11章 12人の子供達と聖なる儀式
1
サクラとリクは、常に眠かった。ドクターが処方したクスリのせいだ。意識はハッキリせず、ただ言われるがまま。毎日の様に地下2階研究室でドクターが双子を実験した。クスリのせいで、自分たちの隠し封印していた能力がバレてしかも能力て上がってしまった。触れずにより重くて大きな物を動かしたり、骨折した実験動物を完治したり、物を触ると残留思念で持ち主の記憶が心に流れ込んできた。その時、アカギとアカギに触れた時分かった。アカギもあの書物に乗っ取られている。表面上は宗教とナショナリズムを利用して荒稼ぎをして金で何でも解決できると思っている教祖だが、あの書物に長く触れたせいだろう。無意識下であの呪文に完璧に乗っ取られている。意識の中で彼は儀式を行う事により彼は更に、自分の権力や金儲けが出来ると考えているようだが間違えだ。一時的には権力と金儲けが出来るのは間違いないが。それに、ドクター。彼は自責の念に完璧に囚われている。実家の神社を継がなかった事、それに自分が行った実験で大勢の子供を死に追いやった事。そして、彼の実家の神社に先祖代々から伝わる。赤ノ書、青ノ書、緑ノ書に救いを求めていいる事。あの書物には、予言が書かれていた。権力者が一斉に集う所で特別な能力を持った12人の子供達が儀式を行い最後の書にの一文を一斉に唱えた時にパズメが現れ、世界を良くするためのヴィジョンが権力者の心の中に植え付けられ、より良い世界が築かれると書いてあると解釈しているようだ。
だが、恐らく違うと双子は考えていた。最近テレビのニュースでは、外国人排斥運動のデモや中国やロシアとの領土問題が連日報道されていた。おそらく、第三次世界大戦はここから始まる。パズメは、戦争や虐殺を起こしてそれを見ては楽しむ愉快犯の様な悪魔だ。恐らく地獄な様な殺し合いをする時に人から出る狂気を捕食する為にそれをするのだろう。
占いに来た者たちも同じだった。無意識下で呪文がうごめいている。静かで小さくはあるが。少しずつ虐殺や戦争に加担するように無意識にも中には意識的にそれをしているも者いるが、政治家達はそうするように仕向けれて、文化人や芸能人は書籍やSNSで一般人を戦争や虐殺をするように引き金を引く。おそらく、儀式後は急激に好戦的になるだろう。そして一般人を巻き込み世界は暗黒の時代を迎えるだろう。
だが、もしかしたら双子の勘違いかもしれない。それに一番の能力者のクレアはそうは思っていない。あの書物に書かれている事を良い方に解釈している。クレアが言うなら間違いないかもしれない。だが、最近クレアの様子がおかしい。上手く説明できないが何か。
儀式まで、後5時間。儀式には母も出席する。双子の勘違いなら良いが。もし、本当にヤバかったら。
2
クレアは、相変わらず眠れずにいた。昨日は特に眠れなかった。儀式の日の前日なのか緊張していた。ちゃんと、上手く出来るだろうかと。自分も含め双子が心配だった。あの双子随分、ドクターに薬漬けされていた。意識が朦朧としているのが分かった。だが、朦朧としているフリをしているだけかも知れない。双子の力は底知れない。一人ひとりの力は自分より少し強いぐらいだが、双子が力が合わさった時にはクレアだって敵わないだろう。
ニュー帝都ホテルまで約1時間。車で眠ろうと思ったがなかなか寝付けない。ドクターから処方された睡眠薬を飲んで寝ようかとも考えたが儀式に支障が出る可能性があるのでやめた。代わりにレッドブルを飲むことにした。それに、寝るのが少し怖かった。ロバートが夢に現れるからだ。ロバートの身体が破裂した日から夢の中で彼が毎日の様に現れた。それは昼寝で30分寝た時でさえだ。
夢の中でロバートはいつも微笑んでいた。まるで子供に優しく諭すかのように。そして、彼は言う。「君は間違っている」と。そしてこうも言った。「アレを止められるのは聖なる儀式の時に、君を含めて12人の子供達だけだ」と。クレアは「嘘を付くな」と抗った。すると、いつも夢はそこで終わる。
だが、昨日の夢は違っていた。相変わらずロバートは微笑んでいた「君に儀式後の世界のヴィジョンを見せるよ」と言うと、クレアの意識の中に信じられないものが入り込んできた。空爆で倒壊したビル群、路上に肉片と化した死体の山。外国人の殺戮を繰り返す中年男性。レイプする男たち。「嘘だ」とクレアが叫んだ。ロバートは微笑みながら言った「パズメに乗っ取られては行けない。だが、未来は変える事が出来る」とそれと「ピガ、ファ、ゲ、キラシ、ギョキョ、ン、ラ、ガイト」と言った。クレアは「何だそれは?」と聞くと、ロバートは「これが、パズメをこの世界から一旦、元の世界へと戻す呪文さ」と言った。
「なにを言っているんだ?パズメ様はこんな酷いことはしない。より良い世界を作るために現れるんだ。これで貧困も差別も暴力も戦争もなくなる」
「まあ、落ち着けよ。確かに、パズメや狂った者にとっては良い世界だろう。だけど、人類にとっては良い世界とは言えない。この言葉は12人の子供達が唱えないと意味がない」
「お前こそ何を言っているんだ」とクレアは感情的になった。「お前はただの幻覚だ。幻覚が偉そうな事を言うな」
「いいか、この呪文を唱えるのは早ければ早いほど良い。一旦外に出てパズメの意に背いた場合は暴れまわると、沢山の人死がでるぞ」
クレアは車窓から外を見た、静かに東京の高層ビル群に近づいていった。渋滞にハマっているらしく、なかなか前に進まない。昨日の夢のことを考えたく無かったが考えるには時間がありすぎた。もし、仮にロバートが言った事が本当なら、いや、そんな事はありえない。パズメ様はより良い世界を作る為に政治家や権力者のネガティブな感情や欲望を吸い取る神さまだ。これで、今のキナ臭い世界が良くなる第一歩だ。そうに違いない。
3
イイジマ達がニュー帝都ホテルに着いたのは、交通事故の渋滞のせいで予定より30分遅れていた。誤差の範囲ないだ。渋滞は予測してスケジュールを組んでいたのでむしろ早く着きすぎたくらいだった。車列が地下搬入口の地下3階に入り、12人の子供達が車から出ると警備部の者達が取り囲み護衛した。エレベーターで控室のあるスィートルームに各自、分散して準備に取り掛かる。一人につき3人のスタイリストをつけてメイクアップと衣装へ着替えする。
