第4章

 ミズーリオは開けていた仕事に戻ることにした。代理を務める泰山府君の肩を叩いた。

「あ、閻魔王様。お戻りになりましたか」

「代理ご苦労様。仕事に戻るよ」

「承知いたしました。補佐を致します」

ミズーリオが仕事に戻ってからしばらくして見知った人物が現れた。

「次の者」

「ここは地獄か?ということは目の前にいるのが、閻魔王か」

ミズーリオは目を見張った。その人物は、リンクの仲間の一人、ハイ・ストールだった。ミズーリオは気にせず仕事をした。

「魂に告ぐ。針山地獄へ行くがいい」

「針山は、忍び族の必須訓練だから楽勝だ」

ミズーリオは内心焦っていた。(私が焦ることはない。相手からはゴーレムにしか見えてない。たとえ強かったからといって焦ることはない。)

それからしばらくしてまた見知った人物が現れた。

「次の者」

「俺はやっぱ地獄に落ちたか」

(カトリーナ。リンクの敵の手下の一人)

「魂に告ぐ。灼熱地獄へ行くがいい」

「やってやろうじゃねーか!」

それからしばらく後。

「次の者」

「ふむ。おれは天国に行けなかったか」

(ロック・メガ。カトリーナと同じ手下の一人)

「魂に告ぐ。血の池地獄に行くがいい」

「面白い。こなしてみせよう」

ミズーリオが仕事をしながら思いに耽った。(そうか。彼らも死んだのか。)その時、泰山府君が手を伸ばした。気づくと、白黒の何もない空間にいた。

「メフィラス!急だったな」

「スマナイ。急イデイタノダ」

「それより、4つ目の宝玉は出現したか?」

メフィラスは宝玉を見せた。

「コノ通リ、宝玉ハ4ツアル」

「成功していた・・・」

「安心スル暇ハナイ。次ノ宝玉ガ現レタノダ」

「それなら急がないといけない。それよりどうして教えてくれるんだ・・・」

気づくと、ミズーリオは死後の世界にいた。

「泰山府君」

「何でございましょう?」

(メフィラスなのか・・・?)ミズーリオは疑問を押し込めた。

「代理を頼んでいいか?」

「承知いたしました」

ミズーリオは、奥の部屋に来ると、現世に繋がる扉を開けた。革命の時代、アーク・シャウトという秘めた力を持った少女がいた。アークは森で小動物のウリちゃんとよく遊んでいた。ある日、小動物が『立入禁止』と書かれた区域に入ってしまい、追いかけていった。アークは、区域の管理者に尋ねた。

