第8章

 気づくと、ミズーリオは鏡のような空間にいた。

「ここは・・・?」

ミズーリオの前にメフィラスが現れた。

「ココハドコトモ繋ガラナイ空間。私ト君ダケガ存在シテイル」

ミズーリオは頭を押さえた。

「何か忘れている気がする」

「当然ナノダ。君ハ死ンダノダカラ」

「死んだ?私が?」

「デハ、ソノ場面ヲ見ルガイイ」

一面の鏡に情景が映し出された。奇石の研究者ボーンの発明によって死後の世界に来ていたサトリと仲間たちは女神アナスタシアの提案で死後の世界を一つにすることになった。閻魔王として呼ばれたミズーリオはその提案に応じた。アナスタシアとミズーリオが手を合わせ祈ると、天国と地獄が一つになり、狭間が消滅し、無の空間となった。死後の世界にいた魂が去った時、ミズーリオは三人の英雄と再会した。

「ミズーリオ、探したぞ」

「アルフレア、タイフーン、クェーク。わざわざ我輩の為に…何て言っていいかわからないのだ」

「その口調は取れてないのか?」

「あ、わすれてた」

「ははは。笑わせるなよ」

情景が映し終わり消失した。

「死んだのは物語の話だったのか。現実ではなくて安心した。ところで、シンメン・サトリは生きていたのか?」

「違ウ。私ガ蘇生サセタノダ」

「有難う。どうして死後の世界に来たんだ?」

「デハ、ソノ場面ヲ見ルガイイ」

一面の鏡に情景が映し出された。現世に帰ったサトリと仲間たちは、死後の世界で手に入れたネアを操る能力で敵組織との戦いを有利にした。伝説の獣を操る敵との戦いで、サトリはティアマットと再戦した。

「貴様は、覚えているぞ。一度我に挑み、そして敗れた奴だ。また我の技で吹き飛ばしてやろう。我特製“ツイストーム”」

激しい竜巻がサトリを襲った。

「ははは。前は我の技を和らげたことに驚いたが、今回はそれすら敵わないだろう。なぜなら、ツイストームの威力が上がっているからだ!」

「そんなの、そよ風に感じる。止めだ!“大旋風・乱気流(ビッグウェーブ・テンペスト)”!」

「かつて我の餌食となった者が、何故これほどまでに強くなった!」

「そりゃあ、僕、エレクトなんで」

「エレクトだと?」

「選ばれし者のことさ」

その後、ティアマットは現れたバハムートを見て、負けを認めた。敵組織の首領、グボアギは捕らえられていたが、怪盗ミラーという人物の協力で脱獄しており、全ての力をもって暴れていた。しかし、サトリと仲間たちが来たことで追いつめられた。

「おれを本気にしたな!これでお終いだ!」

地面が割れ、巨大な穴が開いた。グレートが痛みを堪えながら、面々を見た。

「みんな…」

「サトリ!」

「まだ終わりじゃない!」

サトリが風のネアを発動し、面々は地面の上に乗っかった。

「ははは、そんな攻撃当たるか!」

「これならどうだ!」

グレートが土のネアを発動し、不意を突かれたグボアギは両側から地面の波で勢いよく挟み込まれた。

「ぐぼ、あ、ぎ…」

「やったぞ…」

敵組織に勝利した後、グレートは総司令官の座をサトリと仲間たちに譲った。

「今回の戦争の被害を出したのは、私の責任でもあった。だから、辞職する」

「そんな…」

「気を落とさないでほしい。寧ろ、喜んでほしい。君たちだから頼むんだ。君たちは僕のお気に入りだから」

「そうか。じゃあ、総司令官は俺がやるしかないな」

「何でですか?」

「何でだって?俺はリーダーだ。リーダーがやるのが普通だ」

「ロンドが向いてるとは思えない」

「クリスが良いと思う」

「僕は、サトリが良いと思います」

「何で、僕…」

「サトリは優しいです。優しい人は他の人の立場に立って考えられます」

「優しいだけじゃだめだ!俺のように強くないとだめだ!わかった!総司令官の座をかけて3人で勝負だ!」

ロンドとクリスとサトリが向かい合った。

「じゃあ、勝負開始だ!」

ロンドとクリスではなくサトリが勝った。その理由は、死後の世界で記憶を取り戻し、サトリが現実でエレクトという宇宙間での未確認生命体と戦闘する選ばれし者になったことの不安から来る無意識の攻撃が命中したからだった。