時計を見ると10周年パーティーまで後2時間。スケジュールは夜の20時からから始まる。まずは、ゲスト達の大企業の社長の演説から始まり、マスコミの大物、政治家、それに〆は総理大臣の演説で終わる。それから、教祖の説法が始まり、最後の30分が12人の子供達の儀式で終わる。4時間の予定だ。顔認証でゲストをくぐってもらう。それが一番確実だからだ。はがきやメールなどで証拠が残るのは困るとの事だった。メールはITセキュリティー部門が後で自動削除出来るが、はがきとなると厄介だ。スマフォやデジタルデバイスの持ち込みは禁止。検査の為に1時間早く来てもらうことにした。各界の大物達の警備部との連携は上手くできた。こうゆう場合経験上意見がぶつかり揉める事がよく有るが、今回は違った。アカギが全てイイジマに一任するように格警備やSPや特殊部隊にお願いしたらしい。アカギの権力は自分が思っているより遥かに持っていると感じて少し驚いていた。
各階に民間の警備員を2人ずつ、それに、パーティー会場の下の階にはIWIタボールブルパップ式アサルトライフルで武装した20人の警察特殊部隊。それに、パーティー会場の唯一の入口に2人のSPがMP7サブマシンガンを構えて見張り、パーティー会場内では警備部とSPが合同で20人配置した。正直ここまでする意味が有るのかとイイジマは思ったが、各界の日本を動かす大物たち3千人以上が集まるのだから、もしテロリストが紛れ込みけが人や死亡者が出れば事だ。だが、テロリストが現れたとしても簡単に制圧出来るだろう。だが、ロバートの1件もある。彼のような様な奴が現れる可能性も捨てきれない。だが、ロバートの様な奴が現れたと仮定して通常兵器が通用するのかは疑問だ。ドクターに「ロバートの様な奴が会場に現るかの可能性があるか?」と聞いた「全く無いとは言えないが、その時は12人の子供達がどうにかしてくれるだろう」と楽観的な答え言っていた。
イイジマは各、警備の担当者に連絡して異常がないか確認した。特に異常はないようだ。このまま何もおきなければよいが。念の為にITセキュリティーにブラックリスト者の動向探ってもらった。ブラックリスト者達は1000人以上。殆どはフリーライターか狂信者過ぎて心が狂ってしまった者と信者の家族たちだ。パソコン、タブレット、スマフォ、デジタルデバイスをハッキングして監視している。このパーティー自体に気づいている者はいないようだ。もちろん、あの探偵達もだ。あの探偵たちはすっかり諦めたようで、探偵事務所を潰しすようだ。ナカノという女性はニュージーランドに移住を考えているらしい。既に息子をニュージーランドに住む兄の家族の元に留学させている。侵入者だったカトウはカナダに移住を考えているらしく、ネットでカナダ移住手続きの仕方を調べているとのことだった。オゼキは、ネットで求人を探していた。主にアルバイトを探しているようだ。あの年で再就職は難しい。それに老後資金は沢山ある。それまでの暇つぶしだろう。
4
ナカノには、この作戦が本当に成功するのか疑問もあったが、やるしか無い。
ここはとても涼しかった。寒すぎるくらいだ。1日中、カトウとオゼキと隠れているが早く外に出たかった。寒いとは言え皆が不思議と汗をかいていた。オゼキは微かに加齢臭がした。カトウからは汗のニオイ、そして自分からも汗のニオイがするのが分かった。それと、微かに携帯トイレから漂ってくる小便大便のニオイ。オゼキは携帯トイレを「証拠が残るとヤバい」という理由で、計画を実行する際にカバンの中に入れて外で燃やすそうだ。さすが元刑事と思ったが、こんなに3人とも汗がかいていたらダクトにたれた汗でDNA鑑定されて身元が簡単に分かってしまうのでは?と思った。
オゼキもカトウも待ち過ぎて疲れている様子だった。あと、もう少しでここから出れる。だが、その後が問題だ。出れるのは嬉しいことだが、その後は痛みを伴う事が起きるに違いない。
「メンテナンスですか?聞いてないですけど」とホテルの警備員が地下の搬入口のインターフォン越し言った。
「いや、発注を受けてますよ。屋上のクーラーダクトの検査です。ちゃんと調べてくださいよ。こっちはそちらから指示で今日が良いて言われてきたんですから」とオゼキは言った。
しばらくすると、搬入口が開いた。
「すみません。確かにクーラーの調子が悪いみたいです。すみませんでした」
「いえいえ、よくあることですからお気にせずに」
バンを駐車場に止めると、プラスチックのヘルメットを深めにかぶったオゼキ、カトウ、サーディグ、アオキがダクトと機材を乗せた台車で搬入用のエレベーターで屋上に向かった。屋上へ出ると大きなエアコン用の室外機が在った。まず、ドリルでファンを固定しているネジを取りファンを外して通気口にナカノとカトウとオゼキがダッフルバックを持って入った。通気口は設計図通り広く正座出来るくらいの大きさは有った。室外機の通気孔なので暑かった。
「ここで明日までいるのは無理じゃないか?暑くて死ぬよ」とカトウが言った。確かにこのままだと熱中症でみんな死ぬ。
「大丈夫。設計図通りであれば、この先にパーティー会場用の冷房用の通気口に行き着くはず」とサーディグの言葉を信じて一行は迷路のような通気孔を腰を屈めながら歩いた。すると大きなファンの壁が現れた。
「言ったろ。後はこれを取り外して中に入るだけだ」とサーディグは自慢げに言った。
ナカノとカトウとオゼキとアオキは電気ドリルでファンを固定しているネジを緩めてファンを取り外した。すると、涼しい風がナカノ達を身体を包んだ。通気孔を静かに歩いてパーティー会場の中央に到達した。ダクトの人が50センチ四方の格子の隙間からパーティー会場を見ると、業者が何やら部屋の中央に四角い祭壇の様な物を作っていいた。祭壇の中央には赤いロープが輪になって置いてあった。
