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全く分からない展開に驚きながらも、今日の仕事はこなしていく。

人事部には採用だけでなく、労務や評価、教育などもあるため、それぞれの担当責任者から課長の私の所に一旦上がってくる。

そして・・・人間関係の問題まで・・・。



会議室の中、綺麗な顔に怖い表情をさせた女性・・・

営業部の屋敷さんがテーブルに向かい合う私を睨み付けてくる。



「本当、あなたってつまらない顔ね?」



そんな第一声で、私は笑ってしまった。



「何笑ってんの!?」



「いえ、本当のことをハッキリズバッと言う方だなと思いまして。」



「私がキツイっていうんでしょ?」



「はい。」



「仕方ないじゃない!私昔からこうなの!」



「はい。なので、嬉しいです。」



何か言い返そうとした屋敷さんが、口をパクパクしたまま固まった。



「そういう方も必要ですから。

屋敷さんがいないと、上がらない声もありますからね。

良かったです、私はちゃんと、屋敷さんを選べていたようですね。」



その後、会議室は数分間無言に。

屋敷さんは不貞腐れた表情で下を向き、足をたまにユラユラ揺らしている。



「何か、ありましたか?」



「・・・うん。

担当店舗の店長の子に、泣かれた。」



「そうですか。それは困ってしまいますね。」



「別に、売上が落ちて責めたわけじゃない。

何で落ちたか店長の分析が聞きたくて、聞いただけ。」



「そうですよね。それが屋敷さんのお仕事ですから。

どこの店舗の店長ですか?」



屋敷さんが答えると、会社から電車で1時間くらいの所だった。



私は椅子から立ち上がり、屋敷さんを見る。



「では、行きましょうか?」



「・・・どこに?」



「その店舗の店長に会いに。」



「今から!?もう定時になるけど・・・。

それに、人事部も大変でしょ?」



そんなことを言う屋敷さんが面白くて、私は笑う。



「これも、人事部の仕事の1つですから。」



渋々立ち上がった屋敷さんを見詰める。



「拗れた人間関係は、一刻も早く修復するべきだと私は思います。」



「部長に報告した方がいい?」



鞄を持ち、屋敷さんと2人で廊下を歩いていると聞かれた。

律儀な屋敷さんに、私はまた笑ってしまう。



「そんなの、まだしなくていいでしょうね。」



私が立ち止まると屋敷さんも立ち止まった。

私は屋敷さんを見る。



「本来なら、問題が起きたらすぐに報告するのが正解だと思います。

ですが・・・うちの会社の場合は、それだと不正解です。」



私の言葉に屋敷さんもすぐに気付いたようで、苦笑いした。



「なんでうちの会社、部長こんなに年寄り多いの?

時代錯誤なことばっかり言ってるしさ。」



そんな、ハッキリズバッと言う屋敷さんに、私はまた笑ってしまう。

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