第3話 不穏な気配
一階を見て回る。
襲ってくる幽霊は浄霊し人魂にして回収、回収する度に見える過去には目を瞑りやり過ごす。
哀れと思ってしまう過去を見て同情しないように。
あと少しで一階が見終わるころに若本さんから通信が入った。
『やあ、霊歌ちゃん。急な依頼なのにすぐに動いてくれてありがとう』
「いえいえ、人命がかかってますから急がないと」
人命もあるけどお得意様の若本さんの依頼を無碍には出来ないと本心は言えないので黙っておく。
此処で連絡を入れてきたのは警備員からの連絡で私がお化け屋敷に入ったと受けたのと、救助対象の資料を送る手筈は整ったからだそうな。
救助対象の資料をどうして此処で? と疑問の思う方が居ると思うから説明しよう。データ容量が多くてすぐに送れなかったからだ、以上。
『資料と同時に救助対象者が何処に居るか把握出来るよう、マーカーのデータも送ったよ』
「ありがとうございます!!」
持つべき者は金持ちのお得意様だね~。
元から送られてきた施設内の地図にマーカーが浮かび上がる。
「・・・・・・二人?」
浮かび上がったマーカーは二人分しか映らなかった。
私の小さな呟きを高性能通信機は拾ってくれたようで若本さんは反応した。
『二人? 霊歌ちゃん、どういう意味だい?』
「今、施設内には二人分の反応しかありません」
『なんだと!? ・・・・・・やはりあの話は本当なのだろうか』
「あの話?」
『引率の教師なんだが、悪い噂しか聞かないような教師らしい』
「はあ!?」
マーカーが二人分しか反応がないことを話すと若本さんは間を置いたあと、育成所の所長から引率の教師に悪い噂があると聞いたと話してくれた。
依怙贔屓が激しいとか嫌いな生徒には嫌がらせするとか有り触れたものから幽霊の研究に非常に熱心でその為なら犠牲を問わないという黒い噂があると。
「よくそんな教師を引率に選びましたね」
『その教師は副所長のお気に入りらしくてな、副所長が強引に決めてしまったそうだ』
「所長は止めなかったんですか?」
『今、その育成所は所長派と副所長派に分かれていて副所長派が少し優勢らしくてな・・・・・・』
「つまり副所長派が邪魔して止める事は出来なかったという事ですね?」
『まあ、そういう事だろうな』
うわ~、その育成所大丈夫なの?
一応、正しき霊能者を育てるをスローガンに掲げてるのに内部争いしてるようじゃ、生徒達も安心して勉強出来ないでしょうに。そういう意味じゃ、姉弟子に拾われて師匠に育てられた私は運が良かったのかもしれない。
『それに今回の研修生は今期のテストで優秀な生徒であること、またその内の2名が優秀な霊能者を多く輩出している名家・天埜川家の人間だから、さすがに下手なことはしないだろうという考えもあったそうだ』
「だけど、その考えはもしかしたら間違いだったかもしれないという事ですか?」
『多分ね。ここまで話したがあくまで噂通りの人間だったらの場合だ。もしかしたら、マーカーの調子が悪いだけかもしれないしね。念の為、その教師については上級幽霊と共に調査している最中だ、君は引き続き依頼の方を』
「了解しました」
若本さんと通信を切り、私は考える。
もし若本さんが聞いた話通りの教師だったら、研究の為に優秀な生徒とくに名家・天埜川家の人間を利用して何かしようと企んだ可能性は高い。
そうだとしたら、この状況を作り上げたのは教師なのかもね。
あくまでそういう可能性があるかもしれない、けど、嫌な予感がするんだよね~。
私の嫌な予感って大体当たるんだよ、当たらなきゃ良いな~。
「きゃああああああ!!!!!!」
そんな事を考えてたら少女と思わしき悲鳴が聞こえる。
声からしてこの近く、恐らくマーカーが示す方。
「サブロー!!」
「はいにゃ!!」
悲鳴の方へ私達は走り出した。
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