この計画を思いついたのはカトウだった。彼はダイハードの事を思い出して計画を思いついたそうだ。まず、サーディグとアオキはニュー帝都ホテルのシステムにハッキングした。システムは2世代前のシステムで容易にハッキングできた。カトウはサーディグとアオキにまず、ホテルの設計図を手に入れて人が隠れられそうな場所を探した。するとパーティー会場の真上の通気孔が広い事が分かった。パーティー会場の上の通気口は部屋が広い為に大きく作られていた。人が3人が入るには充分すぎるほどだった。本当は、控室に忍び込んで双子を救出するのが一番いいが、控室の通気口が設計図によると小さすぎて人が入るのは不可能だ。搬入口で銃撃戦をして奪還する作戦も考えたが、どう考えても勝ち目がない。パーティー会場の上で隠れる方法しかない。
まず、アオキとサーディグはニュー帝都ホテルのシステムのデータベースに忍び込む、会場前日に業者が屋上にあるクーラーの室外機の検査をする予定を入れておいた。 ダッフルバッグにはダクトから出る時の為のロープとに食料、それに簡易トイレと、催涙弾とマスクにパラシュートが5つ入っていた。スケジュールによると子供達が儀式を行う時間まで会場には入らないようだ。儀式の時間に催涙弾を投げ込み下に降りて奪還するのが目的だ。双子を抱きかかえ銃でガラスに発砲して割り、パーティー会場からパラシュートで逃げる作戦だ。本当はパラシュートを使うには高度300メートル以上は必要だが、逃げるにはそれしか方法がない。パラシュートの経験が有るのはナカノだけだった。
「大丈夫よ。ヒモを引っ張るだけだから」と言ったものの心配でたまらなかった。だが、サクラちゃんとリクくんの力があれば成功するかもしれない。
「でも、それで本当に成功すると思う?相手は特殊部隊に訓練を受けたパズメ教会の警備部とSPよ。それに、特殊部隊がパーティー会場の下の階に待機している」とナカノは言った。「それに、銃撃戦になったら子供達が巻き沿いになるかもしれない」
カトウはしばらく考えた。「確かに、でもあの儀式は止められる。儀式を止めないともっと大変な事になるかもしれませんよ。あの夢のように」
すると、サーディグが手を上げた。「ちょっといいかな?誘導作戦はどうかな?」
「というと?」
「たとえば、ホテル内で爆竹を鳴らせば、そっちに特殊部隊やらが駆けつけるじゃないかな?」とサーディグ。
「でも、それくらい、爆薬探知犬や、爆発物探知機でスグにバレるじゃないか?」とアオキが言った。確かに誘導作戦はいい案だ。でもアオキが言うことも確かだ。バレたら、大変だ。それに、儀式自体が中止になって、またドコかで行わる可能性もある。
「八方塞がりね」とナカノは呟いた。打つ手ナシか。
パソコンの画面上にニュー帝都ホテルの航空写真が表示されていた。回りを金融会社のビルが立ち並んでいた。
「そうだ、ホテルはダメでも、回りのビルから銃声がしたとしたら?」とカトウが言った。「回りのビルにも警備がいるのは分かっています。でも、爆発物探知機を使うでしょうか?」
「それって、回りのビルを爆破するってこと?」いくらなんでもそれはやりすぎだ。それに、ビルを爆破できるほどの爆弾なんて作れない。
「花火はどうです?時間になったらロケット花火を打ち込むんです。そしたら、もしかするとそっちに気を取られて特殊部隊はそっちに誘導出来る」とカトウ。
果してこれで成功するだろうか?未だに信じられないでいた。だが、時間が稼げるのは事実だ。とりあえず、ロケット花火と爆竹を大量に買い込みホテルを四方に囲むビルの屋上取り付けた。どうやら今の所バレていないようだ。後は、儀式が始まりタイマーが作動して特殊部隊とSPや警備部の連中がパニックを起こし数名でもいいから下の階へ行ってもらい催涙弾を投げ込んだら作戦開始だ。
ナカノは急にタバコが吸いたくなった。会場まで1時間。ダクトから下を覗くと誰もいなかった。
「ねえ、社長タバコ吸ってもいいですか?」
オゼキは下を覗いた。「まあ、まだ人も居ないからいいんじゃないか?それに、お前電子タバコだろ?大丈夫じゃないか?それに俺も吸いたくてたまらない」
5
カトウはダクトの四角い格子から、会場を眺めた。ダクトから下の床まで20メートル。下でつまらない演説が始まってから2時間経っていた。全ての演説の内容を要約すると、パズメ教会が素晴らしい。そして教祖のアカギに救われたとの事だった。それと、自分がいかにこの宗教に救われたかという事の内容をこんなに長く話せるだけの語彙が有ることに感心した。アオキとサーディグがハッキングしたリスト通りの面々が下に居た。現職と歴代総理大臣始め、各大臣それとオマケの副大臣。最高裁判事に与党も野党の大物政治家、それに、大企業の社長の面々。文化人も右も左もいた。それに芸能人まで。よくもまあ、こんなにパイプを築けた物だとアカギを感心した。
カトウは今日の計画の為に身体を鍛えた。アオキの指導の下、一日中彼の家でベンチプレスと腹筋。それに近所をランニングをした。その結果、筋肉痛で体中が痛いだけだった。そう、今も痛い。それに、腹筋が割れた訳でもなく力瘤ができたわけでもない。腕と足の抜糸は終わったが、気圧のせいなのか鍛えすぎたせいなのかズキズキ痛い。本当に鍛える必要が合ったのかは謎だ。逆効果ナノではないかと思った。しかし、ランニングは理にかなっていると思った。双子を救い逃げるのだから銃を最小限使って人混みをかき分けて逃げる。それだけだ。
だが心配だった。ダクトのから侵入し、パラシュートで下まで降りて、下で待機するアオキとサーディグが乗る車で逃げ出す。そんな作戦上手く行くのか。考えれば考える程バカらしい考えだと思えた。だが、他に方法はない。あの儀式が始まってしまえばもっと取り返しの付かないことになるのは分かっていた。もしかすると、自分も含めて3人が妄想に取りつかれているのかもしれない。だが、少なくてもあの双子だけは助けたい。このまま、指を咥えて待っているわけにはいかない。それに、もう後戻りできない無いポイントに来ている。
格子越しに下のパーティー会場を見ると現職の総理大臣の演説がやっと終わった。テレビで会見を何度か見たことがあるが、コイツの言っている事は人を退屈させる才能があるようだ。会場を覗くアクビをしている参列者が何人もいた。
カトウが時計を見るとそろそろ儀式の時間だ。そろそろ仕掛けた花火が発火する時間だ。自分も賛同した考えとは言え、本当にそんなもので相手を騙す事ができるだろうか?
