27章 Get Up Stand Up
6月の第2金曜日、例の総長の飲み会向かう途中だった。雪が振っていた。今月で2回目だ。最初皆は、また何処かで水爆が破裂して死の灰が振ってきたのかと思って家から出るのを躊躇った。だが、ただの雪だと知って安心したと同時に6月に雪が降るなんてやっぱり元の世界には戻れないのではないかと不安になった。5月の終わりの週に入ってから急に寒くなった。気温が10度を下回る日が続いた。冬に違いない。雪は3センチは積もっている。以前から世界中で叫ばれていた気候変動に原水爆が重なり気候がおかしくなったのかも知れない。ショルダーバックは重たかった。こんなにバッグの中に入れる必要があっただろうかと後悔した。
イシカワはキタヤマ隊長の遺品からもらったM65フード付きフィールドジャケットを着て自転車を漕いだ。隊長のM65フィールドジャケットは少しサイズが大きかったが、その御蔭で助かった。
総長の豪邸に付くと、イシカワはSwatchの腕時計を見た。10分遅刻していた。
アサルトライフルを持った警備兵が、イシカワ軍曹に対して敬礼をして門を開いた。執事のスドウが立っていた。
「すみません。遅刻して。自転車のチェーンにヒモのキレ端が絡まって遅刻しました」というと手袋を外して、自転車の黒い油の付着した両手をスドウに見せた。
「それは大変でしたね。なにか事故に巻き込まれたのかと心配していたところでした。さあ、中に入ってください」というとスドウは屋敷にイシカワを招きいた
「そうだ、トイレを貸してくれませんか?手が油まみれで恥ずかしいですから」
「わかりました。どうぞあちらへ」
イシカワはトイレに行くと手を洗った。石鹸でゴシゴシと。黒い油が取れるまで。油を流し終えると顔を洗い終えると手を念入りに拭いた。トイレを出るとスドウが待っていた。時計を見る21時18分「では宴会場へ」
「いいんです。いくら広いといっても、一人で行けますよ。もう慣れましたから」
「そうですか。では」と言ってスドウは執事室へと帰っていった。
イシカワは宴会場の引き戸で深呼吸した。そして、戸を閉めて耳栓をした。時計を見る21時19分。
「すみません。遅れてしまって。途中で自転車が壊れまして修理して遅れました」とイシカワがいうと。
「おう、心配したぞ。事故でも遭ったのかと思ったぞ。さあ、入りなさい」と総長がいうので、イシカワはポケットの中に隠してあったモノのピンを引き抜いて丸い手のひらサイズの円形のプラスチックを宴会場に投げ入れて戸を閉めた。
それは、1ヶ月半前のことだった。アキモトとアキモトの母を殺し、総長とヨシダ村長に軍事基地を作らせる時から計画はスタートしていた。
イシカワは、ショルダーバッグを肩にかけてあの子供たちを逃したトンネルを使い入植者達の住居に侵入した。入植者達は驚いた。もしかしたらイシカワが彼らを殺しに来たのではと怖がった者までいた。
「皆さん落ち着いてください。決して危害は加えません」と言ってイシカワはTシャツを胸の辺りまでめくってその場で回って背中まで見せて武器を持っていないことをアピールした。そしてショルダーバッグ静かに床においた。「その、バッグの中に重要な物が入っています」と言って、その入植者に渡した。
「どこかの部屋で話をしたいと思います。元イシカワ部隊の面々と、あと弁護士のフジカワさんと話があります」
「なんの話しですか?」と入植者が聞くと、「あなた達の今後のことです。とても重要なことです。」とイシカワは答えた。
それは入植者用住居の一番奥に建てられた住居で会議が行われた。家族用の住居だったので10畳ほどの広さの部屋が2部屋あった。部屋に来たのはイシカワ部隊員達と。
