5章 訓練
遠征当日。早朝4時半に目を覚ました。非常に目覚めの悪い朝だった。イシカワは調達部隊に選ばれてしまった。
イシカワは2日前、くじ引きで見事に当選した。父親はやや引きつった顔をして「誇らしいぞ。頑張れ!」と、クリハタとアキモトとリーも同じ表情をし同じ様な事を言った。恐らく自分が当選しなかったのがラッキーだと思うのを隠しているに違いない。無理もない。自分が逆の立場だったら同じことを思い言っただろう。
噂では、あの山の向こう側の異常に放射線量は高いとか、実は米軍基地と自衛隊基地にも核爆弾頭が着弾して、横須賀の放射線量が以上に高いとか、横須賀は生存者同士で略奪を繰り返しており「マッドマックス」のような状態にあるとか、自衛隊も米軍も政府が消滅して持っている武器を使い生存者から略奪行為やレイプをしているなど、いろいろな噂が流れていたからだ。あくま噂だ。あの日以来、誰もトンネルを抜けて外に行ったも者いなけれが、山の向こう側からこちらに来た者もいなかったからだ。あくまで噂。噂に過ぎない、イシカワは思い込むことにした。
村議会の集会の次の日、キタヤマが15人に対して簡単なサバイバルのレクチャーを行った。
キタヤマは若干威圧的だが悪い人間ではないようだ。少なくてもここにいる15人には等しく同じ態度で接した。
イシカワは映画「フルメタルジャケット」のような地獄絵図のような可愛がりが過ぎる軍事訓練を受けるものだと思っていたので少し安心した。
周りをみると一番若いもので25歳のカトウ。彼は家の養豚農家の跡取り。特にイシカワとは面識はなくたまに駅周辺で顔を見る程度だ。
イシカワのの隣にいる。長髪の30代の男はササキは実家のキャベツ畑を手伝いながら陶芸家で芸術家特有の気難しさを醸し出している。彼の両腕には沢山のタトゥーが入っていた。分かるものだと右腕にスターウォーズのR2-D2とヘルボーイとXーメンのウルヴァリンが、左腕にはミュータント・タートルズとゴジラのタトゥーが入っていた。そのため特に老人たちは彼の事を怖がった。イシカワは別に彼のことは怖いとは思わなかった。タトゥーしている人間なんてこの村を出ればいくらでもいる。まあ、もうこの村以外に街があればの話だが。
あと、警官2人は40代のアマミヤと50代イヌカワの男で腰にリボルバーの拳銃をぶら下げているだけで特にコレと言った特徴もない印象を受けた。
そして40代のいつもニコニコしているシミズさん。彼の両親はヒッピーで山の北の奥に住んでいた。今は両親は亡くなっているが、彼には噂があった。表向き上は林業を一人でやっているが、裏でマリファナを栽培して東京に送って売っているという噂だ。本当かどうかは分からないが、目がトロンとした所と親がヒッピーてだけでマリファナをやっているなんて発想がとてもバカバカしいとイシカワは思っていた。
一番年長のワタナベさんは70歳だ。ぱっと見、50代に見えるくらい若く見える。家の父親より歳上なのにとても元気そうだ。
ギバとマキタは恐らくスリル中毒だとイシカワは考えた。危険かもしれない所に志願していくのだから相当だ。それにマキタはフリークライミングが趣味だ。おらくスリル中毒に違いない。
あとは、顔をよく見かけるが名前を知らない人ばかりだった。
キタヤマはまず、方位磁石の使い方と地図の読み方から始まった。これは、イシカワは知っていたつもりだったが、なかなか奥深い。知らないことを沢山教えてもらった。方位磁石は必ず2つは必要だと言っていた。アレばあるだけ良い。壊れる可能性があるからだ。彼がレンジャー部隊にいた頃は予備を4つは身につけていたようだ。それくらい大事だと言っていた。それと磁石が壊れたり紛失した場合、アナログ時計を使って、太陽の位置から方角を割り出す方法を教えてもらった。棒を使って影で方角を割り出す方法、それと時計は文字盤を外側ではなく内側にするように言われた。文字盤を外側に向けていると壊れる可能性があるからだ。それに、銃を構える時に文字盤を見えやすくなると言った。夜に北極星を見ると北の方角が分かると教わった。
それに水の確保の仕方、火の起こし方、雨風を防ぐために葉っぱを使って寛容な住居を作る方法や、泥水をビニールシートを使って飲める水にする方法や、そしてナイフの使い方(ご信用、サバイバル用の両方)、それと食料の確保。絶対にキノコには手を出すなと言われた。毒であったり幻覚作用が在るものが多いからだ。
そして武器用にに弓矢を作った。木の棒を歪め、村に在る一番強力なカジキマグロで使うような釣り糸を使った。矢の先端は石だった。本当は鉄がいいが、村で溶接、鉄鋼をやっていた人物が飛んできた瓦礫に衝突して死んだためだった。
石を何度もハンマーで砕き。丁度いい大きさの石を棒ヤスリで削って先端を尖らせた。一人につき20本の矢が完成した。石器時代に逆戻りだ。そして弓の使い方を習った。これは結構難しい弓を引くには考えていた以上に力を使った。イシカワは弓の弦を引き切るのに力を入れすぎて腕がプルプル震えて的に当てるどころではなかった。「君にはもっと練習が必要だな。しかし、相手に当てる必要はない。脅しの道具として使え」とキタヤマ隊長に貶しているのか励ましているのか分からない事を言われた。
それから自転車屋の亭主が来て、自転車の修理方法を教えてもらった。
素人目にも高そうなマウンテンバイクだった。KONAというメーカーの最新モデルらしい。前輪と後輪と中央のフレーム部分にサスペンション(バネ)がついていて、自転車の物とは思えないほどの太いタイヤがついていた。ベダルを漕ぐ方に3段のギアが、後輪の方に8段のギアがついていた。イシカワはこんな自転車を乗ったことがないので少し不安だったが、スグにギアチェンジの方法も分かったので安心した。亭主はタイヤがパンクした際のチェーンが壊れた時の対処方法を学んだ。
最後に全員にトレッキングシューズが支給された。これはあのジイさんかバアさんしか行かない様なあの服屋が提供してくれたに違いない。しかし、あの服やに数回しか入ったことがないので靴が置いてあるとは知らなかった。
それとゴアテックスのジャケットをもらった。あの店にゴアテックスの商品なんてあったのかとイシカワは驚いた。
そしてキタヤマ隊長のレクチャーは終わった。
イシカワは寝付けなかった。電気は自家発電でどうにか使えたがクーラーを使えるほどの余裕がなくて暑くて眠れなかった。それに外はどんな状態なのか不安で仕方なかった。放射線量が高く被爆するかもしれないし、略奪者グループに殺されるかもしれない。こんな時にタバコがあればと思ったが、2年前に普通の紙巻きタバコをやめて電子タバコにした。電子タバコに電磁波でヤラれて動かなかった。なんであんな単純な物にデジタルの基盤を使っていたのか疑問が残る。もっとアナログな設計にしていれば電子タバコを吸えたのにと電子タバコを開発者達を恨んだ。そんなどうでもいいことを考えていたら気が遠くなり気づくと夢の中へ。
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