6
サクラとリクは、紫色の着物を着て控室のベッドで横になっていた。今回の儀式は裸にならなくて良いようだ。なぜなのか分からにがドクターの話によると、「紫色の着物を着て儀式しないと意味がない」と緑の書に書かれているそうだ。バカらしい。でも、人前で裸になるよりはマシだといい方に解釈することにした。
微かだがカトウとナカノとオゼキの気配を感じた。しかし、勘違いかもしれない。双子はこのホテルに入ってからどうでもよくなっていた。世界が滅びようと、良くなろうと。それに、こんなに警備が厳重な場所にあの3人が乗り込めるとも思えない。3人が重武装していたとしてもパーティー会場までたどり着けるとは思えない。もし、仮にたどり着けたとしたら、話は変わってくる。儀式を中止出来るかもしれない。
ドアのノックする音がした。ドアを開けると警備部の女だった。
「サクラ様、リク様そろそろです」と言った。
「はい」と双子は同時に答えた。
警備部の女に連れたれてパーティー会場の入り口に付くと他の子供達が紫色の着物を着ていた。入り口には2人の男が銃口下に向けて構えていた。
他の子供達を見るとみんな緊張しているようだった。今回はいつもと違って沢山の人間の前で儀式をしなくてはならない。緊張するのも無理もない。だが、違和感を感じた。子供達が一人多い。目には見えないが。クレアをちらっと見た。彼から感じる。彼の中にまるでもうひとり人がいるような変なモノを感じた。
警備部のキクチにイヤホンに無線が入ったのを感じた。
「皆さん、会場に入り儀式の時間です。よろしくお願いします」と言うと扉が開いた。クレアを先頭に12人の子供達がパーティー会場に入った時に気づいた。カトウ、ナカノ、オゼキがこの会場いると。だが、回りを見渡してもいない。リクが上を見た。サクラも分かった。あそこにいる。もしかしたら、
7
「ビキャ、ト、ケリ、ギャデ、トロゼビ、イハ、クィゼ」と12の子供達が紫のキモノを着て唱えがら祭壇の周りをゆっくりと回り始めた。
予定より早く皆の演説が終わった。こういうパーティーの時は政治家が金持ち達はでしゃばるので余分に時間を設定していたが、今回はみんな早く儀式をしたいのか、それとも偶然か。予定より早く儀式が始まった。聞き慣れない言葉を子供達が唱えながら部屋の中央に有る四角い祭壇の回りを反時計まりにゆっくりと。なんだかとても気味の悪いモノだった。
イイジマの無線のイヤホンに緊急連絡が入った。西の証券ビルの屋上から、発砲ありとのことだ。会場を見回すとSPと警備部も無線をキャッチしたようだ。どうゆうことだ。銃声は会場では聞こえなかった。そう言えば防音だった事に気づいた。狙撃されている事を近くにいるアカギに伝えた
「今、南にある証券ビルの屋上から銃撃されているとの事です」
「なんだと、今スグに現場に行け」とアカギ。
「ですが、儀式を中止スべきでは?」とイイジマは会場を見ると相変わらず呪文を唱えながら中央に有る祭壇を12人の子供達が反時計回りに回っている。
「今さら儀式は止められない。警備部数人とSPと特殊部隊を連れて応戦しろ」とアカギ。
「ですが、ここも危険が迫っている可能性が」
「いいから、行け。現場に行って処理しろ。命令だ」と回りに聞こえないようにだが強めにアカギが言った。
「了解しました」
イイジマは2人の警備部と特殊部隊を引き連れて銃撃現場に向かった。地上100メートルの25階に行った。民間の警備会社の警備員が2人デスクの下に潜り込んでいた。
「状況を説明しろ」
「西のビルから大量の銃撃を受けました」
西側のガラス窓を見ると焦げ跡残っていた。銃撃は終わったのか?それにしてもおかしい。隣のビルまで50メートルはある。ピストルなら、ギリギリ届く距離だ。弾丸が着弾したとしてもビルに使うような強化ガラスを貫通出来るか怪しい。もし自分が、襲うとしたらサブマシンガンかアサルトライフルかスナイパーライフルを使うはずだ。
すると、突然光と大きな破裂音がした。東の証券ビルの屋上からだ。特殊部隊員達ががIWIタボールブルパップ式アサルトライフルでフルオートで連射し応戦した。ガラスが割れ、一斉に東に在るビルの屋上に向かって銃撃した。
イイジマも姿勢を低くしGLOCK17ピストルで撃ち返した。一発の火の吹いた弾丸がイイジマ胸に当たった。彼にはスローモーションに見えた。驚いて後ろに倒れた。今まで撃たれた事はなかった。だが、おかしい。全く痛く無かった。アドレナリンで痛みを感じないのか。違う。イイジマの防弾チョッキに突き刺さっているのは銃弾ではない。ロケット花火だ。しまった。誘導作戦だ。マズイ。イイジマは無線でパーティー会場に呼びかけたが反応がない。
「おい、みんなよく聞け。誘導作戦に引っかかった。パーティー会場に向うぞ」とイイジマが言うとエレベーターで最上階を目指した。
8
オゼキは時計を見た。予定より早く儀式が始まった。12人の子供達が反時計回りに呪文を唱えながら、ゆっくり周回していた。これでは誘導作戦が失敗するかもしれない。すると、のぞき穴でイイジマを監視していると何やら様子がおかしい。作戦開始だ。イイジマは数名の警備部の連中を引き連れてパーティー会場の外へだた。よしチャンスだ。催涙弾の安全ピンを抜こうとしたその時、急に下から強い紫と黄色い色の光がダクトの格子から差し込んできた。
「おい、誰だ?閃光弾を投げ込んだやつは?」
「閃光弾てなんですか?」とカトウが不思議そうに聞いた。オゼキは自分たちが閃光弾を持っていない事に気づいた。
「ねえ、あれ、ワタシにしか見えないの?」とダクトの格子からを見ながらナカノが「アレが、パズメ?」と彼女は目を細めながら言った。
オゼキがダクトの格子から下を確認すると光に目が慣れて、その紫色の光る発光体の輪郭が分かってきた。そいつはかなりデカイ怪物で身体自体が紫色い発光していた。顔は狼やライオンに似ているがどちらのものでもない顎下の犬歯異常に伸びていて、鼻の先にサイの様な大きな角が付いていた。手にはライオンの様に鋭い鉤爪。胴体は筋肉質な人の肉体に似ているが違う。背中にツバサが翼竜の様な羽がついていて、蛇のような長い尻尾があり6つ付いていて、恐らく二足歩行で足は赤いロープの内側から半分浮き出ているように見えた。恐らく四角い祭壇の真ん中に置いてある赤い丸いロープから現れたらしく、ロープの内側は黄色く発光していた。