久しぶりにゴトウ、サカモト、ナカジマ、オオツカ、ヒラノそして弁護士のフジカワに会った。イシカワが軍曹になってからは部隊を離れ警官が部隊長になっていた。
みんなそろそろ寝る時間だったらしい。眠そうだ。
「いったいなんですか?こんな夜中に」とゴトウがいった。
「まず、いい忘れた事があります。マキタ隊員達の脱出は成功しました。現在マレーシア政府に保護されています」
「ほんとうですか」というのはオオツカだった。息子が無事生還した。しかもここよりいいとされているマレーシアで。泣きながら喜んでいた。
「これはいいニュースですが、悪いニュースもあります。」
「悪いニュースとはなんですか?」とゴトウは疑い深そうな目をしてイシカワに言った。
「マレーシア軍の救助は来ないこと。それと、略奪者グループがネットワークを築き村を襲おうとしている事はご存知だと思います」
「ええ、アナタが村議会で言ってましたからね」
「アレは、嘘です」
「どうゆうことですか?」
イシカワは事情を説明した。略奪者グループはいるかもしれないが、略奪者グループがネットワークを築き村を狙っているという証拠が無い事。それと大島で戦闘があったということは嘘だという事、特殊部隊と略奪者グループと戦闘を繰り返しているフリをしている事を話した。
その場に居た皆が困惑した表情をしていた。無理もない。イシカワだって逆の立場だったら同じことを思うだろう。コイツは狂った陰謀論者だと。
「なんでそんな事を、つまり略奪者グループをでっち上げるする必要があるんですか?」とゴトウが言った。
「スケープゴートですよ。仮想敵です。外敵がいれば一致団結と高々に叫べば村の指揮も上がる。外からの恐怖に目を向ければ村の問題、つまり今の入植者の方々のに対する問題。最近入植者の方々に対しての扱いが酷くなっているでは?」
「確かに、私達入植者に対しての風当たりが強いです。でも、その証拠はあるんですか?本当に略奪者グループのネットワークがでっちあげだという証拠が?」
「これを聞いてください」というとイシカワはウォークマンを取り出し、再生ボタンを押した。
それは、総長と愉快な仲間達とヨシダ村長と警官達の会話だった。
内容は、略奪者グループネットワークの話題だった。そろそろ村民もその話題に飽きた時どうするかという議題だった。すると、ヨシダが「ネットワークの話題に飽きたら入植者にまた生贄にすればいい」と言っている内容だった。
「やっぱり、アイツラが裏で入植者狩りを先導していたのね」とゴトウは怒りに震えながら言った。
「実は、このネットワークを考案したのは私です」と言うと皆困惑した表情でイシカワを見た。
「あなたは一体何がしたいの?」とゴトウは言った。当然の事だ。自己矛盾を言っているのだから。
「私の考えでは、外に仮想敵がいる間がチャンスです。その間にあなた達に協力して欲しい事があります」
「言っている意味がわからないんですが」
「つまり、あなた達に少しだけ我慢していただいてクーデターを起こして欲しいのです」
「どうやって、クーデターを起こせというんですか?」
「まずは武器庫を襲うんです。最近6箇所に分散してあった武器庫を1箇所にまとめたのをご存知ですよね?」
「知ってますよ。でも、扉が2つに鍵が2つ必要ですよ」
「先程、ショルダーバッグを渡したと思います。それを持ってきてくれませんか?」
ショルダーバッグが部屋に届くと、イシカワは怪しまれないようにする為、ゴトウに頼みショルダーバッグに入っている物を出して貰うことにした。彼女はショルダーバッグの中身を見ると、布に包まれた縦5センチ横10センチ幅5センチの棒状の物が4つはいっていた。
「気おつけて扱ってくださいね。割れ物なので」
ゴトウはぐるぐる巻きになっている布を慎重に解くと、中から白い細長い陶器が出てきた。
