鈴木と調布の映画館でマーベルの映画「ブレイド」を一緒に観た。その帰り道に鈴木の家にお邪魔して映画について話あった。思っていたよりダークでゴアシーンがあった事に俺も鈴木もびっくりしていた。俺たちは興奮した。映画の話がひと段落すると近状について話し合った。鈴木は好きだった子に告白してフラれたらしい。かわいそうに思ったが好きになる人ができるだけ幸せだと感じた。

 俺は、未だに恋に落ちていなかった。16にして恋をしたことがないのは異常だと鈴木に言われたが本当だろうか。もしかして、自分の母親を見て恋愛などろくなモノではないと思ってしまっているだけかもしれない。話は変わって俺のイジメ問題になった。

「それは大変だな。お前が変な学校に行くからだよ」

「確かにそうだけど、仕方ないだろう。同じ学区だと俺の事を知っている奴がいるし、中学の時は鬱でろくに学校に通えなかったんだから」

「まあな。あんな事に巻き込まれたら鬱にもなるだろうな」

「まあ、酷くなったら学校を辞めて通信制の学校か、高卒認定試験でもうけるよ」

「そうか。お前も、いや、お前の方が大変だな」と鈴木は窓の方へ行って、窓を開いてタバコを吸った。

「お母さんにバレないのか?」

「ああ、多分、母さんも父さんも知ってる。ただ、外で吸わなければ大丈夫だよ。お前も吸うか?」

 俺は鈴木からマルボロを1本貰って吸った。今回は蒸せる事なく肺に煙を吸い込んだ。

「やったじゃん。これでお前も立派な男だ。あとは童貞を捨てるだけだな」

「童貞を捨てるね。いつになることやら」

「なんか最近いい出会いはないのか?」

「特にないよ」

「お前の働いている女の子はいるだろう?あの黒髪のロングヘアの?」

「ああ、藤浪さんね。タイプなの?」

「超可愛いじゃん。アタックしてみたら」

「タイプじゃないし、相手は大学生だよ。まず、相手にしてくれないね」

「お前には夢がないよな」と鈴木が言うと小皿にタバコを押し当てて消した。

「お前に夢がありすぎるんだよ」俺も小皿にタバコを押し当てて消した。

「そういえば、なんか面白いことあった?」

「そういえば、昨日刑事が来た」

「え、山本のことでか?」

「違う、殺人事件の事でさ」

「なんで、今更」

「同様の事件が起きたんだとさ」

「マジかよ」というと鈴木は楽しそうな目をした。

「何楽しんでるんだよ。不謹慎だろ」

「仕方ないだろう。不謹慎だけどあんな殺し方みた事ない」

 確かに鈴木の言うとおりだ。どうしたらあんな殺し方ができるのか疑問だ。

「爆弾でも使ったんじゃないか?」

「爆弾だったら硝煙反応がでるから一発でわかるよ」

「さすがコナンくんだな」

「うるせえな。お前はなんだと思うんだ?」

「さあな、世の中には分からないことがたくさんあるからな」

「なんだオカルトか?」

「違うよ。きっとマジック道に何かもっと単純な方法があるんじゃないのか?」

「なるほどね」

 するとドアからノックの音が聞こえてきた。俺と鈴木はドアを閉めて、灰皿がわりに使っていた小皿を隠した。

「何?」と鈴木。

「桐谷くんがいるんでしょ?」と鈴木の母。

「はい、います」

「今日、一緒に夕食どうかしら?」

「いいんですか?」

「いいわよ。今日は焼肉よ。たくさん買ったから、たくさん食べてね」と鈴木のお母さんがいうと1階に降りる階段の音が聞こえ遠のいていった。

「お前も図々しいな。焼肉を奢ってもらうなんて」

「お前だって、俺の家のカレー食っただろ」

「お前には悪いけど、あのカレーは」

「ああ、相当まずいだろ?」

「ああ、どうしたらあんなに不味くできるのか不思議だ」と鈴木。それはこちらも同じだ。明らかに何か間違っている。

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