「ナカノさん。あれ、僕にも見えます」とカトウがポツリとで言った。
それは、会場に居た者たちも同じで、ただ口を開けてその、謎の生き物を見るだけでパニックすら起こせなかい様子だった。
すると、赤いロープの円の内側から細い太さはホースほどの長い触手の様な物が数え切れないほど出てきた。触手の先端が会場にいる全ての人間の頭にくっついた。そのまま、食べられてしまうのでは無いかと思ったが違った。その細い紫色の触手から黄色い丸い発行体を人の頭に送っている様だった。
「オゼキさん、どうしますか?」とカトウに身体を揺さぶられて正気に戻った。改めて下を確認する。サクラとリクも例外ではなく頭に触手が付いていた。なんだかよくわからないが、助けに行かなければ。
「よし、行くぞ」オゼキはショットガンの手に取った。
「催涙弾はどうします?」とナカノ。催涙弾の事を忘れていた。オゼキは、通気孔の四角い格子を蹴飛ばして、催涙弾の安全ピンを抜いて会場に投げ込んだ。続いてカトウとナカノも催涙弾を投げ込んだ。
数秒後に催涙弾が破裂して赤色の煙で会場は充満した。ガスマスクをつけてロープで三人は格子を蹴り飛ばしダクトから出て床にロープで降りた。あの怪物は上から見るよりかなり大きかった。少なくても5メートル近くある。回りの人間もモンスターも催涙ガスが効いている様子はない。視界がクリアになり、オゼキが回りを見渡すと、相変わらずパズメと思われう怪物が触手で脳に黄色い発光する何かを送り続けている様だった。
会場の奥にいた頭に触手で繋がったSP達がスーツの内側に隠し持っていたMP7サブマシンガンでオゼキたちに乱射してきた。目の前の数十人が男と女が被弾し倒れ、倒れた目の前にいた男の体が倒れてきてオゼキも倒れた。ナカノとカトウも床に伏せた。
「どうする?」とオゼキは言った。
「撃ち返すしか無いでしょ」と言ってナカノはそのMP7サブマシンガンを持ったSPに向かってステアーAUGアサルトライフルの引き金を引いて応戦した。弾丸は何人かの触手を貫通しながらSPに数十発着弾した。だが、防弾チョッキを着ているらしく、SPは、マガジンを交換して再びオゼキたちに撃ってきた。
「防弾チョッキも貫通する弾でしょ?なんで死なないの?」とナカノ。
「俺が知るか」SP達を見ると、身体から血を出している。防弾チョッキを貫通しても倒れないのか。そうだ、頭だ。頭を狙えば死ぬかもしれない。「ナカノ、頭を狙え」ナカノはダットサイトでSPの頭を狙って撃ち抜いた。SPの男が倒れて動かなくなった。
「いいか、アイツラの弱点はたぶん頭だ。頭を狙え」すると部屋中にいた、SPと警備部の人間が銃をこちらに構えて撃ってきた。すると流れ弾に当たった者たちが何人も倒れた。中にはオゼキも見覚えのある政治家や文化人もいた。皆真っ赤な血と蛍光色の緑色の液体を流しながら倒れていた。
カトウは12時から4時の方向のSPにMP5サブマシンガンで応戦、4時から9時の方向をナカノが、9時から12時の方向の警備部をオゼキが応戦した。相手は人が居ても構わずにこちらを撃ってきた。オゼキはショットガンを使いたかったが人が多すぎてダメだ。SIG226ピストルで応戦した。らちがアカない。相手の頭を狙うのは難しい。
とりあえず、子供達、サクラとリクはだけは救い出さなければ行けない事を思い出した。オゼキはサクラとリクに近づく。双子の頭にも触手が付いていた。オゼキは触手を取り除こうと引っ張るがヌルヌルしていて取れそうにない。
「オゼキさん。銃です。ショットガンで触手をふっ飛ばして」とカトウが叫んだ。そうだ、とオゼキはサクラの頭に付いた紫色触手をショットガンで吹き飛ばした。触手から蛍光色の緑の液体が大量に吹き出した。次に、リクに付いた触手を吹き飛ばした。サクラとリクはその場でぐったりとして倒れた。死んだかもしれないと思い、オゼキが2人の脈を取ると生きている。するとサクラとリクが目を覚ました。
「オゼキさん、カトウさん、ナカノさん。やっぱり来てくれたんだね」とリク。
「大丈夫か?」
「私達は大丈夫」サクラ。
「今スグ逃げるからな。後もう少し頑張ってくれ」
「駄目だよ。パズメをアッチの世界に戻さないと」とサクラ「このままだと大変な事になる」と言って頭に付いた触手のキレ端を引きちぎった。リクも同じく。
オゼキは銃撃戦ならまだしもモンスターが相手にはどうすればいいのか分からなかった。
「それには他の子供達の力がいる」協力してとサクラが言うと、銃声が急に聞こえなくなった。SPや警備部が持っていた銃が使えなくなったようだ。銃口が曲がりくねっていた。何度もこちらに向かって引き金を引いているが、銃は上手く動作していない。
「何をすればいいの?」とナカノ。
「カトウさんとナカノさんはパズメに銃弾を浴びせて気を引いて。その間にオゼキさん子供達に付いた触手をショットガンで吹き飛ばして。私達はSPたちや襲ってくる人間とパズメの能力で動きを止める」リクとリクが言うとSP達が持っていた銃が解け多様に銃口が曲がりくねった。
カトウとナカノは銃で連射しながらをパズメに向かって撃ち込んだ。どうやら被弾すると相手は痛いらしく。着弾する度にクネクネと動き回り、蛍光色の緑色の血を流した。触手を使い、カトウとナカノに襲いかかろうとするが、双子がパワーを使っているのか、触手は彼らに当たらない。その間、オゼキはショットガンで子供達に付いた触手を1つずつ吹き飛ばしていった。弾がキレたら、再装填してを繰り返した。最後にこの前、探偵事務所に現れたクレアの触手を吹き飛ばした。
触手を吹き飛ばした子供の身体が一斉に浮き上がり、扉の方へと飛ばされていった。オゼキはリクを見るとニヤリとしていた。恐らくだが、このリクがしたのだろう。
