第2章
ミズーリオは、浮遊していた。辺りを見回すと、色々な情景が入り乱れる空間だった。目の前には、一つの巨大な扉があった。吸い込まれるように、次の場所へと移動した。ミズーリオが着いた先には、小さい者と大きい者がいた。大きい者が言った。
「ここは地獄。ここへ来た者は現世で罪を犯した者である。ここにおられる閻魔王様より裁きを下す」
小さい者が目を閉じ、ミズーリオの魂を見た。小さい者がビクンとし、目を開けて言った。
「お主、底知れぬ闇の持ち主と見た。泰山府君、決闘場へ案内せよ」
「真でございますか!?」
「真も真。後が控えておる。急ぎ給え」
「そういうわけだ。じっとしていたまえ」
ミズーリオは決闘場に転送された。周りが闇に囲まれた、長方形の何もない空間だった。中央より奥に小さい者がいた。
「お主は閻魔王候補に選出された。我を倒した暁には、次期閻魔王として認めよう」
「急に言われても・・・」
「いざ参る」
小さい者が両手で円を作ると、強力な闇の波動が放たれた。
「おわっ!」
「華麗な身のこなし。現世で鍛錬をしたと見える」
「鍛錬・・・厳しい修行なら嫌という程やってきた!」
「その成果を存分に見せてみよ!」
小さい者とミズーリオが互いに闇の波動を放出した。
「やりおる・・・」
「和尚様の教え、諦めるべからず!!」
ミズーリオが一歩進んだ。小さい者も一歩進んだ。互いに一歩ずつ進み、中央で最大出力を放った。
「「おおおお!!」」
靄が晴れた時、立っていたのはミズーリオだった。小さい者の体が言った。
「お主の勝ちだ。見事、次期閻魔王として認める。泰山府君、頼んだぞ・・・」
小さい者の体は徐々に薄くなり、消えた。大きい者がミズーリオの前で膝をついて言った。
「あなたは閻魔王となりました。私は閻魔王にお仕えする泰山府君と申します。身の回りのお世話をさせて頂くので、何なりとお申し付けください」
「はあ。でも、何をしたらいいのか全く分からない」
「ご安心ください。分からない時は私が手伝わせて頂きます」
ミズーリオは泰山府君の補佐を受けながら、閻魔王としての務めを果たしていた。ある時、泰山府君が言った。
「だいぶお慣れになりましたね」
「ああ。だいぶ要領が掴めてきた」
「では、そろそろ思い出してもらいましょう」
泰山府君がミズーリオの方に手を伸ばした。気づくと、白黒の何もない空間にいた。
「メフィラス!」
「物語ノ進行モ大事ダガ、宝玉ノ収集モ大事ダ」
「収集したくても記憶を抜かれてはできない」
「確カニ。記憶ヲ抜クコトハ控エル。コノ先ハ、自ラノ意思ガ必要ナノダ。ヒントハ、物語ヲ変エル行動、ナノダ」
「物語を変える行動・・・」
「宝玉ハ君ノ大事ナモノト説明シタ。ソノ事ト物語ヲ変エル行動ヲ合ワセルト宝玉ガ何カ見エテクルノダ」
ミズーリオは考えた。現実を維持する力を持つミズーリオは思い当たることがあった。
「まさか、物語の中心人物の命が宝玉」
「ソノ通リナノダ。因ミニ、コノ物語ノ中心人物ハ全部デ三人イル」
「中心人物、つまり主人公の命を奪うなんて、物語が変わるぞ!1人目がいなくなった時点で2人目と3人目が存在しない可能性もある」
「ソンナコトニナッタラ物語上モ君ニトッテモ問題ガアル。デハ、ドウスレバイイカ考エタマエ」
ミズーリオは閻魔王としての仕事に戻った。死後の世界では欲望がないので食べることも寝ることも必要なかった。その為、仕事をし続けることができた。
「それにしても、次から次へと死人が来るな」
ミズーリオは裁きをすることで一杯だった。(これでは宝玉を集めることができない)そう思ったとき、泰山府君が言った。
「何か他になさりたいのでしたら、私が代理になりましょう」
「いいのか?」
「はい。お任せください」
「あ、そう」
閻魔王の席に泰山府君が座り、仕事を始めた。ミズーリオは思った。(代理できるなら私はいらないのでは?それより、これで宝玉を集められる。しかし、どうやって・・・)ミズーリオは奥の部屋に行った。そこで、生き物と目が合った。
「ガルルルル」
「君はケルベロスだな。私の故郷ウルトラにいるのと同じだ」
ミズーリオが巨大化し、ケルベロスの頭を撫でた。
「自在に巨大化できる。これも故郷にいる時と同じだ」
「キュー」
「よしよし」
尻尾を振るケルベロスの前を通り、現世と繋がる扉の前に立った。
「じゃあ会いに行くとするか。1人目の主人公に」
ミズーリオは扉を開けた。
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