「なんです?これは?」
「武器庫の鍵の形です。これで合鍵が作れます。陶芸用の粘度で形を取り焼いた物です。入植者の中に合鍵を作れる技術がある方が居るはずで。その人に作ってもらってください。それと白い陶器の方が2つ1組で1番目扉の鍵、黒い方は2番目の扉の鍵です」
皆困り果てた顔をしていた。どうするか悩んでいるのだろう。もし失敗したら虐殺されかれない。それに、今はいいがこのままエスカレートして奴隷のように扱われ死んでいくか。
「もちろん決めるのはあなた達です」
「それで、クーデターを成功させたらどうするつもりですか?」
「まず、基地を制圧したら無線とスピーカーで村の警備兵に武装解除を呼びかけてください。それから、大型の船を作ってください。クリハタ率いる科学技術省がいれば出来るはずです。大型船が出来るまでの間は、フジカワさん。アナタは離婚弁護士とはいえ法律の専門家です。アナタに法律に基づいた法の当地と、ゴトウさんにはこの村のリーダを勤めてください」ゴトウやその他の入植者は悩んでいる様子だった。何かの罠かもしれない。きっとそう思っているに違いない。自分が逆の立場だったら同じことを思うだろう。すると、ゴトウが沈黙を破った。
「やるわ。私一人でも」と言うとその場にいた全員の手をあげた。
「あと、これだけは守ってください。銃撃してくる村民以外は絶対に村民達を殺さないでください。内戦にはしたくないのです。これだけはお願いします」とイシカワは頭を下げた。
「わかりました。約束します」とゴトウは言った。
「どうやって総長達を殺すんだ?総長達の警備は相当のプロだと聞いてる」とサカモト。
「それなら、私に任せてください。考えがあります。もし、成功したら30分以内に照明弾を撃ちます。そしたら、ゴトウさん達も基地を制圧したサインとして照明弾をあげてください。そして屋敷に乗り込んでください。それと、30分過ぎて照明弾が上がらなくても屋敷に踏み込んでください。中には関係のない料理人や女性がいます。その人達を絶対に撃たないと約束してください。それから、勝手ながら、私はこの作戦が成功しようと失敗しようと終わったらこの村を出るつもりでいます。どうかご理解ください」
「わかりました。でも、なんで仮にクーデター成功したとして村を出るんですか?」とゴトウに聞かれた時、なんて言っていいか分からなかった。
「早く、この呪われた村から出たいからです」と答えたが、イシカワにも何故村を出なくちゃいけないのか本当の所は分からなかった。
「それと、私の家にキコという猫を飼っています。キコの面倒を見てください。お願いします」
「わかりました。私は猫が大好きです。大事に飼います」
それから準備が始まった。予備の鍵を作るのは簡単だった。入植者に旋盤をしていた者いたからだ。陶器の形から無事にスペアキーを作ることに成功した。。
イシカワは、その鍵が使えるか試しに見張りが居ない時に使ってみると見事に扉が開いた。成功だ。スグにゴトウに伝えると、彼女も喜んだ様子だった。
夜の基地には常に10人の村民からなる警備兵が巡回している。なので一番警備が手薄の北の塀に縄ハシゴを使い侵入してしてもらうことにした。
マキタの逃走劇以来銃の管理にはうるさくなっている。だが、銃のチェックは1日に1回しか行わないので、イシカワが基地を出る時にSig320のサプレッサーを装着したピストルをご信用に一丁ゴトウに渡すことにした。それと、弓矢も使える。他の者は銃を手に入れるまで弓矢で頑張ってもらうことにした。
イシカワ軍曹その間、基地内で射撃練習を指揮していた。
元イシカワ部隊の面々に練習と称して銃の扱い方を徹底的に指導した。
