第14話 常識の違いを楽しむ
ギルドから帰った翌日。
リザに起こされてからすぐに私は洗濯されたジャージに着替える。
実はこの世界に来た日は本来なら体育の授業があったので、私は制服の下にジャージを着ていたのだ。
だってこっちのほうが着替えが楽なんだもん。
長ジャージはないけど、半袖短パンでいても涼しいくらいの気候なので丁度いい。
感じでいうと暖かい日の春のようなイメージだ。
太陽は多少出ているが風が涼しい。
そう。私は朝から運動をしてステータスアップを狙うんだ。
運動は苦手だが冒険者になるという夢を叶えるためにも自分を変えるんだ！
身支度を終え、リジが待っている部屋の外へ出る。
「レン様。身支度は終わりまし…
って、なんて恰好なんですか！
一回お部屋へ戻ってください。私も失礼いたします。」
私が話しかける前にグイグイと、元いた部屋に押し戻される。
「あの…リジ？」
リジは私を押し戻したあと、扉を締め正面に向き直る。
あっ、これ説教タイム？
とんでもないことをやらかしてしまったのかもしれない。
「レン様。」
「はっ、はい…」
リジの厳しい視線で自然と背筋が伸びる。
「…つしくないです」
「え？」
「美しくないと言っているのです！」
？
私が首を傾げているとリジが畳み掛けてくる。
「なんですかこの服装は！
レン様はアルフレッド様の婚約者なんですよ？
こんなに露出の多い格好なんて…」
「露出が多い…ですか？」
この世界だとこれくらいの露出でもアウトなの？
普通の半袖と膝くらいのズボンだけど…
「多いに決まってるじゃないですか！
今思えばレン様の普段の服装もおかしいのです。
女性は足や腕を露出をしないものなのに貴方様の服装は足を出しすぎです。」
そうか、この世界では私の常識は通じないんだ。
よくわからないけど中世みたいなイメージ？
私の普段の服装がおかしいって…
普段は制服で過ごしているが、確かに今のリジが言った常識で言うと少し足が出過ぎなのかもしれない。
スカートを折ってみじかくしているわけではないが、足首まで隠れるほどにスカートが長いわけではない。
今まで何も言われなかったのはきっと私のシャツが長袖だったからだ。
元の世界が7月だったとはいえ、教室内はクーラーで寒い。
暑くなったら袖をまくればいいと思っていたので、半袖を着ていなかった。
今回は上下ともにこの世界にとっての露出が多い服装だったので怒られてしまった。
「こんな格好をして一体何をするおつもりだったのですか？」
「えっと…ステータスアップのために少し運動を…
いつもの服装だと動きにくいかな〜って。」
私が正直に答えるとリジは、はぁ、と大きなため息を付き、しょうがないというふうに言葉を発する。
「それならば本日採寸に来てくださる職人さんに追加で動きやすい服を注文しましょう。」
「採寸？職人？一体何のこと？」
「伝えられていませんでしたか？
ずっとレン様が元々着ていらした服でいるわけにはいかないので、本日は職人を招き採寸と注文をする予定です。
デザインなどは奥様がお決めになっていらっしゃるのでレン様は採寸をするだけです。」
そんなこと聞いていなかった。
どうせなら昨日の夕食のときに伝えてくれればよかったのに…
「レン様。すぐに着替えて身支度を整えてください。」
「いきなりどうして？」
「お話をしている間に朝食の時間が来てしまいました。
遅れるわけにはいけないので、お急ぎになってください。」
なんと、私が説教を受けている間にそんな時間が経っていたとは。
なんてもったいない時間を過ごしてしまったんだ。
こうなるとわかっていたなら元から寝てたのに…
こんな小言を言っている暇はなく私は急かされる中すぐに着替えて、リジと共に朝食へと向かった。
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