第十三話 涼宮家の当主
【2006年(万通7年)4月27日(木) 15:23】
上野警察署の外。数名の警察官が出てきて、友に繰り返し謝罪していた。
「すみません!誠に申し訳ありません!」
「だから、痴漢じゃないって言ってるじゃないですか!どうして聞いてくれないんですか!勝手に騒いで!人に迷惑を掛けられるのが嫌い!」
「はい!ご迷惑をおかけして申し訳ございません!」
友は警察署を出た後、振り返って警察官たちに直接苦情を言いたかった。なんの理由もなく一晩留置され、痴漢のように無礼な扱いを受けたことで、たくさんの不満と屈辱を抱えていた。
明日奈はそれに興味を持たず、もしくは見慣れていた。
友の容姿は醜く、猥褻なため、しばしば他人に痴漢と誤認されることがあった。
昨日は病院にいて、本来は茜をこっそり守るはずだったが、病院の人に怪しまれて通報され、あっという間に警察に捕まり、身の自由を奪われていた。
明日奈は今朝、その知らせを受け取ったが、朝は幼稚園に行くため、昼になっていつものように弁護士に連絡をして手配をお願いした。
「本当にお手数をお掛けして申し訳ありません。」
「はい、これが僕の仕事なので当然です。」
弁護士はとても謙遜で、ビジネスライクな挨拶を交わした後、気持ちよく去っていった。
日本には数多くの法律事務所の一つ、
もちろん、それに見合った高額な費用がかかったが、明日奈は藤原家に代わって支払うように依頼した。だから、彼は藤原家に婿入りした。倉科家とは関係がない。
「よく聞きなさい!本当に浅慮な考え方だ!人を見た目で判断してはならない!顔立ちの印象だけでは内面を正確に判断できないんです!私は人間のDNAだけを見るん……」
友の愚痴は長くなって、しかもますます変なってきた。明日奈の時間はとてもありがたく、むだなおしゃべりが聞きたくない。明日奈の時間はとてもありがたく、とにかく無駄な意味のない会話があんまり好きじゃない。
「もう行くよ~」
「我未上車喎!(私はまだ搭乗していない!)」
明日奈が振り向いた後、友は待ちきれずに追いかけてきて、広東語を話します。
「何を話しているの?」
「あら、それはタさんの名セリフなんだ。」
「タさん?だれ?」
「まぁいいや。」
「また異世界のネタか?」
友は微笑んで頷く。おそらく異世界から転生してきた詩葉だけが、彼のネタについていけているんだろうな。
上野警察署と東京大学医学部附属病院は離れていたので、二人は倉科家のセダンに乗ることになった。車内に運転席と後部座席と仕切られた空間があったので、運転手は乗客の会話を聞くことができなかった。車で約20分ほどかかるが、明日奈を友にひそかに相談していた。
「昨夜、茜が襲われました。」
「えっ?茜は......茜は大丈夫?」
「幸い茜は強いし、佐々木さんがナイスタイムリーに助けてくれて、襲撃者を無事撃退した。」
「よかったら……大切な時に茜を守れなくて、本当に申し訳ありません!」
明日奈は友を責めるつもりはなく、彼の身柄が警察に拘束された、何もできなかった。むしろ友が襲撃者の気配に気づいていたので、明日奈は杏珠も茜のそばに置くよう指示して、万全を期した。
「茜は怪我していないか?」
「大丈夫、全くの無傷です。ただ、涼宮家は病院の環境における安全でないと考えて、できるだけ早く退院させたいそうです。」
茜が無事であることを聞いて、友は安心しました。
「そうか……それで、襲撃者が見えたのか?」
明日奈が顔を顰めて、残念そうに首を振った。
ショーンの感覚を共有できたおかげで、昨夜の病室で起こったことがすべてはっきり見えていた。
襲撃者は暗闇から急に現れ、頭と首を覆って顔を隠し、強大な力を持っていた。ベッドを片手で持ち上げて投げるなんて、どう見ても普通の人ではない。最終的に警備員たちが駆けつけると、襲撃者は窓ガラス割って逃げ、12階から飛び降りた。ショーンと杏珠はすぐに追いかけたが、相手は目を瞬く間に闇に溶け込んで、完全に姿を消した。
明日奈は事情を話した。友は胸の前で両手を組み、しばらく考えこんでいた。
「警察はどう言っているの?」
「さあねえ、まだ調査中、今はまだ何も分からない。」
「聞くところによると、襲撃者は異能者だった可能性が高いが、まだ断定できない。」
――情報が足りないなら仕方ないか。
真剣な調査をせず、一面的な言葉だけで推測し、すべての不可解な怪奇現象を超能力や魔法によるものと決めつけることは、無論軽率な直感だけに基づいた判断にすぎません。
「確かにそうだね、疑わしい点が多い。」
「疑わしい点?」
明日奈が答えようとしたときに、目的地に無事に到着したことに気づき、シートベルトを外して車から降りました。友が車のドアを開けると、すぐに昨日とは全然違う雰囲気を感じた。
「おいおいおい、それはどうしてこんなことになったの?」
「そりゃ、昨夜あんなことがあった以上、病院だろうが警察だろうが、強力な措置を取らざるを得ない状況に陥る。」
東京大学医学部附属病院内では、警察官が各所に配置されている。さらに、涼宮家の護衛と思われる男が十数人に、重要な場所に配置されている。
「今、セキュリティ対策を強化するのは遅すぎるんじゃない?」
「泥棒を捕えて縄をなう、何もしないよりはましだ。」
「え――」
「でも……」
「でも?」
「ん――いいや。さあ、早く持って。」
「これは何?」
「お見舞いでの手土産です。」
明日奈は何かを思いついた様子で、口に出さなかった。病棟に入ると、すぐに子供の表情と口調に切り替え、看護師に茜にお見舞いに行きたいとお申し出ました。
通常、面会者には年齢制限がある。しかし、面会の茜は涼宮家の千金で、明日奈も倉科家の千金なので、ある程度の特権を享受でき、すぐに面会を手配した。
涼宮家の当主である信と遥は、一足先に来ており、明日奈と友が見舞いに来るのを歓迎していた。
「奥様、遥姉ちゃん、こんにちは。」
「お久しぶりでございます。明日奈さん、ご機嫌よう。」
「おかげさまで、元気です。今日は茜の見舞いに参りましたところ、何と奥様にお会いできる運びとなりました。ご健康を心よりお祈り申し上げます。」
目の前のこの人物は、現在の涼宮家の当主である
――まあ、似たもの同士ほど対立しやすく、逆に違ったもの同士だと仲良くなりやすい。これは人間。明日奈は客観的に見ているから。
この老人の前では、明日奈は子どもに偽装するために一生懸命に努力していた。もう同じミスは犯さない、絶対に。
雅に自分の弱みを握られるだけで大変だね。信と同じように腹黒い人物に、その秘密を知られることは絶対に避けなければならない。
【補足情報】
タさん=ン・マンタ(吳孟達)。
彼はこちらの世界の香港の俳優です。
そのセリフは映画「ファイト・バック・トゥ・スクール」から来ています。
しかし、この人はあちらの世界には存在しないようです。おそらく俳優にならなかったのでしょうか?
二馬友がこのセリフを知っているということは……
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