6章 遠征調達部隊
当日、朝6時、調達部隊に対してのセレモニーが行われた。
トンネルの横に仮設の壇上が設置されていて、トンネルの上に横断幕で「言ってらっしゃいませ、そして必ず無事にお帰りなさいませ!」と大きく書いてあった。アホらしいとイシカワは思った。横断幕を貼るにしても、もっと良い言葉が思いつかなかったのか?と呆れた。
村民たちが離れた所からキタヤマ隊長率いるマウンテンバイクに乗った20人調達部隊を眺めていた。「頑張れ!」と声援をくれたがうるさいとしかイシカワは思わなかった。
そしてセレモニーは例のクソでシバマラのファックな敬愛すべきキシベ村長のありがたすぎて眠くなるようなスピーチで始まり、10人の議員の素晴らしいく、いや醜悪なスピーチがダラダラと続いて幕をおろした。時計を見るともう8時半だった。イシカワは心底呆れた。テンプレートのように「みなさん、村の為に頑張ってくだし」と言っていた。イシカワは「だったらお前らが行け」と思ったが大人なので叫びたくなる気持ちを胸に秘めた。
「よし、行くぞ!」とキタヤマ隊長の声に従って16人はトンネルに飛び込んだ。トンネルを抜けるとそこは、殆どの木々が焦げて爆風ですべて同じ方向南を向いて倒れていた。イシカワ後ろを振り返った。原水爆の衝撃でそれまで木や土で覆われていた山の壁面の木や土が吹き飛んだのだろう。黒く焦げたの岩肌がむき出しになっていた。この山がなければ本当に村の人々はみんな死んでいたと思うとゾッとした。それと同時に、いくら原水爆でも自然を完璧には駆逐できないと言う考えが頭の中をよぎった。そう思うと、なんだか、希望が湧いてきた。
最初の目的地である、隣の三浦市のマヤケ町にある自衛隊マヤケ駐屯地まで約20キロ、自転車で約2時間。道なりに行けば着く。周りに点々と民家が見えるがすべて同じ方角へ倒壊している。もしかしたら倒壊した黒焦げた建物の中にまだ生存者がいるかも知れないと思ったが、今の自分達に出来ることはない。とてもやりきれない想いを抱えながら自転車のペダルを漕いだ。
一番先頭を走るのはキタヤマ隊長。初老に近づいているのに全く気を緩めることなく自転車を漕いでいる。その次はギバさん。ギバさんは水平二連式のショットガンと弓を背負って走っている。あの銃は重たそうだし、しかも散弾銃の弾丸ベルトも右から左左から右にへと2つもつけている。そうとう体力がある人だと思った。
それに、3番手のマキタ。フリークライミングをやってるだけあり、一定のスピードを落とさない。その次が一番若いカトウくん、そしてイシカワだ。後に5人が続く。一番最後は最高齢のワタナベさん。やはりどんなに若く見えても体力は年相応らしい。なんで、彼を入れたのか?クジとはいえ酷くないかと思った。
途中、何度も死体を見つけた。どろどろに、ゴムのように溶けた遺体も複数と村に降ってきた原型を留めない死体。だが、村で50体は死体を処理したので見慣れてしまったのか何も感じなくなっていた。
2時間も漕いだ時の事だった。マヤケ町が見えてきたが以前の面影はなくすべて焼け野原と化していた。イシカワはリーとよく一緒に行った家系ラーメンが瓦礫の山になっているのを見てショックだった。あそこは本当にうまいラーメンだった。店主はぶっきら棒で少し気難しい感じのオッサンだったが常連客だったので、いつもサービスでチャーシューを1枚余計に入れてくれた。あのオッサンとあのラーメンが食べられないと思うと悲しい気持ちになった。
マヤケ町の中心部に行けば行くほど道路に瓦礫が散乱していたので途中から自転車を降りて自転車を押して歩いた。ここも腐敗臭が酷い。相当の数の人間が瓦礫のしたで生き埋めになったに違いない。道路を瓦礫や、避けながらすすんだ。丸焦げの死体は腐敗していてお腹が破裂して臓器を路面に吐き出していた。キタヤマ隊長曰く、人の死体は腐敗が進むと、腸内にある菌が繁殖を続けガスを出しお腹が膨れ爆発し内蔵をぶちまける事があるそうだ。
