってきた。きっと、水川のスパルタ教育のせいで緊張してできないのだと。それで自分の部屋で練習したが良いところまで行くと必ず失敗した。焦りは禁物だとわかっているが最終的に焦ってしまう。
水川には「また、同じところで失敗してる。家でちゃんと練習してるの?」と言われるのを繰り返す。その度に心が傷つく。なぜだかわからないが普通の傷つき方とは違う。なんというか悔しいでも恥ずかしいでもない。また何か違う感覚だ。
「なあ、今日は夕飯を食べていくか?」
「いや、今日は用事があるから遠慮しておく」
「なんだ、もしかして彼女でもできたのか?」と急に声が大きくなる鈴木。
「違うよ。今、曲造りで忙しいからさ」
「なるほどね。そういえば、お前の曲最近良くなってきてるよ」
「本当か?」
「ああ、なんていうか歌詞も良くなってるし、ギターも上手くなった」
「それはありがとう」
「もしかしたらレーベルにスカウトされるかもしれないな」と笑いながら鈴木が云った。
「そんなわけないよ。あくまで趣味だから」
「まあ、曲作り頑張って」
「ああ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます