第2話 ノアお姉さんとマイハウス ~勉強編~

ノア・ジンクスは料理人である。


ある時、調理師ギルドのマスター・リングサスに弟子入りした彼女は料理の世界に魅了された。

リングサスからの課題をこなし調理師としての基礎を学んだ彼女は、世界中を旅してその調理の腕に磨きをかけた。

そして “マスター調理師” となった彼女は、ついに前々から考えていたことを実行に移そうとしていた。


それは個人宅を購入し、お店を開くこと。


料理人たるもの、やはり一度は自分のお店を持ちたいものである。

ノアはこれまで冒険者として稼いできた資金で、ようやくハウスの購入に踏み切ろうとしていた。


しかしここで1つ問題があった。

彼女はこれまで冒険者の個人宅とかハウス関連に縁がなかったため、その手の知識が全くなかったのである。

家を買おうというのだ。

さすがにお金がかかるというのはわかるし、そんな高い買い物をするのに無知で挑むのはよろしくない。


「さて、どうしたものか…」


思案する彼女はここでふと、クイックサンドの飲み仲間でこの手の話に詳しい冒険者がいたことを思い出した。

おそらく今日あたりも飲んでいるに違いない。

軽く一杯奢ってやれば機嫌よくいろいろと話してくれるだろうし、ハウスの勉強をしに行こうではないか。


準備を整えた彼女はウルダハへ向かった。



★★★★★★★★★★★★



ウルダハにある酒場【クイックサンド】

店に着くとさっそく、1人のロスガル♂がカウンター席で景気よく飲んでいた。

ノアは彼の隣に座ると、店主のモモディに2杯の酒を頼み、1杯をロスガル――ロズウィに渡す。


「ん? おう、ノアか! どうした?」


事情を説明すると、ロズウィは受け取った1杯を一気に飲み干した。


「で、ハウスについて聞きたいって?」

「ええ。貴方前に言ってたでしょ? 『家のことなら任せろー!』って」

「おうとも! しかしとうとうノアもハウスに興味を持ったか。いいだろう、教えてやろう。俺の家はな……」

「貴方の家に興味持ったわけじゃないわよ」


この男、よく喋る。酒が入っているとなおさら。


「チッ……なんだよ、じゃあ他に何が訊きたいってんだ?」

「そもそもハウスの基本的なことよ。購入の仕方とか、どういう家があるのかとか」

「そのレベルか!」

「そのレベルよ」


本当にそのレベルである。

何せこれまでは野宿か宿屋が基本だったのだから。


「はぁ……いいか、まず家を建てられる場所は決まっているんだ」


ロズウィは呆れたように溜息をつきつつ、ハウスの基本について説明を始める。

なんだかんだでイイやつなのだ。


「今だとウルダハ、リムサ・ロミンサ、グリダニア、イシュガルド、クガネの5つの都市だな。ここにそれぞれ冒険者専用の居住区がある。ハウスはここに建てるんだ」

「ふむふむ……」


熱心にメモを取るノア。

それを見つつ、彼は説明を続ける。


「どの都市の居住区を選んでもそれぞれで雰囲気が違うだけで、建てられる家の種類は変わらねぇ。だから好みで選んで構わん」

「ほうほう……」

「で、どの都市の居住区に住みたいか決まったら、次は家の種類だ」

「家の種類……ウルダハ風とかグリダニア風とかみたいな?」

「それは家の外装や内装、家具なんかである程度どうでもなる。種類ってのは家のサイズだ。S、M、Lの3サイズがある。正確には家、というよりその家を建てる土地の広さだけどな」

「土地の広さ…?」

「そうだ。家を建てるには土地が必要だ。だからまずは選んだ居住区にある空いてる土地を買うんだ」


なんと、空いてる場所にテキトーに建てられるわけではなかったのか…

「なんだその顔は? もしかして居住区に行けば無条件で家が建てられるとでも思ってたのか?」

「ギクゥ!」

「これだから初心者は……」

「だからこうやって聞いてるんでしょうが!」


やれやれと肩をすくめるロズウィ。


「土地を買うのよね? 値段ってどれくらいなの?」

「土地の価格は最低でSが300万、Mが1600万、Lが4000万だな」

「ええっ!?」


ノアが思ってた以上に高い。

いや4000万って一般的な冒険者(?)の生涯収入の価格とかでは?

彼女はそんな大金、当たり前だけど持ったことはない。

何より聞き捨てならないのは……


「最低…?」

「おう。土地も場所によって5等地から1等地に分類されててな。さっき言ったのは5等地の価格だ。例えばLの土地なら1等地と5等地で価格が1000万違うぞ」

「どんな金持ちの世界の話よ……」

「ちなみに俺の家はLの1等地だ」

「聞いてないわよ!」


ドヤってくるロズウィの顔面を殴りたい衝動を抑えつつ。

なるほど、立地や見栄にこだわる冒険者はより高いギルを出して1等地を狙うわけだ。

それにしても、実際に価格を聞くとなかなかの額である。

これまで冒険者として稼いだ分があるとはいえ、LはおろかMの土地ですら購入は無理そうである。


「さっきのはあくまで土地だけの価格だからな。もし無事に土地が購入できたら、今度はその土地に家を建てるために『建築物権利証書』を購入するんだ」

「数百万とか数千万支払うのに、土地とセットじゃないの!?」

「何を甘いこと言ってんだ……と言っても値段は土地ほどじゃねぇ。Sで45万、Mが100万、Lが300万だな。これを購入してようやくその土地に家が建つってわけだ」

「どれだけ冒険者からお金をむしり取ろうと……」


つまり、Sサイズの家を建てるのに最低でも345万はかかるということか。

ノアは自分の貯蓄金額を思い浮かべる。

大丈夫、それくらいなら差し引いても生活費はなんとか残る……たぶん……


「ふっふっふ、必死に金額計算しているな? これはあくまで土地と家 “だけ” の価格だからな? 実際にはこれに加えて家の中に置く家具も考えないといけないぞ?」

「はっ!?」

「そうだなぁ、納得のいくまで試行錯誤を繰り返すとして、プラス100万~200万ぐらいか?」


全部マーケットで購入すればの話だけどな、と。


「そうか、家具も必要か……」


言われてみれば確かに必要である。完全に失念していた。

それを考えると予算としてはSハウスでも内装整備まで考えると500万以上は見ておかないといけないかもしれない。

なんということだ、当初考えていたよりもどんどん金額が増えるではないか。


「ああ、もし金がないならアパルトメントもあるぞ。1つの建物に複数の部屋があってな。土地代は不要。1部屋50万で買えるぞ」


だが、と。


「駆け出しの冒険者ならまだしも、お前レベルの冒険者がまさか金がなくてアパルトメントでいいです、なんて話はないよなぁ?」

「!!」


こやつ、ニヤニヤと嫌らしい顔で煽りよる!


「そ、そんなわけないでしょ!? い、家ぐらいサクッと買ってやらぁ!」


動揺して思わず変な言葉使いになるノア。

そんな彼女の内心を見透かしてかどうか。


「ハッハッハ! だよな! まぁとりあえず百聞は一見に如かず、だ。一度どこかの居住区に行って、家のサイズ感とか土地の広さとかを見てくるといいんじゃないか?」

「確かにそうね……」

「ここからなら西ザナラーンの方にあるウルダハの冒険者居住区ゴブレットビュートが近いな。場所として一番人気があるのはリムサ・ロミンサに方にあるミスト・ヴィレッジだけどな」

「へぇ?」

「ミスト・ヴィレッジはラノシアの海の入り江にある居住区でな。高台の土地からは海が一望できて、それはもう晴れた日には最高の景観になるんだなこれが」

「なかなか良さそうじゃない!」

「なかなか良いんだよ。だから土地の人気もすごくてな。たとえSサイズの5等地であっても土地の競争率は高いぞ」

「土地の競争率?」

「おっと、そこも説明してなかったな……当然だが土地は無尽蔵にあるわけじゃねぇ。土地を購入するには欲しい土地に “応募” して “抽選” に当たらないといけないんだよ」

「そんなシステムがあるの!?」

「おう。各都市も居住区を広げようといろいろやっているようだが、現状じゃあ星の数ほどいる冒険者全てにハウスを行き渡らせることなんて不可能だからな。特に人気の土地は応募だけで100人200人が狙っているのはザラだぜ?」

「うわぁ……」

「まぁそういうのは大抵MとかLハウスの土地だ。今のお前には……関係ない話だろ?」

「おのれ!!」


また煽りよる!