「オゼキさん、カトウさん、ナカノさん。早く扉の方へ。コイツはゲートを出て動き回るつもりだ」とサクラが言った。オゼキとサクラとリクは走って向かった。カトウとナカノは銃をパズメに乱射し紫色の触手をかいくぐりながら扉へたどり着いた。
「弾丸は?」とナカノがカトウを見て言った。
「もう弾切れです。ピストルだけです。ナカノさんは?」
「ワタシもアサルトライフルは弾切れよ」と言うとナカノはAUGアサルトライフルを床に捨てた。
オゼキも、カトウも、ナカノも子供達もパズメの体液なのか血液なのか分からないが服が蛍光色の緑色に染まっていた。会場を見渡すと触手が頭に付いた人間が皆が恍惚の表情を浮かべていた。それは、教祖のアカギもドクターのイシイも同じだった。
急にドアが開いた。振り向くと、そこにはイイジマと20人近くからなる特殊部隊員達がいた。
「なんだ、これは」とイイジマがポツリと言った。触手が特殊部隊員の一人の頭めがけて吸い付いてきた。その隊員は急いでヘルメットを取った。
「おい、お前らの持ってる武器でこの紫のモンスターを撃て。そうしないと皆殺しにされるぞ」とオゼキが叫んだ。イイジマは事情が分かっていないらしい。無理もない。
「お前の敵は俺たちじゃない。あの怪物だ。目を覚めせ」とオゼキが言うと、イイジマもそれには同じ意見らしい。
「あの怪物の胴体に照準を合わせろ。絶対に要人に弾丸を当てるなよ。撃て。子供達を守るんだ」と言うと特殊部隊員達はIWIタボールブルパップ式アサルトライフルで一斉にパズメの上半身を撃った。鳴り響く轟音の中パズメは蛍光色の緑色の血を流しながら、聞いたことのないような高い鳴き声で叫んだ。鼓膜をに刺さりそうな不快な鳴き声だ。
人の頭に繋がった触手で特殊隊員達を目掛けて襲ってきた。銃で応戦すると触手が千切れた弾みで20メートル上にある天井に身体をぶつけ、身体が天井で破裂し腕や肉片が地面に落ちてきた。
特殊部隊員も触手で巻き付けれれてそのまま上半身と下半身が真っ二つになる者、触手で頭をすごい力で叩かれ頭が吹き飛んだ者、様々な殺され方をした。
急に赤いロープの内側から右足を出した。パズメは祭壇の外に出てきた。足は鳥や恐竜のような逆関節で尖った爪が6本生えていた。全体的な大きさは10メートルはあるだろう。
「ヤバい。ゲートから出てきた」とサクラが言った。オゼキはゲートとは恐らく、あの祭壇の中央にある赤いロープの内側から放つ黄色く発光し触手が飛び出ている所のことだと思った。
パズメはこちらへとゆっくりと向かって来る。まるで、生まれたての子馬の様に足はプルプルと震えながら歩いてくる。
オゼキは双子を見ると意識を取り戻した子供達となにやら話している。だが、クレアはまだ目を覚ましていない。
「おい、アレは本当にパズメなのか?本当に存在していたのか?」と一人の少年が言った。
「嘘でしょ。あんなのドクターの狂った妄想だと思っていた」と少女が言った。と双子以外はみんなパニクっている様だった。
「おい、誰か手榴弾は持っていないのか?」とオゼキがイイジマに聞いた。「そんなもん持ってないよ」確かに。こんな事を想定していたのはたぶん双子くらいだった。ちゃんと双子にパズメについて聞くべきだったと後悔したが、手榴弾で殺せる相手なのかすらわからない。
「弾切れです」と隊員の一人が言うと同時多発的に、特殊部隊員達が叫んだ。ある者弾切れになったアサルトライフルをパズメに投げつける者、ある者はバックアップのピストルで応戦する者まで様々だった。
「みんな、聞いて」とサクラとリクが同じタイミングで言った。「アレは銃や通常兵器では殺せない」リク。
「でも、アイツを元の世界に戻すことは出来る。私達で」とサクラ。
「どうやって?」と15歳位の少年が泣きながら言った。
「また、儀式をするのよ。それしか方法は無い」とサクラ。
「でも、どの儀式をするの?占いでもしろっていうの?」と8歳くらいの少年。
「ごめん、わからない。でも、みんな力を持ってる。そうだハヤシさん未来のヴィジョンが見えるでしょ?そこに答えがあるかも」とサクラは先程泣きながらどうすればいいと言っていた15歳の少年に聞いた。
「待って、、、、ヤバイ、パニクって見えない。そもそも、こんなヴィジョン全く予知もしていなかったし観れない」とハヤシは取り乱してまた泣いてしまった。一人の少女がハヤシの手を握った。
「ハヤシさん、落ち着いて。こうすると落ち着くでしょ?」と少女が言った。
「カナさん」
「頑張って」とカナが言うとハヤシが腕で目をこすり涙を拭いた。
「わかった。ありがとう。頑張ってみる」とハヤシ。
オゼキがパーティー会場を見ると怪物、パズメが静かにこちらに向かってくる。
オゼキはSIG226ピストルに25発延長マガジンを装填して足元を狙って撃った。続いてイイジマとカトウとナカノは少し攻撃を食らっているようだ。撃たれた足元から緑の血液が流れている。だが、相手はエアガンでも食らってるくらいの痛みぐらいにしか感じているようにしか見えなかった。
「シミズさん、ナカムラさん。私達一緒にアイツを動けなくしましょう。サイコキネシスを使って」とサクラが言った。
サクラ、リク、シミズ、ナカムラ目をつぶるとパズメは部屋の奥のまで吹き飛ばされて強化ガラスに打ち付けれた。強化ガラスはクモの巣状にヒビが入った。
「見えた!」とハヤシが言った。「見えたよ。クレアさん。彼女が知っている。奴をアッチの世界に送る呪文を」
「それはどんな呪文だ」とオゼキは言った。
「そこまでは見えない」とハヤシは答えた。
クレアは床に寝っ転がっていて、少女が頭に右手をかざしていた。
「アスカちゃん、ワタシも手伝うわ」と言ってサクラはアスカと一緒にクレアの頭に手を当てた。
「ヤバイ。アイツまた動き始めたよ」とカトウが言うのでオゼキが振り返ると、部屋の奥で倒れていた怪物パズメが起き上がった。すると先程と違っていた。蛍光色の紫色一色の身体の縁が黄色に二重にボヤケて3D映画をメガネナシで見たみたいな様だった。
「マズイ、一体化しようとしている」とサクラが言った。
一体化はなにか?と思ったがそんな事を考えている場合じゃない。