「あれ…勝っちゃった」

「サトリも総司令官になりたかったなら言えよ!ずるいぞ!」

「おめでとう。サトリ君。君に総司令官を任せる」

「そんな…まだ心の準備が…」

「大丈夫。君に任せるのは1か月後だ。引き継ぎが1週間かかるとして、それまでは時間がある。自由に過ごしてほしい」

一週間中、サトリと仲間たちの元に怪盗ミラーが訪れた。自由な怪盗はサトリに手伝いを頼んだ。怪盗の手伝いを受け、訪れたリオデジャトーンシティでサトリは妹と出会った。

「そうだ。これ、母さんから」

「わあ、きれいなネックレス」

「似合ってるよ」

「最近、母さんから返事が来ないんだけど、お兄ちゃん何か知ってる?」

「…実は、母さんは死んだ」

「え?」

「僕が母さんに再会した時、地震が起きて、お腹を怪我したんだ。SONG隊員の人が助けてくれたりしたけど、もうダメだった。だから、それは母さんの形見だよ」

「そうなんだ。ありがとう。大切にするね」

その後、総司令官の引継ぎを行っている時、ソング最強の十人の部隊、ララバイの隊長エンリケが報告に来た。ララバイの任務はたった一つ、最強の獣、オーマの討伐だった。オーマの群れに襲われ、ララバイの隊員は隊長を守り犠牲になった。そんな中、総司令官となったサトリに支部からオーマ発見の報告が入った。サトリは他者の体験を自分が体験できるリンクと言う能力でオーマを初めて確認した。サトリは現実と夢計画の登場人物がリンクしていることを聞き、現実では死んでいる妹の元に急いだ。しかし、間に合わず、目の前で妹はオーマに殺された。サトリはオーマに向かって全てを解放した。

「ヒナギクを返せ!“ネア・バースト”!!」

サトリを中心に爆風が巻き起こり、それは地球上の半分が壊滅する”サード・スクリーム”と呼ばれた。奇石の力で被害を逃れた仲間たちは、作戦会議を開き、オーマ討伐作戦が決定した。オーマが奇石をエネルギー源にしていることから、大量の奇石をカタナシティに運び、オーマを誘き寄せた。仲間たちの協力でオーマは残り一体となった。オーマは特殊な領域を展開し、代表者のサトリを捕らえた。

「我の領域(フィールド)内では、外界と遮断されている。他者と意思疎通は出来ず、リンクを使うこともできない。勝敗を決めるのは、己の肉体を用いた打撃のみ」

オーマの攻撃を受け、傷つくサトリを仲間たちは応援した。

(感じる…みんなの思い…聞こえる…みんなの声!)

サトリは仙人に教わった”弱者拳”でオーマに打撃を与えた。

「おりゃああ!!!」

「ぐああ!!!」

オーマに勝利したサトリと仲間たちは歓喜し、宴を開いた。そこに、星を監視する異星人、アグルが来星した。

「私たちがテラと呼ぶ星、地球の者も強いことが分かった。しかし、君は強すぎる力で地球を壊しかけたね?」

「はい…」

「十分危険分子と判断される。普段なら訪れていたが、私たちは銀河獣の出現でそれどころじゃなかった。その為、今判断する。地球の代表者は誰だ?」

「僕です」

「話が早い」

サトリとアグルは宇宙船に入った後、一枚の紙を持って現れた。それは“ガイアテラ相互不可侵共同条約同意書”で、『二つの星は互いに侵略することはなく、共同で戦うという和平を結ぶ条約』だった。