本来ならマヤケ駐屯地までマヤケ町の端から歩いて10分もしない所に在るのに30分はかかった。
マヤケ駐屯地ようやくついた。絶句した。所々5メートルほどのクレーター付いていた。
キタヤマ隊長曰く、核ミサイルではないが、恐らく相互確証破壊システムの際には違う種類の威力のデカイミサイルを各基地に打ち込むようにセットしたんだろうとの事だった。
キタヤマ隊長の予測は当たっていた。マヤケ駐屯地の奥の方に、倉庫であろう10メートルの高さ建物が表面は黒焦げているが壊れることなく残っている。外に止まっていた軍用トラックが何台も倒れたり、爆発した跡が在るものや、ひっくり返っているものまであった。
全員で倉庫の入り口の前に立った。入り口は大きな鉄の扉で10トントラックが余裕で入りそうな高さで、右端に人が出入りするようの小さな扉があった。
中に誰か避難してる物がいるかも知れないと思ったらしく、キタヤマ隊長は鉄扉を不規則なリズムで叩いた。おそらくモールス信号だろう。だが、反応は返ってこなかった。
キタヤマ隊長は右端の小さなドアノブを握った。鍵はかかっていないらしくドアが開いた。すると強烈は腐敗臭が中から漂って来た。キタヤマ隊長が入っていく。ギバ、マキタ、カトウ、そしてイシカワと15人の面々が続いた。
中には予測通り、大きな荷台にに緑色の帆の付いた軍用トラックが2台あった。そしてもう少し先に行くとキタヤマは立ち尽くして壁の方を見つめていた。イシカワはその視線の先を見ると、そこには死体があった。一人だけではない20人の遺体だ。みんな口に銃口を突っ込んで引き金を引いたようだ。中にはライフルで自分の頭を吹き飛ばしと思われる死体もあった。
「銃で自殺する時、銃口を口に突っ込んで脳幹を狙って引き金を引くと一番楽に死ねるらしいんだよ」とキタヤマは無表情で呟いた。
16人で倉庫を探し回った。すると保存食の缶詰が大量に見つかった。それとカトウが武器庫を見つけた。自衛隊が使うスコープ付きの20式アサルトライフルが200丁近く、拳銃VP9ピストルが200丁に弾丸の100発入りのケースが1000個近くあった。それに、弾倉、手榴弾が500個、C4プラスチック爆弾と起爆剤とリモコン500個。それに防弾ベスト200着と戦闘用のヘルメット200個。
キタヤマ隊長は毅然とした態度で食料と、武器をトラックの一台に入るだけ入れた。そして、一番疲れていそうなワタナベに車で村まで行き、何度でも往復してでも良いから個々にある食料と銃器を全て村に運ぶように命じた。残りの軍用トラックは横須賀に行く際に使うらしい。
「なんで、武器を全部持っていくんですか?」とイシカワが尋ねるた。
「もし、俺達より質の悪い奴らがここを見つけて銃器を持って振り回してみろ。ソレこそ大変なことになるぞ」と少し苛立った様子で言われた。確かに、これが自分たちより質の悪い奴らに略奪されたら事だ。
ワタナベさんが軍用トラックを運転して村へ戻るのを見届けてから、キタヤマ隊長は30分の休憩をみんなに命じた。
すると、隣に座っていたシミズさんが紙巻きタバコを吸い始めた。紙巻きタバコなんて珍しい。今は殆どが電子タバコなのに。いや、違う。タバコのニオイじゃないとイシカワは思ってシミズさんを見た。
「少年、お前も吸うか?マリファナ?」
「あの噂本当だったんですか?」
「そうだよ、凄い儲かるし、気分が楽になるよ」
「でも」イシカワは、どうしようか迷った。おそらく政府は消滅している。それに、アメリカやカナダやオランダでは合法だ。少しくらいならいいかも知れないが中毒になったらどうしようと思ったからだ。
「なんだ、お前東京に行っていたんだろ?マリファナも吸わないで帰ってきたのか?おまえ、東京で楽しい事しなかったから帰ってきたんじゃないか?」
すると、それを見ていたマキタが「私にもちょうだい」と言った。
聞くとマキタさんは海外に行く度にマリファナを吸っていたらしい。もちろん、合法の国でだけだ。国内で吸うのは初めてだとも言った。
