第5話 二階へ
『救助対象者2名の救助ご苦労様、2人とも落ち着いてるよ』
「そうですか、安心しました。女子の方は精神攻撃を受けていたようなので目が覚めたら念の為、精神治療を。精神を安定させる薬を嗅がせてはいますが残っている可能性はあるので」
『解った、すぐに専門家を手配しよう』
岩本さんから半沢くんと相田さんについて連絡が入った。
転移先で2人とも落ち着いてるみたい、良かった~。悲惨な状況下から安全な地に送られた途端、フラッシュバックして暴れる人も居るって聞くから良かったよ。
連絡が切られる前に半沢くんから聞いた、引率の教師である上灘と育成所関連の話を伝えると若本さんは少し低い声で育成所も調査すると言って連絡を切った。
これは若本さん怒ってるな~、まあ、私の知らぬ所だし、引き続き依頼をこなしますか~。
通信機に表示されている施設内の地図には残り3人分のマーカーは未だ映らず。
例の教師はともかく、残り2人の生徒、双子の兄・
あの名家しかも本家筋の人間のようだからクソ教師に協力してるなんて事はないと思うけど、その逆に利用されている可能性の方が高いかも。
天埜川家の人間には数えるのを放棄したぐらい会っている、私の姉弟子に天埜川家次期当主が惚れ込んでてさ~、ウザいのなんのって!
だけど、一目で解るほど凄い霊力を持っている上にそれを使いこなしている程の実力者、姉弟子に常にデレデレでウザいアピールのせいで毎回殴られてる人間が日本いや世界で名を馳せる一族の次期当主なのだと思い知らされた。
さて、私とサブローは地下室に向かっている。
幽霊はジメッとした場所を好む、迷い込んだ上級幽霊が居る可能性が高い場所だ。もしかしたら、其処に残りの3人が居るかもしれない。
進行を妨げる幽霊を浄霊しつつ、向かうと。
「なにこれ」
地下室に向かう階段に結界が貼られていた。
「ハッ! あからさまに此処に居ますよって言ってるようなもんじゃない。さてと・・・・・・」
私は結界に触れて目を瞑る。結界を壊す方法を探る為に結界に使われた霊力を利用して。
頭の中に映像が流れてくる。
1人の男、おそらく上灘だろうが人形を2体を何処かに置いているようだ。
なるほど、この人形が結界の元になってるみたいね、それを二階と三階に1体ずつ隠すように置いている。
まるでゲームの準備をしてるみたい。な~んか、嫌な気分。
「サブロー、手を貸して」
「はいにゃ」
サブローの肉球がぷにゅっと私の手の平に置かれる。この感触堪らない!!
これは別にサブローの肉球の感触を楽しみたくてやっているわけじゃない、私が診た映像をサブローに共有し人形の在処を探してもらうため。だから趣味じゃない、これは趣味じゃない、大事な事!!
「にゃ! 1体目、何処にあるか解りましたにゃ! ちょうど、この上ですにゃ」
ビシッ! とサブローは天上を指差す。
1体目は楽に見つかったようで良かった、2体目の場所はどうやら細工をしてあるようで1体目を探さないと解らないとサブローは教えてくれた。
サブローからそれを聞いてゲームのようだと益々思う。あのクソ教師は若本さんがフリーの霊能者に依頼して救助に来ることを事前に解っていて、生徒を襲った可能性がある。そして、救助しに来た霊能者で遊んでる? もうそうだとしたらくっそサイテーなんだけど!!
だけど、迷い込んだ上級幽霊は? クソ教師が連れてきたとか? 幽霊の輸送自体は簡単、でも警備員が持ち込みを許さない、お化け屋敷に入る前に捕えられ、即対心霊特別警察に引き渡されるのがオチだ。
あ~、考えたところでクソ教師と上級幽霊が繋がってるか解らん!!
「サブロー! 二階に行くよ!」
「了解にゃ!!」
目の前の事を片付けよう!!
「どうやら人形の事に気がついたようだね。うん、まあこれは想定内だ。でもこれは早めに来てしまうかもしれないな、ふむ、増やすか。いやあ、君達みたいに霊力だけは豊富な存在が居ると楽だよ」
モニターだけが照らす暗い部屋で男はニタリと笑う。
その男を拘束されている少年はギラリと睨み、同じく拘束されている少女も睨付けた。
霊能者・霊歌の華麗なる活躍 うにどん @mhky
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