「このような話を持ち掛けてくる者が、悪い者だと思えなかった、それだけのことだ」

「なるほど。サトリ君、やるね。私が見込んだだけのことはある」

「グレートさんに言ってもらえるなんて、僕、感激です!」

こうして、地球に平和がもたらされた。さらに、オーマのコアにあった鍵を使ってサトリたちは現実に帰ったのだった。情景が映し終わり、消失した。

「コレデ夢計画ハ終ワリダ」

「彼らなら現実でも協力して危機を乗り越えるだろう」

「ソレコソガ夢計画ノ願イデ狙イナノダ」

「ところで、宝玉は7つ集まっていたか?」

「アア。コノ通リダ」

メフィラスはミズーリオに浮いた宝玉を見せた。

「6つは分かっているが、7つ目は誰の命だったんだ?」

「アナスタシア、ダ」

「そうか。いずれにせよ宝玉を7つ集めた。これで終わりだな」

「マダダ。実ハ宝玉ハ8ツアッタノダ」

「8つだと!誰が持っている?」

メフィラスは一瞬黙って言った。

「私ダ」

「それはつまり、戦うということか」

「存分ニ楽シムノダ」

メフィラスは腕を伸ばし、ミズーリオに触れようとした。ミズーリオは避けたが、背後に瞬間移動したメフィラスはミズーリオに触れた。直後、磁石の反発のようにミズーリオは吹き飛んだ。

「私ガ何ノタメニ宝玉集メヲサセタト思ッテイル」

「楽しむためじゃないのか?」

「ソレダケデハナイ。ヨク思イ出スノダ」

ミズーリオは思い出した。宝玉は自分にとって大事なものとメフィラスは言った。(メフィラスは私を鍛えていたのか?)

「当タリナノダ」

メフィラスが触れ、再びミズーリオは吹き飛んだ。

「それならそう言ってくれれば良かった」

「何モ知ラナイノト知ッテイルノトデハ異ナルノダ。例エバ、コレラノ事モ」

宝玉が光り、情景を映し出した。七つとも霊界ウルトラが滅びた。一つは、星を改造した爆弾が落ちてきた。一つは、兄弟宇宙人の遺したロボットを改造した軍団が攻め込んだ。一つは、銀河獣の百倍の合体獣が襲った。一つは、地球の代表者の命令で全勢力が攻め込んだ。一つは、ウルトラ人の誰かが霊界ウルトラの長ゼウスを殺し、戦争になった。一つは、アナスタシアがゼウスを殺し、戦争になった。一つは、ミズーリオがゼウスを殺し、戦争になった。

「何なんだ・・・これらの情景は?」

「コレラハ私ノ考エテイタ侵略方法ダ」

「・・・そんな嘘だと言ってくれ!メフィラス!」

メフィラスは指を数回折り、ミズーリオを挑発した。

「メフィラス!!」

ミズーリオはメフィラスに飛び込んだ。瞬間移動で背後に来たメフィラスが腕を伸ばした。ミズーリオはその腕を掴み、全身全霊の力を込めてメフィラスの腹部を殴った。

「強クナッタノダ・・・」

八つ目の宝玉が出現すると同時に情景が映し出された。ウルトラ人になったメフィラスが霊界ウルトラの代表者になった。

「私トシタコトガ勝手ニ映ッテシマッタノダ・・・」

「メフィラスは無駄な殺生はしない。8つ目がメフィラスの本当の侵略方法だった。7つは嘘だった。そうだな?」

「全部本当ダ・・・」

徐々に空間が消え始めた。

「どうなってる!?」

「モウソロソロダ。最後ニ伝エルノダ。強イエネルギー体ハ物質ガ無クナッタアトシバラクエネルギーガ残存スル・・・例エバ、侵略者タチノヨウナ・・・」

「そんな…現実では宇宙人撲滅計画で全ての侵略者が消滅した」

「現実ヲ維持スルノダ・・・」

空間が消えるとともにメフィラスも消えた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る