第2話 対戦の始まり
翌日、早速カードを持って黒木古本店にやってきた。
店員さんのいるであろうカウンターに近づくとそのすぐ近くにテーブルが置いてあることに気がついた。
「こんにちは、さあ対戦しましょうか」
「はい!」
店員さんがわざわざ机を用意してくれるくらいには乗り気だったことに安心しながら用意をする。
対面に座りデッキを交換してシャッフルなどの準備をする。久しぶりに人と対戦するワクワクが止まらない。
「「じゃんけん、ぽんっ」」
「負けちゃった、弱いんだよねじゃんけん」
そういいながら対面に座るあどけなさが残る彼は苦笑します。
「私の先行ですね」
私を大戦に誘った彼は、楽しそうにカードを動かします。
「片翼の龍で攻撃します」「止めます。」
「聖なる騎士で攻撃」「うーん、通すよ」
彼のデッキはこの前ここで買った特典付きの本から予想できましたが、メディアでの主人公が使うカード達を基本にしたものでした。ただ私たちくらいの年齢の子の使えるお金の限界からデッキとしてはお世辞にもすごい完成度ではないですね。
「聖なる騎士でとどめ」
「あちゃー負けちゃった」
彼は悔しそうにそう言います。
結果は私の勝ち。胸を張って言えるくらい圧勝だったと思います。
「もう一回やりましょうよ!」
コテンパンに負けたのに彼は元気にまた挑んできます。その目は対戦がよほど楽しいのかすごい嬉しそうで綺麗でした。
「良いですよ。次も私の圧勝ですよ」
「いえ!次は僕が勝ちますよ!」
久しぶりに誰かとプレイするカードゲームはとても楽しかった。
「また負けちゃった、対戦したこと少ないなんて嘘みたいですよ」
それから数回遊んだ後に私は気になっていたことを聞くことにしました。
「…名前はなんですか?」
「え?」
「あなたの名前はなんですか?教えてください」
そう、彼は私を店員さんと呼ぶし私は彼を彼と呼ぶ。お互い名前すら知らないのです。
「あ、名前ですね…僕の名前は凛です。岬凛です」
「岬くんですね、私は黒木彩菜です。よろしくお願いしますね」
「は…はい、よろしくお願いします!」
こうして私と彼のこの狭い箱庭での決闘は始まりました。
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