8章 ブロックパーティーの変更

9月になった。村議会は週3回から1回に変更になった。毎週金曜日の夜になった。村民は10人の高校生と、子供、それにエンジニアと教師が来た事を歓迎した。

 

 それから遠征調達部隊が見つけた200人の老若男女が村の仲間に加わった。コンビニ店員、大学生、溶接士、大工、建築家、弁護士、歯医者、精神科医、メガネ屋、美容師、車の整備士、プログラマー、花屋、フィットネスジムのトレーナー、ヨガの先生、ゲイカップルなど様々だ。

 中には東京の府中から歩いて村まで来た者もいた。その男の話では地図を見た時に一番、爆心地東京から一番遠いところなら誰かいるかも知れないと考えたらしい。後遺症の残るような怪我をしていたものもいたが、村民はみんな大歓迎した

 移住者用の建物も、最初は1棟だったが、増えていくに従って建築ラッシュとなった。今では10棟になった。

 キタヤマ隊長率いるギバ、マキタ、カトウ、ササキそしてイシカワ達は、住民に15歳から70歳の性別問わずアサルトライフルの使い方、拳銃の使い方、銃を分解し手入れの仕方、銃の構え方、撃つ時以外は銃口を上か下に向ける事、撃つ時は以外は何があっても引き金に指で触れない事、そして的に弾を当てるコツを教えた。

 キタヤマ隊長曰く「フルオート(連射)と3点バースト(3連射)は相手が100メートル以内にいるときだけ、100メートル以上はセミオート(単発)で撃て。それと室内では絶対にフルオートで撃つな、壁に弾丸が跳ね返って自分や仲間に当たる可能性があるからだ」とみんなに教えた。

 それから、相手が銃以外の武器、バットや鉄パイプや斧や刀を持っていた場合は威嚇射撃をしろ!それでも襲ってきた場合は足を狙って撃て!もし相手が銃を持っていて銃口を向けようとしたら容赦なく撃てとキタヤマ隊長低い声で脅すかのように言った。

 村民達は初めて銃を撃って感動するものや怖がるもの様々だった。アサルトライフルなら上手だがピストル射撃が下手なもの、その逆もいた。特に射撃が上手な物には倍率の高いスコープ付きのHK417バトルライフルを渡した。アサルトライフルに比べて威力も有り反動も強いが射程が長い。普通軍隊ではマークスマン、日本語で選抜狙撃手と言ってアサルトライフルでは射程が届かない距離にいる敵を攻撃する時に必要な人材らしい。

 それと、マキタさんのHK416にグレネードランチャーを取り付けた。グレネードランチャーとは弾頭に爆弾が仕込んであり、発射し着弾すると手榴弾並の威力の爆発を起こす銃だ。小さなミサイルみたいな物だ。なぜ、彼女が選ばれたかというと、射撃が上手いし冷静沈着だからだ。下手にグレネードランチャーを使って近くにいる敵に使ったら自分たちも危険な目に合う可能性があるからだそうだ。確かに、マキタさんなら冷静に判断してグレネードランチャーを使いこなせるだろう。


 イシカワとその仲間たちの溜まり場は、イシカワの部屋から、アキモトの部屋へと変わった。彼のレコードコレクションが目当てだ。というのも、デジタル機器が全て壊れた為、アナログで簡単な構造のレコードプレーヤーは壊れなかったからだ。しかも、ターンテーブルが2つもある。彼のDJテクニックは大したことはなかったが、音楽が聴けるだけましだ。カセットテープはデータは消えたが吹き込むのに使えた。音楽だけは文明を保っていた。

 それと、仲間が加わった。ササキだ。ササキも大量にレコードを所有しており、ジャンルは、ロックやファンクとヒップホップとテクノのレコード持ち寄ってはみんなでマリファナを吸いながら遠征先で拾ってきたボードゲームで遊ぶのが休日の恒例に行事になった。

 村中でマリファナは暗黙の了解として、みんなが吸うようになった。

 もちろん、外で吸うと怒る老人、特に総長含め総長と愉快な仲間たちは怒った。

 警官も吸っているのを見ると注意してきた。お前らの仲間2人も吸ってたけどなと、言いたくなったがイシカワは心の中に留めておくことにした。

 アキモトの部屋は両親の部屋から離れにあった事もあり音楽の音量がウルサイと怒られることも無かった。

 最近は遠征先で生存者を見ることが少ない。なので、食料や薬品はもちろん、それと、機械の部品。クリハタ主導のもと科学技術省なるものがこの村に出来たので部品の注文が多くなった。他には嗜好品を持って帰る。服やスニーカーや腕時計や化粧品や本やレコードやボードゲーム、ガムにタバコなどだ。