兵士がピストルの練習をしているのを見つければ近づき。「違う、貸してみなさい」と言って銃を取り上げてピストルの練習をした。両手で撃ったり片手で撃ったり。
それから、図書館に行き農作物や小説を読むフリをして、海図の読み解き方を勉強した。
何より船の運転の実戦は愉快の仲間達とヨシダとの釣りで何度もやった。これで船の操縦はマスターした。
そして無線でマレーシア軍艦の位置を毎日確認した。現在、方舟プロジェクトは第2陣が出向し予定では決行日に予定だと一番日本に近づく。これは願ってもいないチャンスだ。
武器は多いほうがいい。イシカワはスタングレネードを毎週2つポケットに入れて持ち帰った。アサルトライフルやピストルや手榴弾やC4プラスチック爆弾に比べれば、スタングレネード管理は雑だった。大量にあるし、それに小さくて数えるのが面倒くさいからだ。結局スタングレネードを10個手に入れた。それと、ギバからもらったショットガンはアキモトの家にまだあった。アキモトの家はあの事件以来荒れ放題で誰も寄り付かなかった。イシカワはアキモトの家に忍び込み、ショットガンの隠し場所、彼の部屋の天井裏に隠してあったショットガンを持ち帰った。父の自称工場でノコギリを使って銃身とストックをきり詰めてショルダーバックに入るようにした。ショットガンの弾は50発。照明弾が5発それと防弾ベストこれでどうにかなるだろう。
そして決行日。とても寒かった武器の管理をする警備兵挨拶をし、武器を戻すフリをしてVP9を背中のズボンとの間に2丁と弾丸入りのマガジンを8個をそれとゴトウに渡す用のSigP320ピストルとサプレッサー、Sigピストル用予備のマガジンを3個入れた。M65フィールドジャケットの内側にいれた。
「お疲れ様!」というと警備兵は「お疲れ様です」と答えた。
そして自転車に乗った。
耳栓をしていてもあの音は頭にキーンと突き刺さってくる。念の為もう一度戸をひいいてもう一個スタングレネードを放り込み、戸を閉めた。しばらくしてまた、あのキーンという音が聴こえた。
よし、始めよう。イシカワ冷静だった。きっと、何度も人を殺してきたからだろう。
戸を開いて中を見てみると、いつもの、面々だ。総長と愉快な仲間達、警官2人、議員達、新しい遠征部隊の隊長、それとクリハタと、ヨシダ。皆頭を抱えながら吐き汚物を畳や、美味しそうだったステーキやグラタンの上に吐いていた。四隅を見ると、いつもあんなに強そうだった黒スーツの男たちが、皆項垂れていて弱々しく見えた。
まずは銃を持った一番強そうな奴からだ。
イシカワは、ショットガンで一番近くにいるHK MP7サブマシンガンを持った黒スーツの男の頭を撃った。頭が弾け飛んで壁が真っ赤に染めた。それから左側に居た黒スーツの男の頭目掛けて引き金を引いた。さっきの男に比べて距離が遠かったせいか、狙いがズレたせいか、彼の顔の半分が吹き飛んだ。反対側の両隅を見ると項垂れていた黒スーツの男がプルプル震えながらこちらを見ていた。距離にして30メートル。ショットガンの弾を装填している暇もないし、防弾チョッキを着ている。撃っても殺せない。一番近くに居た頭を吹き飛ばしたスーツの男のMP7サブマシンガンを奪い、彼に向かってフルオートで連射した。その内の一発が頭に命中したらしく頭から血を流して倒れた。あと、もうひとり右奥にいる黒スーツの男。頭を吹き飛ばした男のスーツからはみ出たマガジンを拝借してマガジンを交換し左端の男に向かって連射した。男は動かなくなった。多分死んだんだろう。
