第4話 生徒2名救助

 悲鳴が聞こえた方、マーカーが示す先へ走る。


「ご主人様! 血の匂いがするにゃ! 怪我してるにゃ!」


 サブローが血の匂いを嗅ぎつけ、私に知らせる。

 私が若本さんと話してる間に低級幽霊は人に怪我を負わせる程度にまで力が上がってしまっていた、いや、もうすでに私が此処に来た時点でそこまで上がっていたのかも。

 あ~、ごちゃごちゃ考えるのはよそう。今は人命が最優先!!


「いやぁ~、来ないで、来ないで~!!!!!!」


 少女の悲痛な声が耳に届くと同時に視界に12、3歳ぐらいの怯える少女と負傷した腕を押さえた少年を捕える。

 若本さんから送られてきた救助対象の生徒だ!!


 二人の前には低級から中級クラス近くまでに力を上げた幽霊。

 きっと少年に怪我を負わせたのはあの幽霊に違いない。

 私はお守りを発動し。


「猫ノ拳! 炎ノ拳・連撃!」


 背後から容赦なく拳を叩き込む!!


 背後からの攻撃に対処出来るはずもなく幽霊は呆気なく人魂へと変わる。

 回収はさっさと済ませ、二人に向き合う。少年は怪我をしてるから治療をしないと。


「大丈夫?」


 優しく声をかける。


「あっ、怪我はしてますが、だ、大丈夫です」


 腕を負傷した少年が答える。受け答えから意識はハッキリしているようだ。

 彼らの足下に壊れたお守り、お守りが壊れたせいで境地に陥ったわけか。

 少年から少女に視線をやると、少女は歯をガチガチさせながら未だに怯えている。これは精神攻撃をされたな。


「貴方、大丈夫?」

「あ、ああああ・・・・・・」

「相田? どうしたんだ?」


 刺激しないよう優しく声をかけるが少女の目は焦点が合わず、ブルブルと体を震わす。

 少年も少女の様子がおかしいことに気がつき、声をかけるが相田と呼ばれた少女の震えは止まらず。


「ああああああ~!! 殺される~!!」


 私に襲いかかってきた!!

 チッ!! 精神をやられたせいで私を襲ってきた幽霊と思ってるの!?


「相田!! 止めろ!!」

「殺される~!! 殺される~!!」


 負傷しているのに少年は暴走した彼女を羽交い締めにして止めに入る。それでもなお、彼女は暴れる。

 こうなったら。


「サブロー!!」

「了解にゃ!! サブロー特製、マタタビ玉喰らえにゃ!! 少年くん、君は吸わないように気をつけてにゃ」


 サブローが少女に向けてマタタビ玉という名の眠り薬入りの玉、いわゆる眠り玉を投げる。

 玉はパンッ!! と弾け、眠り薬が少女に降りかかると暴れていたのが嘘のように大人しくなり、寝息が聞こえ始めた。これで、もう大丈夫。


「相田、どうして急に暴れたんだ。普段は大人しいのに」

「先程の幽霊の精神攻撃おそらく恐怖の感情の増加によるものだと思うわ、さっきの眠り玉に精神を落ち着かせる成分も入ってるから目が覚めたら元通りになってるはずよ」

「そうですか、安心しました。あれ? 急に痛みが・・・・・・」

「貴方は怪我の治療をしないとね、サブロー」

「治療はお任せにゃ」


 少年、確か半沢くんだったかな? に少女――相田さんの現状を教えると安心し気が抜けたせいか痛みを訴える。ずっと気が張っていた証拠だね。

 サブローがテキパキと半沢くんの治療している中、私は彼にこれまでの経緯を聞いた。


「いきなり、上灘・・・・・・。俺達の引率してた教師に襲われたんです」


 はい!! 私の嫌な予感が当たった~!!


 半沢くんの話を聞くかぎり噂通りのクソ教師のようだ。

 依怙贔屓してる生徒からも嫌われているようで、研修の引率になった事に半沢くんを始め4人全員反発したようだが、所長になあなあにされてしまったそうだ。

 若本さんの話では副所長派に邪魔されたとか言ってたけど、半沢くんの話では所長は副所長とは育成所の経営方針で対立しているものの、これ以上、波風立てない為に副所長の言いなりになってるみたい。これ若本さんに言っておこう。

 というか育成所内の内部争い、生徒達にも知られてるってダメじゃん。これからどうなるんだろう、この育成所。


「通信機も壊されて、連絡出来ない状況にされて、それで俺と相田、天埜川の兄妹と二手になって上灘を追いかけたんですが幽霊に襲われて、お守りも壊れて・・・・・・」


 話していくと半沢くんの顔を曇っていく、怖い思いをしたんだろう。

 だけど、私が来たからには大丈夫。


「そう、それは大変だったね。でも私が来たからもう安心だよ。私はこのお化け屋敷の管理者から依頼を受けて貴方達の救助に来たの。これから、貴方達を安全な場所へ転送するわ。そこでゆっくり休んでね」


 半沢くんの目を見て力強く宣言する。

 すると陰りのある表情を少し明るくさせた。これで少し心が軽くなったかな?


「・・・・・・そうですか、ありがとうございます。あの天埜川達の事、よろしくお願いします、実力があって頼もしい兄妹だけど、きっと俺達と同じ思いをしていると思います。だからどうか助けて下さい!!」

「勿論、助けるから安心して。サブロー、治療は終わった?」

「終わったにゃ~」

「なら、転移術発動!」


 半沢くんに残りの2人の救助にお願いを受け入れ、半沢くんと眠る相田さんを転移術で安全な場所へと送り届けた。

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