白滅の月 ①Moon Light

山﨑或乃

あらすじ ※結末まで記載

MoonLight

 不良大学生高戸和也は自殺してしまった幼馴染の鉄平を思い、鬱屈した大学生活を送っていた。そんな中で高戸は最近噂の金髪碧眼の美女久留主佳蘭に声をかけられる。佳蘭は鉄平の形見として譲り受けた「月光」という本に興味を示していたのだ。

 高戸と佳蘭は一緒に「月光」を読むためにページを開くと、二人は怪異に飲み込まれた。「月光」という本を読まなければならない。読まされてしまう。そして読み切ったと同時に自殺をしてしまう。鉄平の自殺の原因は「月光」という本だった。

 佳蘭は魔女という自身の正体を明かし、二人は「月光」という本の怪異を攻略していく。見えないものを見る佳蘭の魔女の瞳の力で、原因の一つが本のページにあることを突き詰める。本を傷つけずページから文字だけを抜き取る。高戸がスキャナーを使うアイディアを出し、「月光」という本の内容を知ることに成功する。それは「月光」の作者富永弥の自伝。妹であるときとの一夜の過ちを書いた懺悔録だった。高戸と佳蘭の二人は怪異を攻略し帰路につく。

 高戸は一人、佳蘭に話せなかった白昼夢に似た幻を回顧する。それは「月光」の読了後に見た、富永弥の死ぬ直前の光景だった。

 高戸はそこで月の怪物を知る。鉄平の死の原因は「月光」でもなければ作者である富永弥でもない。それはあまりにも……。

 家路に向かい歩き出す高戸は、夜空の月を見上げることは出来なかった。


呪いと魔女

 穏やかな日常を送る高戸のもとに佳蘭が「月光」を譲って欲しいと現れる。「月光」は危険なもので、次の被害者を出さないためにも処分する必要があるという佳蘭に、高戸は譲るわけにはいかないと拒絶する。

 佳蘭は代わりに自身の依頼を手伝うよう高戸に要求する。それは呪いに悩まされる板橋という男からのものだった。高戸は佳蘭から板橋が持っていたキーホルダーを受け取る。その日から高戸は悪夢を見るようになる。そして高戸は呪いによる不幸に見舞われながらも佳蘭と共に海に向かい、キーホルダーを捨てることに成功する。

 真意を話せという高戸に佳蘭は呪いというものを体験して欲しかったと答える。普通の呪いを体験させることで、高戸に「月光」の異常さを認識させるためのものだった。

 そして二人はコンビを組むことになる。鉄平を殺した相手への復讐と「月光」の真実を知るために。


 ダイダロスは覗けない

 二人は鉄平がどこで「月光」という本を手に入れたのかを探るために、彼の通う大学のオカルトサークルへと足を運ぶ。調査期間は五日間。高戸は不良大学生であることを利用して、鉄平の足跡を辿っていく。

 サークル部員の一人である桃生緋沙子から食事を誘われた高戸は、そこで鉄平が麻薬に関わっていたことを知らされる。


 獄宙に囚われる

 佳蘭との夜の報告会で高戸は鉄平が麻薬という犯罪に関わっていたという情報を伝える。佳蘭にも進展があった。オカルトサークルには使うと不幸が起こる宝が存在し、それを受け継ぐ秘密の守り人が存在する。二人はその宝を「月光」だと確信した。

 鉄平が麻薬に関わっているという事から逃げるように高戸はパチスロに興じる。かつて鉄平に言われた言葉で決意を固めた高戸は、部員の一人森川と遭遇する。高戸はパチスロ技術を駆使し森川の懐に入り込む。そして森川が鉄平の死に関係してると確信した高戸は罠を仕掛けた。

 翌日高戸は佳蘭と一悶着起こす。それを切欠にし更に森川からの信頼を勝ち取る算段だった。だが森川の言葉は予想を超え、佳蘭をレイプすることを提案してきた。

 高戸は佳蘭を森川のマンションへと連れていく。そして睡眠薬入りジュースで佳蘭を眠らせると、高戸は完全に森川の信頼を勝ち取った。クローゼットには麻薬植物。怒りを抑え込みながら高戸は森川を問い詰める。そして変わらぬ親友の真実と秘密の守り人が森川であったことを知る。激高し森川を殴り飛ばした高戸は殺意と共に近づこうとし、足を止めた。眠っていた筈の佳蘭が立ち上がり、森川は恐怖と混乱の極致に達し意識を失った。

 帰路につきながら高戸は佳蘭と会話する。今回の事件の本質と森川にかけた呪いについて。森川は報いを受けた。鉄平は高戸の知る鉄平だった。充分だこれでいい。そう思う高戸たちの前に白い影が現れる。くねくね蠢く白い影に佳蘭は発狂し、高戸は月の怪物と同質の存在であると直観した。

 人気のない公園。疲弊した佳蘭はベンチで休む。そして隣に座る高戸にくねくねと呼ばれる白い影がどう見えたのかを聞いた。佳蘭の魔女の瞳は白い影を人間と認識していたからだ。そして高戸との会話で佳蘭は、白い影と「月光」との繋がりを認識する。そして佳蘭自身の想定遥かに超越した恐怖に後悔した。

 そんな中高戸は確信する。自身がまた「月光」に向き合わなければならないことを。


Who is he?

 草凪梓のもとに転がり込んできた幾つかの本。作者は富永弥。彼はいったい誰なんだろう?

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