第6章

 災害の時代、人類は戦争を止めた。“ファースト・スクリーム”、“セカンド・スクリーム”。この二度の大災害の後も度重なる災害を乗りこえる為、世界中の国々は一つになり、統一国家ユニオンが誕生した。災害と共に出現する獣と戦う直属の軍として国家防衛特殊部隊(Special Organization National Guardian)―通称ソング(SONG)が創設された。アークとタケゾウの孫で、忌み名マロー・ノワール、本名シンメン・サトリという少年がいた。ひょんなことからSONG隊員となったシンメン・サトリは、総司令官グレートに魅入られ、編隊タブラ・ラサに任命された。サトリは『会議室(仮)』と書かれた部屋に着いた。

「ようこそ。タブラ・ラサへ。この部隊名の意味は、白紙。いつでも動けるよう備えて、総司令官様の補助の役目をすることが基本だ!」

髭面の隊長モゲレオ・ノルマレンディーは総司令官グレートの父だった。

「また雑用か…」

「そう落ち込むな、新米。僕たちはね、何も抱える任務がないからこそ、何でもできる、可能性を秘めた部隊、私はそう思っている。まあ、元気を出したまえ」

モゲレオは用があると言って、部屋を出て行った。サトリが不安でいると、扉が開いた。

「君が新入隊員だね?ようこそ、タブラ・ラサへ!ここはね、部隊名の通り…」

「あ、その話聞きました」

「ごめん、知らなかった。僕ら自由だからさ」

眼鏡の副隊長ペリドット・ウィンチェスターはリンク島の師範の息子だった。空を飛ぶ鳥は首を傾げた。(ウィンチェスター?ライトサンダーの倒した強者と同じ姓だ。)数日後、タブラ・ラサに出動要請が入った。ソングの任務は獣を討伐することと災害を抑制することの二つだった。タブラ・ラサの三人は、未踏の秘境にて災害抑制任務に当たった。災害抑制には特殊な石”奇石”を用いた。

「ところでどうやって使うんだ?この石」

「隊長が分からないそうです。副隊長お願いします」

「何を言ってるの?使ったことないんだから分からないよ」

「それでどうして今回引き受けたんですか?」

「大丈夫!僕らはね、今までもどんな任務にもお答えしてきたんだ。例えば、凄い巨大な獣を相手にしても…そう、大体このくらい大きな…」

「…わわわ」

「…何だこいつは!」

彼らの前に現れた伝説の獣ティアマットが牙を剥いた。

「ついに我は、あのバハムートを倒し、伝説の獣に選ばれた!ここはバハムートを打倒す程に風が通る神聖な領域。ここを汚す者は何人も許さん!我特製“ツイストーム”!!」

三人は吹き飛んだが、軽傷で済んだ。これはサトリが無意識状態で放った風の“気”の力によるものだった。総司令室にてモゲレオがグレートに報告した。

「伝説の獣を倒すのはそう簡単じゃないぞ」

「そうだね。まだ早かった」

「まあ、あの獣は大人しくあの場所に留まっている。倒すのは今じゃなくてもいい」

「マロー君の事だけでも成果はあった。ありがとう」

「いえ、何でも申し付けてください、総司令官様」

その後、サトリは新部隊である編隊カリュードに任命された。サトリと他の六人の隊員にグレートが連絡した。

「現在、災害が激化し、イタチごっこのように切りがなく、被害だけが増えることで、世界各地に不安が広まっている。そこで、世界各地を回り、その不安を取り除くために獣を狩ること、それがこの部隊に課せられた任務だ。しかし、それだけでは、完全に不安を取り除く事は不可能だ。そう考えた私は、見事な歌声を持つライラ君と相手の心の声を聴く力を持つナタリー君をメンバーに加えた。よって、世界各地を回り、その活気を取り戻すこともこの部隊の目的の1つに加える」

