雨降ル夜ニハ深海ヘ届カナイ。

@nyaos

第1話 雨

水槽で溺れてる魚がいる。


魚は知っていた。

海は広く 大きい


魚は知っていた。

月が昇り 日が沈む


魚は知っていた。

海は大波 青い波


だけど魚は溺れている。

泳いでいるのはもう海では無くなったから。


5月8日

『... ...雨か』

昼下がり、授業中に突然雨が降ってきた。

窓を見上げチャイムの音を期待しながら、締まりのない顔で雨を見ていた。

ゴールデンウィークも終わりあのかんかんに晴れていた太陽も雲に隠れ涙を流しているのだろう。

太陽も5月病かな勝手な妄想を膨らませ雨を満喫していた。

だがなぜ、こんなに雨が降ると言うと最近の異常気象のせいだ。

5月なのに最高気温20度以上なんてザラ

最近見たのだと26度も行く日なんてある。

晴れて晴天降って大雨のくりかえし。

令和ちゃん。なにやってんだよ。

といっても自分は、雨がそこまで嫌いではない。

ヒーリング音楽などでも雨は重宝されるし、うるさいくらいのカエルが逆に心地いい。

まるで自然と生き物のヒーリングハーモニー。

『ダメだ』

授業が終わるまで後30分。

俺の妄想じゃ15分が限界。

腹の虫も湧いてきた。

俺の完璧な分析により出てきた答えは!

『寝よう』

顔を机の上に俯かせて瞼を閉じ眠りに落ちた。

ある程度時間が経っただろうか、天使のような可愛らしい少女の声が聞こえる。

『授業終わったよ!早く起きて!』

その声を聞いて俺は、目を覚ました。

『ん?うきだ。おはよう』

彼女は、岩垂うき。

見た目は、全体的にいうとおとなしめ。

髪型は、顔周りを覆い隠すようなボブヘア。

そして目が悪いのか、丸メガネをしている。

大切なことなので2度言うおとなしめだ。

だが人を判断してはいけない。

こいつは、よく喋る。

導入でこれだけ話す俺が言うのだから間違いない。

『ねぇ!深月くん今日雨降ってるけどどうする...?』

ほら始まった。

『私傘持ってきてないんだけど家近いし一緒に入らせてくれない...?』

『別にいいけど』

俺は小さく頷くと話を続けた。

『やったー!あ、そういえばさ知ってる?同じ部活の先輩と同級生の子付き合ってるらしいよ!』

『誰?』

『あ、知らないなら言わないどく』

ちょっとイラッとした。

手を小さく握りしめウキの頭にコツンと拳をぶつけた。

『痛い!深月くんやめて』

『ばーか』

たわいもない会話をしながら帰る用意をする。

ゲーム機だらけの鞄を持ち、教科書にプリントを挟み廊下にあるロッカーの中に投げつけ

玄関の方へ向かう。

階段を降りるとパンを買ってる者、、親の迎えを待つ者、屯してくっちゃべってる七色のヤンキーたちがいた。

俺たちはその者たちを華麗に避け傘立てから雨宮 深月と書いてある傘のハンドルを引き抜きガラス張りの扉から出ていく。

『よし、ヤンキー達と関わらずに済んだ!』

脳内でドラ○エのレベルアップの効果音がした。

ゲームのやりすぎかもしれない。

そんな俺を横目にウキが喋る。

『お腹すいた!コンビニよろ!』

『はいはい』

俺は軽い返事をして傘を差しうきを中に入れ歩き始めた。

『そういえば私さ!一人暮らしすることになったの...!』

いつも少しくだらない嘘をつくうきだ。

なので軽く返事した。

『へぇ〜』

その適当な返事に少し不貞腐れながらうきが話す。

『本当だもん...!おじいちゃん社長って前言ってたじゃん...!だから言われたの...!』

『お前ももう高校生か、嫁入り修行や自立のためにも一人暮らししてみろ!』

『ほらね!おじいちゃん言ったから...!』

少し疑いながらも俺は納得した。

『お前が言うならそうなんだな!お前の中では』

嘘だ。納得なんかしてない。

そんな上手い話あるわけない。

てかあって欲しくない!

考えながら歩いているとウキが少し大きめのマンションの前に立ちながら言葉を発する。

『ここ!』

嘘だと思った。

嘘であって欲しかった。

だって羨ましいじゃん。

と言ってもこんなに上手い作り話はない。

これは本当だった。

『いいでしょ!ここ!』

『なんだよお前ここじゃ宝の持ち腐れじゃねぇか!』

『暖房、冷房、防音完備!使いやすい地下室付き!』

俺は唖然とした...

『へへーん!いいでしょ!歌い放題、騒ぎ放題、かき鳴らし放題だよ!』

うらやまけしからうぅ。

もう負けを認めるしかない。

『負けました』



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