イシカワは少し迷ったが、吸うことにした。すると気分が楽になった。でもこれヤバイんだよな?でも、国が消滅したし関係ないかと思った。
「どうだ、気持ちがおちつくだろ?吸いながらピンク・フロイドとかボブ・マーリィ聞くとかなり落ち着くんだ」
すると、それを見ていたキタヤマ隊長は、こちらに向かってきた。きっと怒るんだろうなと思っていた。
「シミズさん、私にもくれなませんか?」
いつも微笑んでいるミズさんも少し驚いた様子だった。
キタヤマ隊長は吸い始めると語りだした。
イラク駐屯地で部下や同僚たちが次々と自殺して逝った事。それを止められなかった自分への怒り。南スーダンに派兵された時の事、交戦して相手のテロリストを撃ってしまった事。相手の生死はわからないらしい。
イシカワ達はどうしていいか分からなかった。キタヤマ隊長が言っている事は恐らく全部国家の機密事項だった。そのつらい思いを誰にも吐き出すことなくこの人は耐えていたと思うとみんな胸が苦しくなった。
すると、シミズが急にキタヤマ隊長を抱きしめた。
「すまんな。俺が美女じゃなくてオッサンで。でも、抱きしめられると落ち着くだろ?隊長?」
キタヤマ隊長は涙を流しながら、シミズさんに何も言わずに会釈をした。
それからキタヤマ隊長が隊員に達に武器の説明をした。弓矢はもう使う必要が無さそうだ。皆弓をを捨て銃を触った。
「まず、この自衛隊の20式アサルトライフルだ。アサルトライフルというのは、普通のライフルより威力が低い物と考えればいい。普通のライフルより反動が少なくマシンガンのように連射が出来る。有効射程は300メートルから500メートル。銃本体にの上に低倍率のスコープが付いているだろう?覗く真ん中に十字がある。その十字の部分に弾丸が当たると思えばいい。簡単だろ?それとマガジンだ。弾倉とも言う。これに弾丸を詰める。このマガジンには30発入る。それから、このピストルはVP9。ドイツ製だ。マガジンに15発入る。射程距離は50メートルだが、だいたい10メートルくらいを目安に使うといい。狭い所や室内ではピストルの方がかさばらないからいいかもな。それと防弾ベストと戦闘用ヘルメットは絶対に外すなよ」
「そのヘルメット本当に意味あるんですか?軽いし、触り心地がプラスチックみたいだし」とカトウが言った。確かにこんなヘルメット使えるのかとイシカワも思った。触った感じ工事現場で使うようなヘルメットそっくりだったからだ。すると、キタヤマ隊長がヘルメットを30メートル先に置き、それをアサルトライフルで撃った。ヘルメットは30メートル先で弾けて3メートル先まで飛んだ。キタヤマ隊長はゆっくりヘルメットの所へ歩いていってヘルメットを持ち上げ皆に手招きして全員が隊長の近くに行った。
「どうだ、見てみろ。凹んでいるが貫通はしていないだろ?」と皆に見せた。確かヘルメットはに凹んで弾丸が突き刺さっていた。
「これはケブラーという素材で出来ている。防弾チョッキで使われている素材だ。しかもこのヘルメットは最新式だ。だが、ヘルメットをしていても撃たれると脳震盪を起こす。それにアサルトライフルの場合は10メートル以内で撃たれると貫通するから気をつけろ」とキタヤマ隊長は言った。気をつけろと言われてもそんな状況になったら、どうすることも出来ないじゃないかとイシカワは心の中で愚痴った。
それから、マガジンの交換方法、基本的な構え方に打ち方をキタヤマ隊長に教わった。20式アサルトライフルと、VP9ピストルの使い方をキタヤマ隊長の指導の下、基地を出る前に弾倉に入っている分の弾丸を撃って軽く練習した。
倉庫内に合った空のペットボトルを10メートル先に置いて的にした。ギバは猟銃の使い方を熟知しているため、銃の扱いは手慣れた物だった。それとマキタさんも見事に的に当てた。次に、カトウが上手だった。警官2組は思っていた以上に射的が下手くそだったのに驚いた。使っている銃の種類が違うから使いにくいと愚痴っていたのを聞いて笑いそうになった。