「姉ちゃんにクレアを任せておく。シミズ、ナカムラ、行くぞ」と言うとリクが言うと3人が歯を食いしばるような表情をすると、パーティー会場会場にある椅子やテーブルやあらゆる物が触手に頭に繋がった人間も床から10メートルほどの高さまで宙に浮いた。すると急にガラスが全て割れ、浮いていた物が全て床に落ちた。照明が消えて真っ暗になった数秒間、怪物パズメと触手が放つ紫色とサクラがゲートと言っていた赤いロープの内側から放つ黄色い光が会場を照らした。電気が復旧すると、さっきの様に蛍光色の紫一色の身体に戻っていた。
「どうにか食い止めた。だけど、余り時間がない。また、やるに違いない。」とリク。
オゼキは何が起こっているの全く分からなかった。恐らく、カトウも、ナカノも、イイジマも彼が率いる特殊部隊の生存者もだ。
「もう少しだから、頑張って」とサクラいうとアスカを見た。「後もう少し」
「ヤバイ」と一人の少女が言った。
「なに?どうしたのコハルちゃん」とサクラ。
「これ見て、念写したの。アイツ巨大化しようとしている。日本中を一体化しようとしている」とコハルがサクラ紙を見せた。オゼキがその紙を見ると、怪物パズメがニュー帝都ホテルと同じくらいの大きさになった白黒の画像が描かれていた。いたずらで絵でも書いたのかと思ったが、それにしてもまる写真をプリントアウトしたみたいに具体的に描かれている。
9
サクラはアスカは協力しクレアの手当をしていた。思っていた以上に力を使った。おかしい、もうとっくに目を覚ましてもいいはずだ。もしかすると、彼女の力が強すぎるから、目覚めるのに時間が必要なのかもしれない。それにクレアからもうひとり、いや何人もの人の気配を感じた。それは、アスカも同じようだ。こんな事は初めてだった。同じ人間にの人格が入り込むということがあるのか。その、もうひとりが邪魔をしているのか。それとも勘違いなのか。回りを見渡すと、オゼキ、ナカノ、カトウ、イイジマ、特殊部隊の生き残りの2人がショットガンやピストルでパズメを撃っている。銃声がパーティー会場を響き渡り、こちらに近づいてくるパズメに弾丸を浴びせていた。弾丸が弾着するたびに緑色の血液を流しているが、恐らくパズメは自己回復能力があるのだろう。痛みは感じるようだが、スグに自己治癒で治っていく。
リクは、シミズ、ナカムラと共に奴がこちらに向かわないように能力を使っているが、時間稼ぎでしかない。相手の方が力が強い。それに、少しずつだが、コハルが言っていたように、アイツの身体が大きくなっているのが分かった。
「なあ、何で、アイツこっちに向かってくるんだ?」とカトウが言った。
「たぶん、私達、子供達を殺すはず。そうすれば、アイツはこの世で12年は生きてられる。だからだよ。それに、アイツをアッチの世界に戻すのは私達だけだから」とカナが相手の力を読んだようだ。だが、アイツの心を読むにはだいぶ力がいるらしくカナでさへ全容がわからないでいたのが双子たちには感じとった。
「クソ、弾切れ」とナカノが言った。「僕もだ」とカトウ。「俺もだ」とイイジマ。 銃は相手を殺せないが足止めにはなる。リクは能力を使い死んだ特殊部隊員達が持っていたIWIタボールブルパップ式アサルトライフルとVP9ピストルとマガジンを宙に浮かせてパーティー会場の入り口までサイコキネシスで飛ばした。アサルトライフル5丁、ピストル7丁、それにマガジン15個。
「君がやったの?」とナカノはリクを不思議そうな顔を皆がら言った。
「そうだよ。アイツは殺せないけど足止めするには使える」とリク。
ナカノ、オゼキ、カトウ、イイジマ、と生き残った特殊部隊員の2人は銃を掴むと、パズメに向かって撃った。
「いいか、連射すると弾の減りが早い。一発ずつで撃つんだ」とイイジマ。生き残った大人たちはパズメに向かい、銃を発砲し応戦した。
「子供を殺す為に、こっちに向かっているてことは、ココから出るのが一番じゃないか?」とカトウが言った。
「今やらないと無理だは。奴は今、生まれたての赤ちゃんと同じよ。ここでアッチの世界に戻さないと、もっと成長して私達ではどうにもできなくなる」とリオがヤマトと手を繋いで言った。恐らく2人とも予知能力を使ったのだろう。確かにそうだと双子は思った。
すると、サクラはクレアの意識がはっきりしたのを感じた。それに、もう何人かの存在を感じた。こんなの初めてだった。アスカも同じことを考えているようで目をまん丸として驚いた様子だった。クレアが急に目を開いた。
「ここはどこ?」とクレア。
「アレを見て」サクラが、指差す方向に蛍光色の紫色のパズメの怪物がいた。
「アレが、パズメ?」とクレアは驚いた様子だった。
「そうだよ、アナタは知っているはず。アレをアッチの世界へ戻す方法を」とサクラが言った。
「でも、ここまで大きくなったら、もしかしたら無理かもしれない」とクレアが弱音をはいた。
「でも、やるしかないでしょ?」とサクラ。
「私、一人じゃ無理だ。だけど、君たちと一緒なら」とクレアは回りの子供達を見回した。みんな、覚悟を決めているようだった。子供達は一斉に頷いた。
「オゼキさん達、ココから逃げて」とリク。
「君たちを置いて逃げられるか」とオゼキが言うと、オゼキが急にその場から消えた。オゼキが持っていた銃と防弾チョッキが床に落ちた。
「どうしたんだ?」消えたオゼキを見てビックリしているカトウも消えた。
「ちょっと、貴方たち、なにをしたの」と言うとナカノも消えた。そして、イイジマに特殊部隊の生きのこりの2名も消えた。
「どうすればいい?」とリク。
「12人の力が必要だ。アイツはどんどん力を増している。こちらに相当なダメージを食らうかもしれない。それでもいい?」とクレアが言うと、頷いた。
クレアからのヴィジョンがサクラとリクに入ってきた。それは他の子供達も同じ様だった。「これしか方法はない」それには皆が同意見だった。
12人の子供達は触手をかき分けながらパーティー会場に入った。パズメを取り囲むようにして、輪を作った。パズメの力は思っていたより強かった。逆に刺激することになった。ヤツは物凄サイコキネシスを使い会場内の触手に繋がった人間たち以外は全て吹き飛ばした。ニュー帝都ホテルビルの地上150メートルの上の部分が吹き飛び、倒壊した。地上にビルの瓦礫が南側にある建物に降り注ぎ、南側のビルを押しつぶす形で瓦礫の山へと変わった。土煙が視界を覆い、サクラとリクは目を開けるのがやっとだった。