MP7サブマシンガンを床に捨てると、ソードオフ・ショットガンのリリースボタンを押した。空薬莢が2つ飛び出した。ショルダーバックから散弾2発を取り出し装填すると総長の背中を撃った。散弾が貫通し腹から臓器が飛び出てテーブルにぶち撒けた。総長はジタバタとして畳を血で汚したが楽にするのにはまだ早い。それから、背中に隠していたVP9ピストルで、総長の仲間達を順番に腹に2発、胸に1発撃って行った。途中で弾が切れたので、VP9ピストルを畳に放り投げもう一丁隠してあったHK VP9ピストルで殺して回った。よく見ると警官はホルスターに拳銃が入っていたが、パニックを起こしているのであろう自分が銃を持っている事を忘れているようだった。もちろん、2人とも胸に2発、頭に1発撃って行った。遠征部隊の隊長はどうしようか迷ったが、ついでに頭を撃った。10人の議員も同じだ。順番にVP9とソードオフ・ショットガンで撃ち殺していった。そしてクリハタ。彼はこれからの村にとって重要な役目があるのでVP9ピストルで足を撃った。クリハタは泣き叫んだ。そして、ヨシダ村長に目を移した。ヨシダは笑っていた。
「よくやった。これでコイツラの接待をしなくて済むぞ。イシカワくん本当によくやった。君をこの村のNo.2、いやNo.1にしてやるぞ」
お断りだ。イシカワにはそれがヨシダの本心なのか、それとも怖くて自分だけは助かろうとして言っているのか分からなかった。だが、急に思い出し感情的になった。コイツが、総長に操られていたとしても、コイツが村民を先導した。コイツがアキモトを殺すように先導した。普通に殺すわけにはいかない。まず、右と左の膝を撃った。右の膝は砕けて皮一枚の状態でどうにか繋がっている状態だった。そのあと、肩の関節を両方撃った。右肩が吹き飛んだ。よしトドメを刺そうと銃口をヨシダの額に付けた「ジュ」と焼ける音がした引き金を引いても何も起こらない。ピストルのスライドが後退したままだ。スライドが後退しホールドオープンしている。弾切れだ。マガジンをチェンジしてVP9ピストル持って彼に向けた。ヨシダはとても怯えた表情をしていた。それに口の周りは汚物まみれだ。額には丸い銃口の火傷の跡。なんだか楽に殺すの嫌になった。左手で銃口をヨシダのお腹に向けて3発撃ち込んだ。これで、ゆっくりとジワジワと死んで行くだろう。
後ろから銃声がして背中に強い衝撃と痛みが走った。後ろを振り向くと、執事のスドウがグロック19ピストルを構えていた。イシカワは彼を殺したくなかった。とても親切に接してくれたからだ。でも仕方ない。VP9ピストルを両手に持ってスドウに向かって引き金を引いた3発は撃ち込んだが、倒れない。きっと防弾ベストを着ているのだろう。なので、右足の膝に狙いを定めて引き金を引いた。スドウは前のめりなって倒れたので、頭に狙いを定めて引き金を引いた。スドウは動かなくなった。
総長もとっくに死んでいた動かなくなっていた。腸をぶち撒けて生きているはずがない。
これで終わりじゃない。まだ少なくても4人はアサルトライフルを持った警備の奴がいる。畳に放おったもう一つのVP9ピストルを拾い上げてマガジンを交換し、ズボンの隙間に入れて、ソードオフ・ショットガンに弾を入れ、黒スーツの持っていたMP7サブマシンガンと予備のマガジンを4つ拝借した。クリハタは何やら喚いている。耳栓越しなので何を言っているか最初はよく分からなかったが、「痛いよ」と泣き叫んでいた。イシカワはクリハタを見て「すまん。これも村のためだ」と言って頭を撫でてやった。宴会場から外に出るためにはどうしたらいいだろうか?そこまでイシカワは考えていなかった。
部屋の右の中央の壁に年代物の楕円形のフレームの鏡が在るることに気づいた。鏡には血まみれの顔をしたイシカワの顔が写っていた。まるで死体の様に血糊がべったり付いていた。これは使える。鏡を壁から外し襖をゆっくり引いて廊下様子を見ると、2人の男がHK416アサルトライフルでこちらを狙っているのが分かった。しかも、一人の方は下部アタッチメント式のグレネードランチャが着いていた。これはマズイ。しばらく考えた。グレネードランチャを使われたら勝ち目がない。そうだ、スタングレネードを使おう。