イシカワはと言うと的に当てる確率は半々だった。やはりゲームとは違う。あんなにFPSでアサルトライフルやピストルを使っていたのに。アサルトライフルの方が大きいく重たいせいか反動がピストルより軽く感じたが引き金を引く度に肩に軽い衝撃を受けた。30発も撃つと肩が痛くなった。一発撃つ度に大きな音と的の空のペットボトルが吹き飛ぶのを見てなんとも言えない爽快感と全能感を味わった。まるで銃が身体の一部の様に感じた。自転車を乗って走る時に感じる爽快感や、パソコンでネットサーフィンして興味のある知識を得る時の様な爽快感だ。だが、それと同時怖くもあった。この武器をコントロール出来るかと言うことだ。物理的な意味ではない。銃の力によって心を奪われ自制が効かなくなるのではと。
キタヤマ隊長曰く、相手に当てる必要はない、今はあくまで相手を脅すために撃てと言われた。それとフルオートで連射するとコントロールが利かないからセミオート(単発)で撃てと言った。弾丸をムダにするなと言われた。
銃の撃ち方を教えてもらってから、再びその場に居た15人全員がマリファナを吸った。一番意識がハッキリしてそうなギバが運転手になり助手席にキタヤマ隊長。トラックの緑色の幌つき荷台に残りの13人。
まるで戦場に送り込まれる兵士のようだった。というのも横須賀の方が都会なので生存者が多くいる事は予想出来た。自分たちと同じ考えを持った者達が基地の武器を略奪し暴れまわっているかも知れないとキタヤマ隊長が言うからだ。確かにその可能性はある。だが考え過ぎではないかとイシカワは思った。マヤケ駐屯地周辺ですら焼け野原だったのに、横須賀なんてきっともっと酷いことになっているに違いない。生存者がいるかも怪しい。
通常ならマヤケ駐屯地から横須賀の基地まで車で20分くらいなのだが、瓦礫や壊れた車達が障害物になり、結局横須賀に着くまで1時間かかった。
外から腐敗臭とそれを隠すかのような焦げた臭いが強くなってきた。イシカワは荷台の一番おくに座っていたためナカナカ外を見えなかったし、見ようとも思わなかったがちら見する限り炭化した瓦礫ばかりが見える。
トラックが止まった。キタヤマ隊長が車体を叩いて出ろと言った。
みんな、外へと出るとイシカワの視界に入ってきたのは炭化した瓦礫ばかり。大きなビルがあった場所は鉄筋がむき出しになっているが、全壊していると言っても過言ではないくらい破壊されていた。これが、かつての横須賀なのかと思うと信じられなかった。
トラックは米軍基地の門の前に止まっていた。門の方を見ると他の建物と同じように壊れ、炭化していた。門も意味をなしておらず金網で出来たゲートが倒れ溶けている部分もあった。港に目をやると大きな戦艦が焦げて横に傾いていた。
「もし相手が撃ってきたら撃ち返すなよ。一目差にトラックに逃げるんだ。わかったか?」
みんなうなずいた。キタヤマ隊長が教えてくれたようにアサルトライフルをみんなで構えながら進んだ。殆どの建物が崩壊していたが、墨で塗ったように真っ黒な色をした形状を留めている大きな正方形の建物があった。アレに違いない。さっきの駐屯地の2倍か3倍はあるだろう。みんなの予測通りだった。倉庫は壊れてなかった。静かに倉庫へ近づく。アメリカ兵が生存していて私達を略奪者だと思い撃ってくるかも知れない。
倉庫の鉄の扉に到着するとキタヤマ隊長は御呪いのように壁を叩きモールス信号(だれかいますか?居たら返事してください、と打っている事を後で知った)で返事を待つ。1分、2分、5分しても返事はない。入ることにしたが、今回は前回と違い施錠されていた。カトウが銃を鍵に向けて発砲した。「パン」大きく乾いた音が周りに響きわたった。
「馬鹿野郎!突然撃つんじゃない。鉄の扉に銃を撃ったら弾丸が跳ね返ってくるだろう!」とキタヤマ隊長は怒鳴った。威圧的な印象を受けるが今まで怒鳴る所を見たことが無かったのでカトウ以外も驚いた。「すみません。こうすれば開くかと思って」と謝るカトウ。