確かにそんな大金無いけど!


「今はちょうど応募期間だし、そういうのも見てみるならやっぱミスト・ヴィレッジがいいだろうな」

「……そうね、ちょっと行ってこようかしら……」

「俺はまだしばらくここにいるから、帰ってきたら初心者の新鮮な感想でも聞かせてくれ」

「はいはい、ありがとね」


ところどころに余計な一言はあったが、やはり人選としては間違ってなかったようだ。

ロズウィのアドバイスに従い、ノアはミスト・ヴィレッジへ向かった。



★★★★★★★★★★★★



リムサ・ロミンサの冒険者居住区、ミスト・ヴィレッジ


低地ラノシアからレッドルースター農場へ向かい、そこからさらに東へ向かうと大きな門が見えてくる。

この門をくぐり少し進むと、海に面した居住区が現れる。


天気は晴れ。

高台から見下ろし目に飛び込んでくる青い海。

さながら隠れたリゾート地を訪れたかのような気分になれるここは、冒険者の間でも屈指人気を誇る居住区である。

海からのやや湿気を含んだ暖かい風に髪を揺らされながら、ノアは階段を降りつつ周りのハウスを見まわした。


かなりの数の区画があったのでとりあえず第1区に来たわけだが、まず目の前に現れたのはMサイズのハウスであった。

門の横にあるサインボードを見る。

どうやらここはフリーカンパニーの拠点として使われているハウスのようだ。


「へぇ、けっこう大きいわね……」


言葉で聞くだけではMサイズと言われてもさほどピンと来なかったわけだが、実際に見てみると思っていたよりも大きく感じる。

どうやらここは2等地らしい。

なるほど、景観の見晴らしは確かに良い感じである。

このMハウスの傍の階段を下ると、左手にも家が建っていた。


「これがSサイズかぁ」


ノアが購入を検討しているSハウス。

先ほど見たMサイズに比べると、当たり前だがやはり小さい。

Mサイズには2階があるようだったがSサイズには1階しかないように見える。


「やはりもう少しお金を貯めてMサイズを買った方が…?」


一度大きい家を見てしまうとついつい欲が出てしまうが、ここでノアは当初の目的を思い出す。

彼女は “店舗” にするための家を買おうとしているのである。

個人店だ。正直、2階とかあっても持て余すだろう。

それに今はMサイズ購入のための資金を工面する気にもあまりなれない。


うーん……と悩み、いろいろ考えながらぼんやりSハウスの外観を眺めていると、


「あのー、うちに何かご用ですか…?」


まさに眺めていた家から家人が出てきて声をかけられてしまった。

白いワンピースを着た、自分とは真逆のタイプのふわふわ系ミコッテ♀である。


「えっ、あっ、違います…! えーっと……」


自分はこれから個人宅を購入しようとしているが、それにあたって家の大きさとか土地の広さとかのイメージを掴みに見ていたのだと事情を説明する。


「なるほど~ そうでしたか~」

「確かにちょっと不審でしたね……ごめんなさい、すぐ立ち去りますので……」


そそくさと立ち去ろうとするノアに、ふわふわ系ミコッテ♀は「ふむふむ」と頷くと、


「せっかくですし、中もご覧になりますか~?」

「えっ、いいんですか…?」

「大丈夫ですよ~ 私も1人でヒマしていたところですから~」


どうぞどうぞ、と笑顔で誘われてしまい、逆に断るのも失礼かもしれないと思いお邪魔することに。

中に入ると、全体的に白系で統一された内装が目に入る。

丸テーブルの上にケーキと紅茶が置かれていた。

シンプルな内装ながら、清潔感のあるエレガントな部屋である。