彼はバックから2つスタングレネードを取り出しピンを引っこ抜いて廊下に投げて耳栓をしているのも忘れて耳お抑えた。「ボン」と振動が柱越しに伝わってきた。鏡で廊下を確認すると倒れてのたうち回っている。チャンスだ。MP7サブマシンガンを彼らに向かって連射した。マガジンが空になり、交換して再装填。一人は血を流しグレネードランチャを持っている男は動いていなかったが、もうひとり男は弾丸が首に着弾したらしく左手で出血を止めようと必死だった。楽にしてやろう。今度はフルオートではなくセミオート(単発)しっかり狙いを定めて首元を撃った。出血を抑えていた左手は弾け飛び彼も動かなくなった。あと最低でも2人はアサルトライフルを持っているやつが居る。
イシカワは鏡は死角を見るのに使えると思い、鏡を割った。ちょうどいい大きさの鏡の破片を手に取り廊下を確認する。誰も、いない。アサルトライフルを持った死体に近づき、普段使い慣れているHK416アサルトライフルにグレネードランチャーの付いている方は手にとった。装備品からマガジンを6個とグレネードランチャーの弾を4発、それに手榴弾を3個拝借しショルダーバッグにいれた。慎重に銃を構えながら玄関まで廊下を歩いた。HK416アサルトライフルのセレクターは3バーストにした。フルオートだと弾を無駄にする。単発だと相手が死なない場合があるからだ。やっと、玄関の階段下にたどり着いた。鏡で階段の上を確認する。誰もいなそうだ。ミキの事を急に思い出した。最後にお別れを言いたくなった。だが、今の自分の姿を見たら怖がるに違いない。そう思ってやめることにした。ゆっくりと玄関に行き扉をゆっくり開くと銃声と共に扉の端っこに着弾して材質の木が弾け飛んだ。クソ、外にいたのか。弾丸が通った穴から鏡で外を確認する。11時の方向と7時の方向にアサルトライフルを持った警備兵が物陰に隠れてこちらを狙っている。イシカワはどうするべきか考えた。スタングレネードを使おうと思ったが室外でこれを使えるのだろうか。そこまではキタヤマ隊長も教えてくれなかった。そうだ、さっき拝借した手榴弾を使おう。少なくても一人は確実に瀕死の状態に出来る。手榴弾のピンを抜いて扉を開けて11時の方向に投げ込んだ。すると3秒もしない間に周りは真っ白な雪の上を真っ赤に染めた。今だ。イシカワはHK416アサルトライフルのセレクターをフルオートにして扉を開き7時の方向にいる警備兵に撃ち続けた。だが、彼も防弾ベストを着ていたらしくイシカワに発砲してきた。警備兵の撃った弾丸が彼の右腹にに着弾した。一瞬便を漏らしそうになった。再び物陰に隠れた。そうだ、グレネードランチャーが付いている。グレネードランチャー榴弾を装填して7時の方向に撃ち込んだ。大きな爆発音の後、警備兵の上半身が破裂して肉片と血が周りを血まみれにした。
これで、多分終わりだ。後は照明弾を撃って彼女たちに終わったことを告げてこの村を出よう。ショルダーバッグにから信号弾を取り出し真上に向けて撃った。ソレはまるで花火のようにきれいに見えたが、照明弾がオチてくるに従って自分がやった事が視覚に飛び込んできた。7時の方向の上半身が吹き飛んだ警備兵の死体、11時の方向の肉片と化した警備兵死体。何より怖かったのは、ソレを見て何も感じなくなっていた事だ。日常の一部だと。
すると、基地の方角からも照明弾が上がった。どうやら成功したようだ。もう、この村に用はない。
イシカワはマウンテンバイクに乗って漁港へと向かった。10分の道のり。見慣れた風景。もうここには多分戻ってこれないのに悲しくも嬉しくもなかった。