「気にするな。鉄のドアを銃を撃つと危険だて事を教えなかった俺が悪い」とキタヤマ隊長は怒鳴った事を少し後悔しているように言った。
カトウが撃ち込んだ弾丸は見事に鍵穴の部分にめり込んでいたがドアは開かなかった。
すると、キタヤマ隊長はポケットからC4を取り出した。
「これなら開くかもな」
C4プラスチック爆弾とは粘度の様に捏ねて千切って形成出来る爆弾の事だ。キタヤマ隊長曰くかなりの威力があるとか。
キタヤマ隊長は、鍵の周辺にC4プラスチック爆弾を1個、ドアの2つの蝶番の部分に2個C4プラスチック爆弾を貼り付けリモコン式の信管を刺した。
「いいか、姿勢を低くしろ。行くぞ」キタヤマ隊長が言うとリモコンのスイッチを押した。地面は軽く揺れてドアからは土煙が舞った。
しばらくし土煙が収まるとドアが建物の内側に歪な形で変形してるのがわかった。それからみんなでそのドアを蹴った。5回ほど蹴った後にドアは建物の中へて倒れた。
倉庫内には誰も居ない様子だった。あるのは、軍用トラックが6台。最新式のハマー軍用車両を6台。それと河川哨戒艇(軍用ボート)が6船籍。しかもエンジンをかけると、どれも使える。「この、ハマーはかなり使える。最新式だ。しかも相当頑丈な窓ガラスも防弾ガラスだ。このボートは河川哨戒艇といって川で使うことが多いのだが海でも使えるぞ」とキタヤマ隊長。しかも無線が生きていた。まだ電波障害が酷いのかノイズがチラつくが使える。
HK416アサルトライフルが500丁、HK417バトルライフル100丁、それにSig P320ピストルが500丁にベレッタ92ピストルが100丁。M60マシンガン10丁、MP5サブマシンガン100丁、MP7サブマシンガン200丁、HKアサルトライフルに取り付ける用のグレネードランチャーが50丁、防弾ベスト1000着、防弾ガラスで出来たシールド200個、C4プラスチック爆弾が1000個、最新式スタングレネード5000個、トランシーバーが1000個、弾倉と弾薬の入ったケースが山積みになっていた。それと缶詰などの保存食大量と大量の1リットルの水が入ったペットボトルとドラム缶に入ったガソリンが大量にあった。放射能のマークが付いた箱を見つけた。その箱を明けてみると黄色いつなぎ。恐らく防護服を見つけた。
「この防護服は使えるぞ。放射能用の防護服だ。しかも、耐熱性も兼ねている」とキタヤマ隊長は嬉しそうに言った。
帰り道、トラックの荷台に詰めるだけ詰めて帰ることにした。思っていた以上の収穫だ。なにせ武器はあるし、保存食とガソリンもある。それに防護服も。河川哨戒艇(軍用ボート)は後日船の運転が出来る者が直接村まで運転することになった。米軍基地の隣にある自衛隊の基地は今度行くことにした。それに、日が落ちてきた。第二陣を送ればいい。そうみんなで決めた。
イシカワがトラックを走らせていると、急に何かが飛び出してきた。急ブレーキを踏んだ。ハンドルが頭に当たって痛くてクラクラした。しばらく意識が朦朧としていると。窓の外で4人の男女がこちらをみている。男1人、女3人。みんな若い。頭を打った上にマリファナまで吸ったせいで幻覚でも見たかと思ったが、その内の女性がドアをノックした。幽霊でも幻覚でも無さそうだ。生存者だ。
イシカワは瞬間的に、もしかして略奪者かもしれないと思い、ホルスターに入れている銃のグリップを握りながらゆっくりドアを開けた。ゾッとした。その女性の一人は右手が通常の4倍は膨れ紫色をしていた。
イシカワは、キタヤマ隊長と車内の無線を使い報告し4人を乗せる事にした。村以外で生存者を見たのは初めてだった。4人に、倉庫から持ってきた水と保存食振る舞った。相当お腹が空いていたのだろう。貪り食うように食べていた。
みんな瓦礫をかき分けて来たのだろう。服が汚れていて、焦げた臭いと腐敗臭がしたが、外の臭いに比べれば対したことはない。