「どうですか~? Sハウスなのでちょっと狭いかもですけど~」

「すごい綺麗ですね……これはお一人で…?」

「いえいえ、3人であれこれ言いながらやったんです~ あ、私はハルっていいます~」

「どーも、ノアです。よろしく」


どうやら彼女、ハルはこの家を拠点としているフリーカンパニーのマスターをやっているらしい。


「3人だけの小規模なフリーカンパニーですけどね~ 昔からの幼馴染でこのハウスも3人でお金出しあって買ったんです~」

「へぇ……」


なので内装は3人の意見が取り入れられた感じになっていると。

どうやら居住区は区画によって個人宅だけの区画、フリーカンパニー用のハウス区画、個人とフリーカンパニー用のハウスが混在する区画、といろいろあるらしい。

ちなみにノアが訪れた第1区はフリーカンパニー用のハウス区画になるとのことであった。


「Sハウスの広さは、1階だと大体こんな感じですね~」

「1階は?」

「ええ。Sハウスって2階はないんですけど、地下があるんですよ~ こっちにどうぞ~」


入口から見て部屋の右奥に地下へ続く階段がある。

ハルの後に続いて階段を降りると、1階よりも広い部屋があった。

水槽やソファ、本棚が置かれたくつろぎ空間のように見える。

……見えるのだが、ところどころ壁に禍々しい感じの武器が飾ってあるのは誰の趣味なのだろうか……?


「ここは談話室みたいな感じですね~ フリーカンパニー用のハウスなので、こことは別に3人それぞれが個室を持っているんです~」


聞けば、よく3人でここに集まって他愛のないおしゃべりや、新しく行くダンジョンの作戦会議なんかをやったりするらしい。


「Mハウスだと地下だけじゃなくて2階もあるんですけど、3人だとSハウスで十分なんですよね~」

「なるほど」

「ただ庭は少し狭いかもですね~」

「庭…!」

「うちの庭はシンプルに戦闘の練習場にしてるんです~」


言われてみればハウスなのだから庭ぐらいあって当たり前である。

屋内から外に出て庭を見せてもらうと、芝生の上に敷かれた石畳のそばに3体のダミー(木人)が立っていた。

奥には畑らしきものやプランターなども置かれている。


「ノアさんはどのハウスを買う予定なんですか~?」

「私は個人用で今のところはSハウスで考えていて……お店を開こうと思ってるんです。所持金的にもSが精一杯かなって……」

「お店!? すごいです~! どんなお店ですか~?」

「料理屋をやろうかなと」

「料理屋! いいですね~! 出来たらみんなで絶対行きますね~!」


そんな話をしつつ、一通りハウスの説明を聞いたノアは、ハルに見送られてハウスを後にした。


「中まで見せてもらえたのはラッキーだったなぁ」


やはり実際に中を見るとイメージが固まるというもの。

Sハウスをお店としたときに、具体的な内装まではまだ考えていないものの広さ的にはあのくらいでいいだろう、という感じであった。

道をまっすぐ歩いていくとマーケットボードが見えてくる。

そこからさらに道なりに進んでいくと一際大きな家がある。


「これがLハウスね……」


当然だがMハウスよりも大きい。

庭だけ見ても噴水が2つ置かれているが、それでもなお空間が有り余っている広さである。

立地としては2等地。

価格で言えば土地代だけで4750万、建築物権利証書も含めれば5000万ギルを超える物件。

Mハウスですら持て余しそうなのに、いわんやLをや。


「縁がなさすぎるわね……」


1人でこんな大きさハウスに住むなど、むしろ寂しくなるのでは?