「すみません、小動物を見ませんでしたか?」

「見ていない。さあ、出て行け」

アークが残念そうに帰ろうとした時、管理小屋の窓に小動物が一瞬見えた。アークは小屋の方に駆け出した。管理者は気づき、アークを止めた。

「どこへ行く!」

「だって、小屋にウリちゃんが!」

「ここへ来たのが悪い!あいつは売りに出せば金になる」

「そんな!やめて!」

「離せ!この!」

「きゃ!」

管理者はアークを殴った。アークは悲しみと怒りの感情で満ち溢れた。

「へっ!ここは俺の土地だ。分かったら出て行けよ」

「・・・ウリちゃんを返して・・・返してーーー!!」

アークから放たれた爆風はその区域だけでなく森全体を消滅させた。アークの母シャークは、家で編み物をしていた手を止めた。

「窓の揺れ。まさか、アークの力?」

シャークが森に向かうと、泣きわめくアークがいた。シャークはアークを抱きしめた。

「お母さん・・・ウリちゃんが・・・」

「辛かったね。後で聞くから、家に帰りましょ」

家に着くとアークはシャークに話をした。

「そう。今日はもう寝なさい」

「おやすみ」

「おやすみなさい。来るとしたら明日ね」

ある事を恐れて、シャークは夜通し家の片づけをした。しかし、シャークの予想より早くその事は起きた。家のドアを壊して、屈強な男たちが入ってきた。

「きゃあ!何ですか!?」

「森が消滅した。あの爆風はバーク・シャウトの力と同じものだ。あの男の力を受け継ぐ者がこの家にいるはずだ。探せ!」

「「イエッサー!」」

「やめてください!アークはそっとしておいてあげてください!」

「隊長!いました!」

「よし!連れて行くぞ!」

「「イエッサー!」」

「やめて…」

「お母さん!」

アークは悲しみと怒りの感情で満ち溢れた。しかし、力は発動されなかった。嵐が過ぎ去った後のように、家にはシャークだけが残された。

「アーク・・・」

アークを誘拐したのは、敗戦国の長だった。

「連れて参りました」

「よくやった。これで、かつて我々の国を滅茶苦茶にしたあの国にやり返すことができる。それも全く同じ手でな!」

翌日、シャークは放心状態を脱して、家の片づけをしていた。その中で、アークとの思い出のアルバム、それから『英雄リンクの伝説』を見返した。そこで、シャークは呟いた。

「夫のバークは会社で溜まった不満が爆発して力が知られた。彼は国に捕まって戦争に利用された。アークも間違いなく受け継いでいるわ。この英雄リンクの宿敵ワスプ・シャウトの力を。こうしてはいられない。早く連れ戻しに行かないといけないわ。頼れるのは、森に住むウォーリーさんだけど、無事かしら・・・」

ウォーリーは消滅した森の中の小屋で暮らしていた。その小屋は生命力の強い一本の樹によって守られていた。森はその樹によって元通りになっていた。

「いやあ、一時はどうなるかと思ったが、神様はいるのう。わしよりも、森の近くに住むシャウト親子は無事かのう?」

ウォーリーはシャークを訪ねた。

「留守かな?おや?これは・・・」

家にシャークの姿はなく、床に包丁が落ちていた。少し前、シャークは屈強な男たちに連行された。目隠しを外されると、目の前に椅子に固定されたアークがいた。

「アーク!」

「お母さん・・・」

元気がないアークを見て、シャークは国の長に言った。

「あなたがこの人たちの親玉ね!アークはあなたの為に力を使わない。離しなさい」

「どうやらそのようだ。だが、これでもそうかな?頼む」

「うっ・・・」

屈強な男の一人はシャークを押さえつけた。

「お母さん!」

「お前が力を使わないとお前の母親は死ぬ。いいのか?」

「そんなの嫌だ・・・」

アークの体は力を発動する前兆の光が放ち始めた。

「だめよ・・・力を使っちゃだめ・・・」

「さあ!その力であの偉そうな者たちをやってしまえ!!」

屈強な男が刃物を取り出した。

「やめてーーー!!」

アークから放たれた力がビームのように飛んで、その先で激しい爆風が起きた。

「いいぞ!もっとだ!もっとやれ!」

その時、窓が割れ、アークの元に剣が舞い降りた。アークが剣を持つと、スルっと抜けた。光を失った目をしたアークは、力を放ち、次々と周りを破壊した。

「おい、もういいぞ。ああ!」

アークの力で、国の長と屈強な男たちは火の海に落ちた。シャークは呟いた。

「私には何もできない。誰か・・・」

「大丈夫か!?」

「あなたはウォーリーさん!それと英雄の皆さん!」

四人の英雄たちはアークの持つ剣を見て声を揃えて言った。

「「悪宿剣!!」」

「あれを抜いた者は悪魔に憑りつかれたようになる」

「我々が止めるぞ」

アークは向かって来る英雄たちに力を放った。聖剣の力で防いだが、連続の力の発動には備えていなかった。そこに和装の剣士が現れた。和装の剣士はアークの悪宿剣を弾き飛ばした。

「あなたは伝説の剣士」

「シンメン・タケゾウ!」

意識を取り戻して力が抜けたようになったアークをタケゾウは抱き留めた。こうして、復讐の戦いは失敗に終わった。その後、この事件は“セカンド・スクリーム”と呼ばれた。この原因は悪宿剣と特定された。それを用いたアーク・シャウトには罪の代償が与えられた。アークの子孫は、悪者の意味“ノワール”の姓を代々継ぐことと、不吉な意味の名前を付けることを決められた。不吉な名前を持つ家族は世界各地に散らばるように身を隠した。それはさておき、アークは自由になった。一本の巨大な樹のある森で、タケゾウとアークとシャークが仲良さそうに暮らしているのを見て、ウォーリーは安心した。さらに、空を飛ぶ鳥も安心した。(1人目の主人公と同じなら、2人目は・・・。)ある夜、タケゾウはこっそりと家を出た。タケゾウは一週間帰らなかった。一週間後の朝、アークはタケゾウが帰らない事に泣き喚いた。シャークはアークを宥めた。

「大丈夫。もうすぐ帰ると思うわ」

「でも…ひっく…こんなに帰らないのは初めてだよ…ひっく」

様子を見ていたタケゾウことミズーリオは思った。(宝玉は出現したはずだ。もう返してあげよう。)

タケゾウが帰った後、アークは泣いていた事が嘘のように笑顔になったという。そして、ミズーリオは、死後の世界に戻った。


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