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2日後・・・

定時の後に開かれた、上半期打ち上げパーティー。



毎回恒例の会場、その壇上には社長賞の賞状を渡された藤澤さん。

そして、その隣には・・・私。

自分で作った賞状を自分で持つという、何とも不思議な体験をした。



「花崎さんも受賞してたんだ?」



「はい、名波社長のご厚意で。」



「花崎さんと並んで立てるなんて、光栄だよ。」



そんなことを言う藤澤さんを、私は眉をひそめながらチラリと見る。



対する藤澤さんは、希望で満ち溢れた目で私を見た。



「花崎さんと並んで立てるの、こんな光栄なことはないよ。」



眉をひそめながら、視線を逸らす。



「まあ、私が藤澤さんを入社させるよう名波社長に話したので。」



「面接での町田部長、絶対俺を入社させるつもりなかったもんな?」



面接の時の話をされ、その時の町田部長を思い出し笑ってしまった。






壇上でマイクを持ち、少しだけ話す。



「人事部課長の花崎です。

本日は社長賞という素晴らしい賞を受賞することができ、大変嬉しく思っております。

これは、社員、パート、全ての従業員の皆さんが、毎日一生懸命働いてくれた結果、人事部の私が受賞出来た賞だと思っております。」



壇上から皆を見渡した後、深く、深く、お辞儀をした。



「人事部は“会社の顔”、私自身はこのようにつまらない顔をしておりますが・・・」



わざと言葉を切ると、思ったよりもウケていた。



「会社の“顔”として恥じぬよう、これからも頑張って参ります。

そのためには、現場で働く皆さんの声が非常に大切になります。

何でも構いません、どんな内容でも良いので・・・

このつまらない顔の私の所に、何か話したいことがありましたら、いつでもお越し下さい。」



深く、深く、お辞儀をしたら、思ったよりも大きな拍手が鳴り響いている。





振り向き、少し後ろに立っていた藤澤さんにマイクを渡そうと手を伸ばすと・・・

私のマイクを持つ手に、藤澤さんの手が上から重なった・・・。



私は眉をひそめながら、藤澤さんを見上げる。

対する藤澤さんは、希望で満ち溢れた目で私を見下ろし、笑った。



それを無視するように、私は視線を逸らす。



藤澤さんが最後にまたギュッと私の手を握ったかと思うと、やっとマイクを取り前に歩いて行った。



何を言うか少し気になったけど・・・



会場に響く女の子達の甲高い叫び声により、全く聞こえず・・・。



それには私も笑ってしまった。

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