漁港に付くと、沿岸警備隊の連中が大パニックだった。
「軍曹殿。どうなっているんですか?さっき無線連絡で武装解除て言ってましたどういう意味ですか?」とイシカワは聞かれたので「新体制になったんだよ」と答えた。
「どうゆうことですか?」
「新しい時代の到来さ。総長も村長も死んだ。略奪者グループのネットワークなんて存在しなかった。村民も入植者も関係なく、君たちは銃を捨て南に向かうんだ。マレーシアに」
「マレーシアにですか?」
「そう、マレーシアだ。マレーシアは核攻撃の被害が少ないらしい。それで皆で移住するのさ。後のことはゴトウ軍曹が引き継ぐ。きっとあなた達の船の知識が技術が役にたつ」
「イシカワ軍曹はどうするんですか?」
「もう、僕はもう軍曹じゃないんだ。先にマレーシアに行くことにするよ」
イシカワはアキモトの遺留品の漁船に乗って出発した。今日はとても寒い。アキモトとエリカとクリハタとリー、それにアズサと一緒に新天地のマレーシアに行ければどんなに良かったかを妄想した。きっと、楽しかったに違いない。引っ越しをする時と同じようにウキウキするに違いと。
沖に出て1時間くらい経った頃の事だった。船を操縦していると、後ろから光るものがこちらに向かってくるのが分かった。沿岸警備隊のやつだろうか?武装解除と言ったのに。それとも、自分の発言を聞いた隊員が一緒に付いてきたのか。と考えていると銃声と共に操縦席のガラスが割れた。何だいったい。誰だ。早くも沿岸警備隊がクーデターを起こしたというのか。
後ろの船籍は相変わらずフルオートでこちら向かって銃を撃ってくる。イシカワは操縦席の下に伏せた。しばらくするとそのボートが漁船に追突してきた。そのボートの操縦席に乗っていたのはキカワだった。まるで怒り狂った鬼のような目をしてMP7サブマシンガンの銃口をイシカワに向けて引き金を引いた右に手に痛みが走った。撃たれた。このままだと死ぬ。と思った。だがキカワのHK MP7サブマシンガンは弾切れのようだ。イシカワは右手を撃たれたことも忘れて、右手でズボンの隙間に挟んであったVP9ピストルを抜きキカワに向かって引き金を引き続けた気づくと弾が無くなるまで15発は撃ち込んだ。
これで終わりかと思うとキカワは血まみれなのにもかかわらず、立ち上がってMP7サブマシンガンを持ってマガジンチェンジをしようとしていた。
イシカワはその隙をついて船を動かした。なんだアイツは15発、いや少なくても血まみれになるまで弾丸を浴びたのに立ち上がってマガジンチェンジをするなんて。どうなっているんだ?防弾ベストを着ていたら話は別だが血まみれじゃないか。すると、キカワはまたボート動かしイシカワの漁船に近づくとサブマシンガンを連射してきた。
イシカワは漁船を止めた。HK416アサルトライフルを打ち込めばなら死ぬかも知れないとキカワのボートに向かてフルオートで応戦するが、全くボートが止まる気配はない。そうだ、グレネードランチャーに榴弾を込めた。シッカリとキカワのボートが近づくまで待った。射程距離に入ってきた。引き金を引いた。外れた。キカワのボートの右の方向に着弾して大きな水しぶきが上がった。後グレネード榴弾は1発しか残っていない。イシカワは焦った。グレネードランチャーにグレネード榴弾を入れる手が震えてなかなか入らない。イシカワは深呼吸をした。榴弾をグレネードランチャーにいれ、キタヤマ隊長に教わったように冷静になって狙いを定め引き金を引いた。するとキカワが乗っていたボートの先端に着弾し破裂し爆発してボートがひっくり返った。
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