カリュードの七人は、旅に出た。数時間後、山の中で一徹という男に案内されたが、この男は裏切ることを目的にする快楽主義者だった。

「裏切りの頑固一徹、この俺に出会った事が不運だったな。悪く思うなよ、少年少女たち」

一徹がサトリを狙って斬撃を放った。身動きできないサトリを仲間の一人、ロンドが庇った。

「感謝します、ロンドさん」

「俺はどんな壁も跳ね除ける男、ロンド!見たか?華麗な俺の蹴り!これで勝負のケリもつけてやるぜ!」

「…いや、その必要はない」

一徹はサトリが仲間を信じて待つ姿とロンドが庇う姿を見て、信頼し合うことの強さを知り、負けを認めたのだった。カリュードが去った後、一徹は前に裏切った弟子の事を考えた。(虎徹、粗鉄、あいつらいい奴らだったなあ。)一徹は、刀を自らに向け自害した。一徹は気づくと、地獄にいた。泰山府君は一徹に命じた。

「あなたは強い。地獄めぐりを終え、ヘルセブンとなりなさい」

一徹はその通り、ヘルセブンとなり、閻魔王の奥の部屋に来た。そこにもう一人がいた。

「我はアシュラ。燃え盛る”憤怒”を満たすため参らん!」

アシュラに続いて、一徹も現世の扉を開けた。現世で、空を飛ぶ鳥は翼が体長に比べて大きい獣を発見した。(あの獣は襲うつもりだ。)その獣は、カリュードの七人の前に降りた。

「翼の先端が剣のように鋭い。あれは翼の獣ウイングエッジだ」

サトリの仲間の一人、クリスが言った。ウイングエッジは、そのクリスを狙って攻撃した。

「レイピア、マローたちを連れていけ!シュン、守るぞ!」

カリュードの七人は隊長ロンドの指示で二手に分かれた。(まずは小手調べだ。)ウイングエッジとなったミズーリオはサトリの仲間の実力を試すことにした。(この獣の特長は、やはり翼だ。それにしても重い。)ロンドの指示でウイングエッジの両翼は地面に突き刺さった。(まずい。)

「食らえ!ジャンプ蹴り!!」

空を飛ぶ鳥は倒れるウイングエッジを眺めた。(危ない所だった。彼ら、かなり出来る。)横を飛ぶ鳥が声をかけてきた。

「閻魔王様。直ちにお戻りください」

「まさか泰山府君か!?分かった」

死後の世界に戻ると、泰山府君が言った。

「大変でございます。申し上げますと、ヘルセブンの階級アシュラが戻らないのでございます。これは死者が生き返った状態であり、禁忌を犯しています」

「それは一大事だ」

「直ちに追手を向かわせておりますが、問題はヘルセブンが一人不足していることでございます。ついこの間、交代で抜けたラック・ゴールドは浄化の時を待っています。呼び戻しますか?」

「そうしてくれ。ん?ラック?」

「はい。閻魔王様が外出中にヘルセブンになった後、一徹と交代で抜けたのでございます」

「ああ、そうじゃなくて、知り合いかと思って」

ラック・ゴールドは浄化の寸前でヘルセブンに戻された。(やっぱりあのラックじゃないか。)

「何だ?もうすぐ天国に行けたっていうのに」

「お前は二度も選ばれた。うーん、どうやら現在ヘルセブンの下から二番目に強いらしいな。新たな階級カラスは一番下になるので、前と同じデビルに任命する」

「有難うございました。代理はお任せください」

カリュードはオーディンの子孫が王を務める地、カタナシティへ来た。その時、本名と生き別れた妹の事を知った。

「妹はどこにいるの?」

「家の手紙を見れば…その服、ソングね。人を救う仕事は立派よ、誇りをもって生きて…」

「母さ-ん!!」

母を背負いながら走るサトリの前に足が速い隊員が止まった。

「私はジュゼット。その背中の人を貸せ」

ジュゼットとともに家に着いたサトリは手紙を読んだ。

「そうか。分かったよ、母さん!」

手紙の内容と最後に花の絵が描かれていたことから、妹は花の名前の姫と分かった。亡くなった母を埋めた後、サトリはクリスと合流した。

「旅の目的が一つ増えたね」

その時、一徹は、ジュゼットに狙いを定めた。

「うっ・・・」

「どうしたの?クリス」

「我はヘルセブンが一人、カラス。ジュゼット・マクベウス、その命頂戴する」

一徹は、必殺技”真・裏斬り”を使い、任務を遂行した。

「任務完了。帰還する」

サトリとクリスにとっては辛く悲しい経験となった。サトリと仲間たちは様々な経験を経て、強くなっていった。空を飛ぶ鳥は悩む。(シンメン・サトリ。彼にとって命に変わるもの。それは一体何だ。)

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