3

「な・・・なんで?」



眉をひそめ、目の前の藤澤さんから目を逸らす。



「受賞式のスピーチで言ってただろ?

“何でも構いません、どんな内容でも良いので”って。」



「それは・・・そうですけど・・・。」



「なんだ、アレ嘘だったんだ?

俺すげー感動したのに。」



そう言われると、何だか私が悪いような気もしてくる・・・。



でも・・・



「いつもみたいに、他の女の子にすればいいのでは・・・?」



私の言葉に、藤澤さんが面白そうな声で笑ったのが聞こえた。



「他の女の子には、もうしない。」



私は驚き、藤澤さんを見上げる。




「花崎さんがいい。

花崎さんだけがいいから・・・。」



希望で満ち溢れた目で、そこに静かに揺れるような熱を込めて私を見詰める・・・



「確認させてよ、着けてるだろ?

うちの商品・・・。」



「・・・っっ」



ゆっくりと伸びてきた藤澤さんの両手が、私のワイシャツの盛り上がりに少しだけ触れた・・・



「他の女の子達への対応・・・これで問題ないだろ?」



そんな・・・私の発言を用いて、この“王子”は私に告げる・・・



私には“人権”などないのだと・・・



こんなパッとしない、つまらない女には・・・



“人権”など、ない・・・



「花崎さん・・・いい?」



私のワイシャツの膨らみに少しだけ触れたまま、身体をソッと寄せながら私の耳元で聞いてくる・・・



「・・・っっ!」



藤澤さんが唇を私の耳に少しだけつける・・・



全く分からない、感情・・・

でも、それは恐怖に似ている感情・・・

そんな感情が込み上げてくる・・・



固まっていた両手を動かし、大きく震えながらも藤澤さんの胸を押す・・・



「少し・・・考えさせてください・・・」



小さな声で、やっと絞り出した声・・・



“人権”のない私が、“王子”に意見する・・・



「うん・・・返事待ってる。」



藤澤さんがゆっくりと私から離れ、会議室を出ていった・・・。



全く分からない、恐怖に似た感情が込み上げている私の身体を、強く両手で抱き締めた・・・。

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