 キタヤマ隊長も「嗜好品が在っての文明や文化だ」と言っていてた。確かにその通りだ。 

 村民達は嗜好品が届くとそれは喜んだ。子供は特に喜んだのでイシカワも仕事にやりがいを感じるようになった。

 ササキが持ち込んだケンドリック・ラマーのレコードを聴きながら、遠征先で拾ってきた「レジスタンス」という、ボードゲームをやって過ごしながら近況を話し合った。

 クリハタは最近、村に入植してきたエンジニアのハヤシと車の整備士キモトと共にバイオ燃料で発電機を動かすことに成功した。その時は村中がお祭り騒ぎになった。村の灯油が切れかけていたからだ。次は、車と船にバイオ燃料を使えるようにするの事が課題らしい。

 アキモトは最近、海で溺れた事のトラウマが克服したようだ。父から船の操縦方法を教わって今では一人で運転できるようになったらしい。それに、彼には彼女が出来た。相手はヤマザキ・エリカ。イシカワが遠征6回目の時、戸塚で彼女を見つけた。イシカワ達を見て相当怖かったらしく(ライフル持って黄色い防護服来てれば怖くはなるても不思議ではない)隠れ家に浸かっていた倒壊したホテルの中に逃げてしまった所をマキタさんが説得して連れてきたのだ。背が低く、キレイな顔立ちをした子だったのでアキモトと恋人関係になったことを少しムカついたくらいだった。

 ササキはシミズからLSDを貰ったらしいが体に合わなくて吐いたらしい。それにクスリが効きすぎて陶芸どころでは無かったと言っていた。それを見た両親にすごく怒られたそうだ。「LSDとヘロインはヤバイから手を出すな」と両親が言っていた。両親は昔やった経験があるのか?と思うくらいまるで実体験を話すように言ったらしい。

 リーはというと、イシカワの農家で仕事を終えると、クリハタの率いる科学技術省で手伝いをしている。仕事やクリハタの話をしてる時は楽しく話しているのだが、どこか表情が変だ。イシカワは何かあったのか?と心配になった。無理もない故郷がもう消滅してるかも知れないし、それにどうにかこの村は文明を保っているがいつ崩れ去るかは分からない。それに放射能の恐怖。村に元々住んでいた物が少しずつじわじわと死んでいっている。恐ろしいことだ。イシカワもそう思っている。

 話が山の頂上にに完成した壁の話になった例の「ヨシダ計画」だ。

「アイツ、ヨシダは最悪だよ。あの壁とトンネルの扉はカトウ君の提案で、彼が議会で発表するはずだった物なんだ。なのにアイツ、横取りしたんだぜ。自分の人気取りの為に。だからアイツには気をつけたほうがいい」

「そうなの?ヨシダさんは、僕らに優しく接してくれてるよ」とクリハタが言ったのでイシカワと驚いた。

「まあ、ヨシダはそうゆう奴だから気をつけろよ。平気で人を利用し支配するタイプだ」

「大丈夫だよ。むしろ俺がヨシダさんを利用してるくらいさ」

 クリハタはヨシダに取り込まれるのではないかと、イシカワは不安になったが、彼は志が高く芯の有る奴だ。大丈夫だろう。

 ゲームも終わり、いい時間になった。次の日10回目の遠征があるのでササキとイシカワは先に帰ることにした。

 すると、アキモトが思い出したようにカセットテープをくれた。

「この前、頼まれたやつ入れておいたぜ!」

 イシカワは父の自称工場でカセットテープのソニーのウォークマンを見つけたのだ。しかも録音機能付き。どうやら無事らしく、ちゃんと動く。父はもう使わないというのでテープももらって、アキモトに頼んだ曲をレコードから入れてもらったのだ。

「おう、ありがとう!」

「いいんだ。それで、少し頼みがあるんだけどさ、もし、ヘアカラーリング剤か、マニュキュアを見つけたら俺にくれないか?彼女にプレゼントしたくてさ」

「OK、約束は出来なけど有ったらお前にやるよ」

そして、イシカワとササキはアキモトの部屋を後にした。


 村民40人死亡。

 入植者200名。

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