若い男はハセガワ。ノースフェイスの緑のジャケットとジーンズにアディダスのボロボロになったスタンスミスを履いている。新卒のサラリーマンで川崎駅の周辺の自宅マンションで寝ていた時に核攻撃を受けたらしい。マンションは吹き飛んだが1階に住んでいたこともあり、助かったらしい。「10階建てのコンクリートマンションだったけど、2階から上は全て吹き飛んでいた。運が良かった」イシカワは喋り方からして彼をパーティーピープルだと推理した。
40代の女性はエンドウ。髪型はロングヘア。某化粧品会社の販売員をしている。彼女もハセガワの住んていたマンションの隣の部屋に住んでいた生存者だ。「あの時の記憶はないの。多分だけどショック状態にあったのね。気づくとハセガワさん肩を叩かれて目を覚ましたの」
30代の女性はナカガワ。茶色いショートカットが特徴的。彼女は結婚式の司会の仕事をしていた横浜の関内にあるホテルのロビーで打ち合わせ中に、彼女は核攻撃に遭った。瓦礫とかしたホテルからどうにか一人で外に出たとか。彼女だけパンプスを履いていた。白いパンプスだったのだろうが靴ずれで血豆が出来て茶色く変色している所があった。
そして、右手が大きく膨らんでいる20代の女性はハラ。髪型はセミロングでビリ・ーアイリッシュみたいに緑色に染めていた。彼女は大学生2年生だった。当時彼女は友人たちと朝まで飲んで、横浜市営地下鉄線で家がある戸塚に帰るため桜木町の地下鉄に乗っている時に核攻撃を受けた。「車内に居た時、大きな揺れの後に、地下鉄内が爆風と炎に包まれて、気を失った。起きたら周りはみんな焼け死んでいて、自分は右手だけ酷い火傷を負った」との事だった。
横須賀ですら火の海だったにに川崎、横浜なんて予測からすると相当な被害に違いないと思っていたので、まさか生存者がいるとは思っても見なかった。イシカワは、4人に川崎・横浜に生存者がどのくらいたのか?と質問した。
最初は沢山の生存者がいたらしい。少なくとも500人は目撃したらしい。殆どがスグに死んでいったという。
元々この4人グループは150人からなるグループだった。怪我が酷く死んでい者、仲違いする者、それに一番大きな出来事は、グループが50人に減った時の事、横浜で略奪者達に出会った事だった。略奪者達は30人のグループからなり、年齢は様々。一番若い子で8歳くらいの少年と一番上で60歳代がいたとか。彼らに服をや食料を略奪され、中にはレイプされた者もいるらしい。この4人はその集団に襲われ横浜から、かろうじて逃げたとか。
「略奪者だって?」イシカワは驚いた。横須賀ですら火の海だったのに川崎、横浜にも。
そのグループは、斧や、ナタ、日本刀、それに拳銃や、ライフルまで持った者もいたらしい。
「拳銃てどんなやつですか?オートマチック?リボルバー?」
「拳銃の事は詳しくないけど、貴方が持っている様なやつじゃなくて、中央に丸い奴だったと思います」
「ライフルってどんなやつですか?連射出来るやつですか?」
「たぶん、猟銃ではない、もっと近代的なライフルでした。アナタが持っているライフルに似ていた気がします」
恐らくリボルバーだ。警察官の銃に違いない。警官から銃を略奪したに違いない。「あなた達は大丈夫ですよね?もしかして自衛隊ですか?」とハラさんが不安そうに言った。
「もちろん、あなた達に危害を加える気はありません」しかし、自衛隊や米軍の基地から銃器や保存食を略奪しているという意味ではイシカワたちも「略奪者」とあまり変わりないかもしれない。
「なんで、横須賀に来たんですか?」とイシカワが聞いた。
「核兵器には詳しくなですが、恐らく爆心地が東京であれば、爆心地から離れれば離れるほど生存者がいるに違いないと思って横須賀に来ましたが。横須賀なら米軍基地も在るし、援助をしてもらえると、みんなで思ったんです。でも横須賀も焼け野原でした。とても絶望して、4人共自殺を考えていたところでした」とハセガワ君が言った。
生存者を保護。入植者が4人。
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