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11月になった。今年の11月は例年に比べて寒かった。M65フィールドジャケットのインナーをつける季節に突入した。

 学校が終わり過ぎに自転車に乗り、校門を出た。そしてコンビニに向かいバイトをした。バイト終わりにスーパーに向かい精肉コーナーで牛肉のミンチを100グラム買った。スーパーの外に出ると公園に向かいベンチに座り生肉を食らった。それが家に帰るまでのルーティーンになっていた。なぜだか不思議だが生肉を食べてもお腹を壊さなかった。

 家に帰ると菅が相変わらず酔っ払っていて俺に対して必ず小言を云うようになった。ひどい時などは「金を貸してくれ」と云ってくる時もあった。しかも、高圧的だった。仕方ないのでお金を貸した。もうトータルで10万円は貸しているだろう。全く最悪な奴だ。

 母親が作った元々不味い料理を食べた。より、不味く感じたのは菅がお金を入れなくなって安い食材を使っているせいか。それとも、俺の味覚がおかしくなったせいか分からなかった。

 部屋に入ると、MacBookAirを開いてネットサーフィン。前のようにギターを弾いたり映画やドラマを見たりする気力はなかったが、ついSNSをみて時間を潰す。なんて最悪でつまらない習慣だろうか。

 SNSを見ていると、トレンドワードに「調布」「殺人事件」と出ていた。なんとなくクリックすると、記事が出てきた。「稲戸区の事件再び」という見出しの記事だった。あの刑事が言っていた事かとページを開いた。記事によると最近、世田谷区、渋谷区で4年前に起こった連続一家殺人事件と同様の事件が起こっているとの記事だった。これに対して警察発表によると、犯人は模倣犯、あるいは複数犯だった可能性が高いと発表していた。

 また、事件が始まったのか。やはり複数犯の説が正しかったのか。あの、ネット上に拡散した犯行現場の写真。体が爆発したように欠損した死体。確かに1人でできる犯行ではない。なぜ、警察は複数犯の可能性を考えなかったのだろう。もし、あのときに、ちゃんと調査をしていたら今回の事件も未然に防げた可能性もあったのに。そんなことを考え始めるとあの時のことを思い出した。そしてパニックになった。頓服薬を出して飲み込んだ。しばらくしてクスリのおかげで平常心を取り戻した。もう、これ以上この事件を追うのをやめよう。そう決めてMacBookAirの電源を切った。

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