サクラとリクとクレアとシミズとナカムラはサイコキネシスで他の子供達を守ったが吹き飛ばされた。そして、パズメの身体は信じられないスピードで大きくなった。 恐らく、50メートルにはなるだろう。背中についた羽を動かしながらパズメは3秒間隔で色を変えた。蛍光色の赤、蛍光色の青、蛍光色の緑と光を放っていた。触手で繋がった者たちと祭壇はそのまま、地上200メートルの場所で浮いていた。
サイコキネシスで再び12人の子供達が、祭壇のゲートから出ている触手で繋がった1万人近くとパズメが浮いている地上200メートルの地点で、パズメを囲む様にして浮き上がった。
「どうすればいい?」とリクが言った。
「クレア、あの呪文を知っているんでしょ?」とサクラ。
「分かった」と言うと呪文が他の11人の子供達の頭の中に流れ込んできた。
「ピガ、ファ、ゲ、キラシ、ギョキョ、ン、ラ、ガイト」
「これを、時計回りで回りながら皆で唱えるんの」とクレア。
宙に浮きながらパズメをの回りを囲み12人の子供達が
「ピガ、ファ、ゲ、キラシ、ギョキョ、ン、ラ、ガイト」と唱える。
パズメはそれに抗うかのように、祭壇の中央から沢山の蛍光色に光る紫色の触手を子供達に向かってきた。サクラとリクとサイコキネシスを使える者は呪文を唱えながら、そのしつこい触手を吹き飛ばし捻り潰した。蛍光色の緑色の血が地上に降り注ぐのが見えた。マズイ、このままだと呪文を唱えるのに集中できずに失敗するかもしれない。パズメは力を増しているのかそれとも最後の足掻きなのか蛍光色の赤、蛍光色の青、蛍光色の緑と光が先程より強くなっていた。
パズメは突然羽を動かすのを止めると、ニュー帝都ホテルの半壊した残り150メートルの建物に落ちた。建物はパズメの重さに耐えきれず大きな音金属音とガラスが割れる音と共に全壊した。土煙が200メートル上より上がった。
サクラとリクは、もしかして向こうの世界にパズメを送るのに成功したのかも知れないと思って喜んだ。それは他の子供達も同じ様だったがクレアは違っていた。
「まだ、パズメはいる。ゲートに返さないと」
土煙が収まると、200メートル下の瓦礫の上に巨大化したパズメ身体から光を放ちながら子供達を舐め回すように観ていた。パズメの長い6本の尻尾を振り回し北側の証券ビルを破壊してから宙に浮くクレアを叩いた。クレアは東の方向にある道路のアスファルトに叩きつけられた。
サクラとリク、それに他の9人の子供達はクレアは死んだと思った。もうダメだ。パズメは背中についた翼を上下に羽ばたくと風で、周囲に在る建物のガラスを割、車が宙に舞った。パズメがをゲートの在る200メートルの位置まで浮き上がった。パズメの濃い紫の瞳が赤くなり、サクラと目が合った。次はサクラがヤラれる。サクラを含め子供達全員そう思った。
その時、強い黄色の光を放ったモノが地上から猛スピードでパズメの背中から貫通し胸を突き破った。地上にパズメの紫の肉片と蛍光色の緑の血が地上に降り注いだ。サクラもリクも、他の子供達も何事かと思った。その黄色く光るモノはクレアだった。クレアだけではなかった、リクもサクラも気づくと黄色い光を放った。他の子供達もだ。パズメは痛みに耐えきれなかったのか再び地上に落ちてビルを瓦礫へと変えた。
「今だ。チャンスが来た。自分たちの力を全て集中して奴にぶつけるんだ」とクレアからヴィジョンが流れ込んできた。
黄色く発光した12人の子供達は地上で瓦礫に横たわるパズメの回りを時計回りに、回りながら唱えた。「ピガ、ファ、ゲ、キラシ、ギョキョ、ン、ラ、ガイト」。サクラとクレアが12周回した時だった。パズメの身体から光を放たなくなり。すると、断末魔を叫びながら、倒れたパズメの身体が浮き上がり、祭壇の中央にある赤いロープの中の黄色いゲートに引っ張られるような形に吸い込まれていた。黄色いゲートから出ている大量の紫色の触手は、頭に繋がった人と共に破裂して肉片へと変わった。地上に蛍光色の緑と赤の血液が降り注いだ。
パズメは空中で暴れまわっていた。パズメの巨大な右足が小さな赤いロープのゲートに吸い込まれていった。まるでゲートに蓋をしている様だったが、そのうち、足が痩せ細って行くのが分かった。それに、さっきまで紫色に発光していた身体から光が失われているのが分かった。
これで、成功だ。サクラとリクもそう思った。もちろん他の子供達も。
「あとは、ワタシの仕事だ」とクレアが言うと、他の11人の子供達が吹き飛ばされた。「後は、君たちが力を合わせて周囲の建物にいる人達を助けるんだ」
「でも」とリクは言った。
「アッチの世界にパズメをゲートへ送り込む時に相当な爆発が起きる。関係ない人を巻き込む訳にはいかない。みんな、やってくれるよね?」とクレアが言うと11人の子供達はお互いの顔を見渡してから頷いた。
風が祭壇の黄色いゲートへ向かい吸い込むように起こった。それはとてつもなくスゴイ風だった。台風や竜巻の非ではない。目の前にある車から、周囲の建物の割れたガラスやビル自体がそのゲート向かって吸い込まれていった。ゲートは大きくなり100メートルはありそうなビルを飲み込んでいった。
11人の子供達はニュー帝都ホテルや周辺のビルの瓦礫で生き埋めに従業員と周辺にいる、老若男女を飛びながら安全な場所へと非難させた。今気づいたが、サイコキネシスが使えないマコト、カナ、リオ、アスカ、コハル、ヤマトまで物凄いスピードで空を飛び人命救助をしていた。そう言えばいつからそんな能力を得たのだろう。クレアの力なのか。
急に瓦礫がブツカリ合う音が消えた、サクラとリクがクレアの方を振り返ると紫色の光を放ちゲートが爆発した。爆風は回りの物を吹き飛ばし、アスファルトが剥がれ、信号機や立体歩道橋が粉々に瓦礫なるのが双子には見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます