わたしの海へ

わたしの海へ。聞こえてますか。

あなたは今、どこにいるのでしょう。

空というよりも、この海の深い深い青にとけていそう。

はじめて私が覚えた色は、この、あなたの、海の、色だった。

運命みたいなものかもしれないね。


私の半分はあなた。あなたの半分は私。

あなたはどんな顔をしているの。

あなたはどんな声をしているの。

あなたの背はどのくらいだったの。

全て全て知り得ることはない。


わたしの海へ。

海を見る度、あなたを思い出す私のように、

どうか花を見る度に私を思い出してはくれないか。


この海にあなたがとけているのなら、

そっと親愛の口付けをするように。

あなたの場所に咲く花があるのなら、

そっと抱きしめてはくれないか。


「会いたい」

ただこの一言に尽きるよ。


私の心臓を、脳を、肺を、細胞を、

半分だけ持ってどこへも行かないでくれ。

羊の水に溺れる前に私の手を掴んでくれ。

川に流される花のように流されないでくれ。


あなたといたであろう10ヶ月程のみじかい間。

もちろんなにも覚えてないけれど、

あの温度にもう一度触れたい。


わたしの―――海へ。

天国のあなたに、どうか幸あれ。

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詩集 境界線上 葉月楓羽 @temisu00

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