と思いつつも、実際にどれくらいの広さか興味はある。

せっかくだから中を見せてもらえないだろうかと思い訪ねてみたが、どうやら家主は留守らしかった。


そしてこのLハウスのすぐ傍にあるのがアパルトメントだ。

さらに道なりに歩いていると、右手に1等地のLハウス。すぐ隣は海である。

確かにこんなところに家を構えたら景観は最高だろう。

少し歩くとミスト・ヴィレッジ南のエーテライトがあるちょっとした広場に出る。

右に行けば船着き場、まっすぐ進めばシーゲイズ商通りという商店通りに行ける。

そして左に進むとMサイズのハウスがあるのだが……


「空き地?」


2つあるMサイズの土地は片方、6番地が空き地になっていた。

こんな海に近い景観の良さそうなところが空き地だなんて。

そういえばロズウィが今は応募期間だと言っていたのを思い出す。

人気のあるところは100人以上の応募があると言っていたが果たして……


「223人!?」


サインボードを見れば、現在この土地に223人の応募がある旨が書かれていた。

Mの1等地なので価格は2000万ギル。

今のノアでは逆立ちしても払える額ではないのだが、応募しているということは223人が一時的にとは言え2000万ギルを手付金として出しているということである。


「どんだけお金持ちがいるのよ……」


見せつけられる経済格差。

しかし確かにロズウィが言っていたことは本当らしい。

土地の争奪戦というのは、人気の立地だとかなり過酷なようだ。

正直、2~3人の応募でもノアは負ける気がしてならない。


イヤだなぁとげんなりした顔をしつつ。

とりあえず一通りのハウスは見ることができ、大きさや広さの雰囲気を掴んだノアは、ロズウィの待つクイックサンドへ戻った。



★★★★★★★★★★★★



「おう、ノア! 戻ったか。どうだった?」


カウンターでモモディと話していたロズウィはノアが戻ってきたことに気付くと、早速感想を求めてきた。


「S、M、L、それぞれのハウスを見てきたわ。Sハウスは中も見せてもらったりとかね」

「おお、良かったじゃねぇか!」

「あと人気ありそうな土地の応募状況も見てきたわ。貴方の言ってた通り、200人以上が応募してたわね……」

「ハッハッハ! だろう? ミスト・ヴィレッジは特に競争率が高いからな」

「他の都市の居住区ならそうでもないの?」

「いや、どこも人気ある土地なら数十人は応募があるぞ」

「うわぁ……」


なかなかにやる気が削がれる情報だ。

早くも自分の店を持つという目標が頓挫とんざしそうな気がしてくる。


「ただそうだなぁ。逆に言えば人気のない土地、特にSサイズなら応募がないってこともザラにあるぞ。特にシロガネ。あそこの土地は全体的に他の4都市の居住区よりも人気は低いな」

「シロガネって、クガネの?」

「そうだ。あそこはなんつーか、文化が独特だろ? それに他の都市に比べて距離も離れてるしアクセスがイマイチでな」

「そうなのね……」

「ああ。個人的には温泉があるし、山と海の両方も楽しめる、全体的に落ち着いた雰囲気でけっこう好きなんだが……まぁともかく、場所や立地なんてどうでもいいからとにかく家が欲しい、ってんならあそこは狙い目だろうな。Sサイズなら割と選び放題じゃないか?」


いいことを聞いた。

ノアはその辺、あまり立地とかにこだわりがないタイプである。

やると決めたら早く着手したいし、競争率の激しいところを狙ってハウスの入手にもたつくくらいなら、自身で納得できる確実に入手できるところを選びたい。

よし、と。


「ちょっとクガネに行ってくるわ!」

「お? そうかそうか。いいんじゃないか? まぁさっき言った不人気ってのもあくまでハウスにこだわるやつらにとっては、って感じだからな」

「私も何回も行ってるるけど、クガネは好きよ」

「ならちょうどいいじゃねぇか。いい土地買ってこいよ。家建てたら冷やかしに行くからよぉ!」

「ええ、別に貴方は来なくてもいいけど、いろいろ教えてくれたことには感謝するわ」


じゃ、と挨拶してクイックサンドを出ると、ノアはひんがしの国のクガネへ向かうのであった。



【第3話へ続く】

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