第四話 魔女
【2006年(万通7年)4月22日(土) 20:20】
「――それが、あたしが来た理由です。」
「茜が本当に目を覚ますなんて……驚いたよ。」
東京都世田谷区の倉科様邸に、夜遅くに訪問者が一人現れました。
二馬友は予約せずにお邪魔し、
通常では門前払いをすることが規定されていましたが、ご訪問者の身分は特別なお方だったため、当主は内部への入室を許可し、応接室にて着席いただくよう手配いたしました。
政府代表訪問団の一員として出発するはずなのに、突然チームを離れて一人で動いているのは、どう考えても怪しいですね。
「二馬さんと藤原様は海外に御旅行なさらないはずでは御座いませんでしたか?」
「しかたない、突然あんなことになったから、雅ちゃんがあたしを留めてくれたんだ......ところで、今は二人きりだし、そんなこと口調で話す必要はないだろう。」
友の目の前には、およそ5歳の小さな女の子が座っていました。相手は黒い長いストレートの髪を持っており、左右から少しずつ髪を取り出して小さな三つ編みにしていました。白いシルクの半袖のワンピースを着用しており、まさに小さな大人のように物腰きちんと腰を据えて座っていました。
他人から見れば、美女と野獣のように映るかもしれませんが、可愛そうな幼い女の子が悪い手に落ちないか心配になるでしょう。
しかし、実際には軽々しく騙されないでください。
相手は正真正銘の次期倉科家当主、
友が二人に熱いお茶を注いでやったあと、明日奈はまず一口飲んで、ストレートに聞いた。
「藤原様に頼まれて、あすなを処理してくれるって本当なの?」
「まさに!」
「そうか、この時間にわざわざ訪ねて来るとは、いい心じゃありませんわね。」
明日奈はゆっくりと顔を上げ、両眼を開けた。
右の目と左の目は違っていて、血のように赤く、妙な光を放っていた。
「だから......茜が本当に前世の記憶取り戻したって、どうしてそんなに確信が持てるのですか。」
「ちょっと茜をこっそり観察していたら、広東語を話しているのを聞いたんだ。」
「広東語?」
「明らかに前世の記憶を取り戻したからこそ、広東語を話せるようになったのだ。」
二馬友は中国出身で、元々広東語が分かる、間違いなく誤解するはずがない。
明日奈は茜とは2年前から親しい間柄だ、100パーセント確信しているが、あの子は広東語が全く分からない。
「そう言うと、茜もまさに私たちと同じ転生者なの?」
「十分ありうるね。」
「三人のお嬢様が皆転生者だったとは、少し怪しさを感じてしまった。」
「そんなー……偶然ってやつだよ!偶然!」
じ――――――――――――――――――――っ。
「そうか、明日奈はあの事故が人為的だった可能性を疑っていなかった?」
くそ!ロリの視線が痛すぎる!
友は明日奈にさらに質問されるのを恐れ、慌てて違う話に変えてしまうのです。
「そうですね。」
約1個月前、涼宮俊作と妻と娘の三人家族で家族旅行に出かけた。伊豆に向かう途中不幸にも交通事故に遭い、父や母を失って、茜は深い昏睡状態に陷った。
警察は事故だと判断したが、不審に思った明日奈は事件を簡単に調べてみた。疑わしい点や不明な点を発見し、涼宮一家が意図的に殺害された可能性を考えた。
「万が一、もし誰かが涼宮一家を殺そうとしていたなら、茜が生きていたことを知れば、再び襲いかかるかもしれない。 」
「……そうだね。涼宮家は今何をしているのかな?」
「涼宮家の当主は病院側に秘密保持を要求している。今は公表しないと言っていて、警察への捜査協力を拒んでいる。」
涼宮家の当主、
信も雅も、城府深い人だった。
ちなみに、明日奈は雅から与えられた仕事のほとんどが好ましくないと思った。
しかし明日奈と茜は親友同士で、茜も転生者である可能性があることを知ると、ただ見過ごすことができなかった。
真剣に考えている最中に、彼女の左右それぞれに二つずつ、はっきりと見えている霊が近づいて来て、すぐに騒々しく話し始めた。
「可哀想ね......事故で頭打ったり、脳に衝撃があって、前世を思い出したのよ。混乱しか起きないだろうに、家族の前では変な態度取るのも無理ないわ。」
「面白いわ!ずっと茜はそんな単純な子ではないと思っていたの。明日奈と同じく転生したのだとはね!」
「まだなんか考えているの?先生!友達が困ってるんだから、手を差し伸べるのが当然じゃない?」
「あたしは病院に直行して観察するのが全然気にならないわよ。めちゃくちゃ面白いから絶対に見てほしいです!」
左の幽霊は
「他人の災難を見て喜ぶなんて、相変わらず質の悪いな、魔女。」
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